渋谷・アックス。まず、ミルウォーキー出身(そういやあ、ヴァイオレント・ファムズを生んだ場所だったよなー)のギター・バンド、マリタイムが出てくる。芸も閃きもないものの、まっすぐ感を持つ人たち。スキンヘッドの左利きヴォーカル氏は少しキャラあるかも。彼、ちゃんと声は出るが少し音痴、そしてギターを弾くのと連動してのものだろう身体の揺らし方がどんくさい。だが、悪びれず、無骨にパフォーマンスを続けていく様に触れていると、こいつら悪天候の野外会場でも、客が20人ぐいらいしかいない小さな会場でも、同様のパフォーマンスを熱意を持ってするんだろうなーと思えてきて、少し好感情を持ってしまった。彼の会場がシーンとしたなかのMCはなかなかにKYで、それもらしかった。

 続いて、キャピトル〜インタースコープとメジャー畑を10年強も歩んでいるジミー・イート・ザ・ワールド。たぶん、今回初めて見ると思うんだが、想像していた以上に演奏などはしっかりしている。立派。それに触れると、マリタイムとの力の差は歴然としていると思わずにはいられず。そんなら彼らがやっているのは、厚めのギター・サウンド(リズムは平板)に愛想のいいメロディを載せるという、今のアメリカの典型的な歌謡ロック。もう客にはうけうけ、その図はほほえましいという感想も引き出す。そんな反応受けて、当人たちはやってて気持ちいいだろーなー。3曲目かでマリタイムのはげ頭さんが出てきて、バック・コーラスを取る。なるほど、本国で一緒にツアーやっているという話に納得。数曲、聞いて場を移動。

 そして、丸の内・コットンクラブ(セカンド・ショウ)。米国黒人音楽にやられてウン十年の、米英のヴェテラン白人が自然体でつるむという出し物。見に来た人は元祖モッドでもある、ジョージー・フェイムのファンが多かったよう。

 まず、ピアノとヴォーカルのシドラン(2006年4月9日、2007年1月15日)がアルト・サックス、ウッド・ベース、ドラムとともに2曲パフォーマンス。以後は、オルガンを弾きながら歌うフェイムが出てきて、彼の主役でショウが進められる。ちょい顔が赤めのフェイムはとにかくご機嫌そうで、意気軒昂。オルガンを離れ中央に出てきて歌ったり、ダンスをしちゃう場面も。途中、MCでヴァン・モリソンのことに触れたりも。そうだった、フェイムとモリソンは90年代中期に双頭作を出したことがあったんだっけな。昔(98年か)、ブルーノート東京でシドランとフェイムの同様公演を見たことがあったが、そのときよりもフェイムは個を出していたし、いい感じの度数は高かった。なんか、黒人音楽と白人の幸せな関係、広義のポップ・ミュージックの真理を照らすものが、この晩の実演にはあったはず。