なるほどー、と大きく頷いた夜。南青山・ブルーノート東京、セカンド・ショウ。

 親日家としてして知られるリード奏者のケニー・ギャレット(1999年11月12日、2001年6月14日、2003年8月19日、2015年4月10日)の実演は、ここのところのアコースティック編成のワーキング・バンドを率いてのもの。ピアノのヴァーネル・ブラウン(2015年4月10日)、ダブル・ベースのコーコラン・ホルト(2015年4月10日)、打楽器のルディ・バード(2015年4月10日)、ドラムのサミュエル・ラヴィゾ。ピアニストとべ—シストは長いブレイズを後ろで束ねている。今回新たに入ったドラマーはグァドループ出身で、バークリー音大を出ている新鋭。クリス・デイヴ(2009年4月13日、2009年12月19日 、2010年12月16日、2012年9月21日、2013年9月28日、2015年8月18日、2016年1月25日、2016年10月11日)、ロナルド・ブルーナーJr. (2009年9月15日、2014年9月10日、2015年9月30日、2016年5月20日、2016年12月6日)、ジャマイア・ウィリアムズ(2009年5月18日、2012年3月3日、2013年4月1日、2013年6月4日、2014年8月7日、2015年1月22日、2017年8月15日 )など、若手の逸材ドラマーを素早くバンドに入れる傾向をギャレットは持つ。その事実について、かつて本人に問うたら、ドラマーがやめるときにお薦めの同業者を聞いて、その人に声をかければ間違いがないみたいな説明を受けました。

 頭の2曲はソプラノ・サックスを吹く。1曲目からジョン・コルトレーン趣味を見せ(「ラヴ・スプリーム」のクォーテイションもしたか。今回、他の曲でもギャレットはいろんな楽曲引用をみせた)、2曲目はピアニストとのデュオで、「翼をください」とか「荒城の月」とかのオリエンタル曲メドレーをやる。軽いコードの置き換えはあるものの、インプロヴィゼーション度は高くない。ゆえに、ぼくにはタルい。

 それ以降はアルト・サックスを手に、バンドとともにごんごん迫る。ま、達者なんだと思う。でも、ぼくの感興のメーターは上がらない。前にも書いたけど、腕は立つんだろうけど、ブロウにジャズをジャズたらしめる陰影に欠けると感じてしまって、心から感情移入できないんだよな。視野を広く取る行き方も分かるんだけど、過剰にセンスがいいとは思えない。

 と、ここまでは、純粋な音的な部分の記述。だが、一方で後半に向かうにつれ、ぼくはこりゃすごいと感嘆してしまっていたのだ。日本語にも堪能と言われる彼は、MCでは日本語も的確にいれ、人懐こく聞き手を導こうとする。ジャズはアーティスティックな部分も持つが難しいものでも、かしこまったものでもないんだよという意思に、それはつながるか。そして、そんな姿勢が高みに達したのが、終盤にえんえんとやった彼のフュージョン盤で発表した「ハップー・ピープル」(マーカス・ミラー〜1999年11月12日、2001年 6月14日、2003年8月19日、2005年8月21日、2007年12月13日、2009年9月15日、2010年9月3日、2013年9月3日、2015年2月21日、2016年9月17日、2017年1月7日〜との共同制作による2002年曲で、そこでドラムを叩いたのがクリス・デイヴ。シンガーとして、ジーン・ノリス〜2007年12月13日〜も入っていた)。これなんとも、広がりと幸福さに満ちたリフレインを持つ曲であるのだが、その祝福された曲趣とともに場内は総立ちとなり、また一緒に皆んなそのリフレインを歌う。ジャズの公演でこれはないでしょと言いたくなる光景には、心のVサインをギャレットに送るしかないじゃないか。そして、さらに驚いたのは、曲が終わると自然発生的に客席側からそのリフレインのチャントが湧き起こり唱和状態となり、それに合わせて、再びギャレットたちは「ハッピー・ピープル」を満面の笑顔で始めたこと。それを受け、お客さんの笑顔はもっと輝き、場内の気持ちという輪の高度がさらに増し、自在に揺れる。R&Bの好公演ならともかく、かりにもアコースティック・ジャズの形をとる公演でこんなふうになるなんて! ぼくは、そんな様に触れるのは初めてだろう。

 純粋な音楽の面では両手をあげることはできないが、こと娯楽性と繋がったジャズのショウとしては100点満点! ジャズを知らないんだけど、ジャズのコンサートに行ってみたいとか頼まれたら、そのハッピーな入り口としてギャレット公演はぴったりだと、ぼくは思う。会場には、知人のグループがいて、ひとりのお誕生日お祝いで終演後にケーキがサーヴ。ご相伴にあずかった。いやあ、そんなのを祝う際にも、最適の実演ではなかったか。

▶︎過去の、ケニー・ギャレット
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/movember1999live.htm
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2001-6.htm
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2003-8.htm
http://43142.diarynote.jp/201504131108504171/
▶過去の、クリス・デイヴ
http://43142.diarynote.jp/200904150840164356/
http://43142.diarynote.jp/201001051625155901/
http://43142.diarynote.jp/201012171104366095/
http://43142.diarynote.jp/?day=20120921
http://43142.diarynote.jp/?day=20130928
http://43142.diarynote.jp/201601260728484520/
http://43142.diarynote.jp/201610141747514263/
▶過去の、ロナルド・ブルーナーJr.
http://43142.diarynote.jp/200909181206531984/
http://43142.diarynote.jp/201409111424501752/
http://43142.diarynote.jp/201510021221454336/
http://43142.diarynote.jp/?day=20160520
http://43142.diarynote.jp/201612091513593556/
▶過去の、ジャマイア・ウィリアムズ
http://43142.diarynote.jp/?day=20130401
http://43142.diarynote.jp/200905191118258984/
http://43142.diarynote.jp/?day=20120303
http://43142.diarynote.jp/201306060730086224
http://43142.diarynote.jp/201408091058201133/
http://43142.diarynote.jp/201501230914317086/
http://43142.diarynote.jp/?day=20170815
▶︎過去の、ジーン・ベイラー(ノリス)
http://43142.diarynote.jp/200712161023010000/
▶︎過去のマーカス・ミラー
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/movember1999live.htm
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2001-6.htm
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2003-8.htm 
http://43142.diarynote.jp/200508230545510000/
http://43142.diarynote.jp/200712161023010000/
http://43142.diarynote.jp/200909181206531984/
http://43142.diarynote.jp/201009111624281899/
http://43142.diarynote.jp/201309051241384602/
http://43142.diarynote.jp/201502231815384234/
http://43142.diarynote.jp/?day=20160917
http://43142.diarynote.jp/201701091247527188/

<今日の、ほう>
 スペインのトップ・リーグ、エイバルに所属する乾貴士が、セビーリャのレアル・ベティス(2008年11月2日)に来シーズンから移籍するというニュースが入る。おお。もしそれが本当なら、彼は来年からスコットランド・リーグのセルティックみたいなユニフォームに袖を通すのか。ぼくのトゥイッター(2009年12月に入って、総トゥイート数は38。苦笑)の写真はベティスのサポーターのそれを載せてい〼。
▶︎過去の、レアル・ベティス
http://43142.diarynote.jp/200811090012264277/

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