ジャーズ、アヨ

2014年6月21日 音楽
 <音楽の祭日 2014>と題された、飯田橋・アンスティチェ・フランス東京での野外の無料イヴェント。うわあ、人がいっぱい。そして、まあ毎度だが、場が弾んでいる。なんか、フランス型縁日、なんて感想も浮かぶ? ぼくは最後に出た二組の来日アクトを見た。

 まず見たジャーズは、現在25歳というマダガスカル人とフランス人の両親を持つミックス。18歳のときに生まれ育ったマダガスカルからパリに出て来て、弾き語りを人前でするようになったという。生ギターを持って、一人で訥々とパフォーマンス。今から25年ほど前にビクター音産からラコトという味のいいマダガスカルのシンガー・ソングライターが紹介されたことがあったなあ、なぞと思い出しつつ、彼女に接する。マイナー・キー基調の曲を枯れた感覚と濡れた感覚が入り交じった情感をたたえ、訥々と披露。彼女はバスキングで鍛え、支持者も獲得したらしいが、室内で見たほうが真価は伝わりやすいかとも思った。

 午後一から持たれているイヴェントのトリを飾ったアヨはナイジェリア人とルーマニア系ジプシーの両親のもと、ドイツのケルンに生まれた。そして、現在はパリに住んでいる。そんな彼女は、英語でずっと歌ってきている。

 かつてはクリクリしたショート気味アフロ・ヘアがトレードマークだったが(少なくても、2013年発の新作ブックレット写真までは)、現在は伸ばして後で束ねている。だいぶ感じは変わったが、やはりかなりのべっぴんさん。長身であり、格好や髪型もあってか、ステージ上の彼女は威風堂々。アヨのことをなんら知らない人でも彼女を一瞥したなら、何かを表現する人、人の前に出て何かをしている人という印象はきっと持つのではないか。ステージに立つ彼女を見ながら、綺麗なグレイス・ジョーンズみたいとも、ぼくはほんのり思ったか。

 ギターを弾き語りする彼女を、いろんなキーボードを弾く(一部、ベース音も担当)男性がサポート。陰影と哀愁と誘いが入り交じる曲をけれんみなく披露して行くが、意外に歌は喉に負担がかかりそうな歌い方をする人なんだな。なんにせよ。アルバムでの模様に生の場ならではの精気を加味する感じで、総体はよりシャープな印象を受けた。

 中盤移行、彼女はコール&レスポンスなど、より見る者に働きかける所作を曲の中に入れるようになり、臨機応変に曲の尺を長くする。ああ、ライヴに触れていると実感できるナ。それから、ライヴだと、ボブ・マーリー愛好をいろいろと、その背後に感じさせられた。そういえば、新作『チケット・トゥ・ザ・ワールド』のタイトル・トラックなどは、相当に素敵な、持たざる者の立場を代弁する広がりあるメッセージ・ソング。同作ではスロウなラップ調シンギングも見せ、それはどこかニーナ・チェリー的とも思わせる。この晩は、アルバムでゲスト・ラッパーが担当していた箇所を自分でやったりもしていた。

 実はアヨとは、デビューした翌年である2007年に豪州のバイロン・ベイ・ブルース・フェス(2007年4月5〜9日)のバックステージで会って、一緒に写真を撮ったことがあった。そんとき、彼女はフィッシュボーンのアンジェロと親しげに話していたよなー。そのデビュー作『Joyful』はまじに<ユーロ・アフリカンの、ノラ・ジョーンズなるもの>というしなやかさやジューシーさや親しみやすさに溢れていて、ぼくはぞっこんだった。そんな彼女は4作品を仏ユニヴァーサル・ミュージック系列から出している。

▶過去の、バイロン・ベイのブルース・フェス
http://43142.diarynote.jp/200704112101130000/
http://43142.diarynote.jp/200806121400260000/

<週明けの、アヨ>
 月曜に、取材する。実物は、かわいい〜。昔のまんま。で、彼女はバイロン・ベイで会ったときのことを覚えていた。あのとき、あなたの髪の毛はもっと短かったわよね、なぞとも指摘してくる。逆にこちらも現在の髪型について聞いたら、何もしなければ暴れたアフロなのだそう。それを束ねると、今みたいになるらしい。で、アイフォンのなかに入っている、2週間前に録ったというアフロな写真を、彼女は見せてくれた。アヨがシンガーになりたいと思ったのは、子供のときにダイアナ・ロスのジャケ写を見たとき。それまで、くせ毛でモップ頭といじめられていたが、彼女のような職業につけばアフロな髪型でもおおいばりできるんだと思ったからだそう。新作にはモータウンのロゴも付いているが、やはりロスを売り出した会社と同じロゴが付くのはうれしかったとのこと。でも、今と昔のモータウンは違う会社、と冷静な発言もしていましたが。子供もいる彼女はローラーブレイドなど、スポーツも大好きなよう。