渋谷・アックスで、オーストラリアの新進4人組。日本盤
出る前にフジロックだかに出て、評判とったんだけか? そ
の後出た、日本盤はけっこう売れているらしい。普段は見か
けないギョーカイの人も見かけたりして、話題なってんのね
と思わせられる。ステージ上に表れた面々はそこそこタッパ
がありそうな人達で、それは堂々感をさそってよろしい。な
んか、見てくれだけで、無骨にライヴをごんごん積み上げて
きたバンドなんだなって気にさせられますよね。

 なるほど、良く出来た(過去表現の肝をうまくつかんだ)
、パワフルで、ほのかなキャッチーさも持つロックンロール
を聞かせる。歌もちゃんと聞こえる。お、ギタリストのうち
一人はフライングVを使用、ベーシストはピック弾きじゃ。
この手の今のバンドの常でもう少し、ドラマーが上等だった
なら。完全回顧型の音楽性を持つバンドとしては、ここのと
ころ見たなかでは、ホワイト・ストライプス(2003年10月21
日)、ザ・ダークネス(同11月26日)と並ぶ。だが、彼らが
一番自然体というか、ギミック度が低い。で、その飾らない
態度とあった曲調も、ぼくがロックの様式として不滅なもの
と感じているストーンズ調R&Rとかするところもあって、
ニッコリ聞けますね。一瞬、ジョージア・サテライツの登場
時のことを思い出したが(もう15年ぐらい前かな。来日公演
は新宿厚生年金会館で音が死ぬほどデカかった。もしかして
、ぼくが経験したなかで1番? 1日以上、耳鳴りしてたも
の)、サテライツのほうがより本格的で渋いところがあった
のは間違いない。最初英国で当たったものの、あのバンドに
はアメリカ人の強さがあった。

 やっぱり70年代からロックを聞きつづけている人間にとっ
ては、何からなにまで分かりすぎてしまうところあり。ま、
それはしょうがないですね。もうちょっと見たかったが、途
中で退座し、タクシーに飛び乗る。

 新宿・ロフト。前座のズボンズが終わったところ。こちら
もなかなかの盛況。ザ・ダートボムズは、デトロイトのガレ
ージな逸・黒人シンガー/ギタリスト、ミック・コリンズ(
cf. ゴーリーズ、ブラックトップ) のバンド。ツイン・ドラ
ムが、新たなポイントではありますね。コレハ見ナクテハ。

 そのコリンズさん、サングラスをしていてこわもてだが、
オフではラヴリーな人とか。というのは、実演の節々にも表
れていたよな。ぐりぐりごりごり、等身大の人間の音を送り
だす。激しさだけでない(ま、実際曲のほうもそうで、一部
はジミヘンのメロディアス曲みたいな感じも)、妙に砕けた
ジューシーさのようなものもじわじわ聞き手に感じさせてく
れるもの。他のメンバーもちょっと歌ったり、みんなコリン
ズのことを信頼し、重なっているゾという感じも良ろしい。
もう一人のギターは東洋系ぽい顔をした女性。見ながら、や
はりコリンズがフロントを務めて女性メンバーもいたザ・ス
クリューズ(1999年10月17日)のことを思い出したりも。

 とにかく、姿勢が正しい。というか、美味しい。これはあ
るべきもの。で、もっと受けてしかるべきという判官贔屓的
心情も加味され、ぼくはぐいぐいと入り込んじゃった。やっ
ぱ、彼らを見てて、ジェットとんじゃいました。見て良かっ
た! 今年見たロック・アクトのなかでは、これが今まのと
ころ一番。
 まず、文京シビックホール(後楽園駅からそのまま行けて
便利ね)でボビー・マクファーリンを見る。区の公式施設と
して建てられた、それなりに小綺麗なホール。入りは良くな
いのに、歓声/拍手は破格に聞こえる。音の響きは音楽的か
どうかは知らないがやはり破格にいいホールのようだ。ジャ
ズからクラシック、ポップや民族音楽までを俯瞰したうえで
、いろんな声を出す器用なヴォーカリスト。ぼくは初めて、
生を見る。ソロによるパフォーマンス。全部キブンで、歌詞
なしのスキャットで突き進む。で、そのスキャットはメロデ
ィを歌う声とベース音が絶え間なく出されるというもので(
けっこう、絶え間なく胸を手で叩きながら歌う)、最初はい
ろんな変化もあるし、一部声をサンプリングしたものを生声
とともに使っているのかと思ってしまった。それほど、巧み
。なるほどねえ。思ったほどアカデミックでもないし、胡散
臭くもはないし、こーゆー人がいてもいいと素直に思いまし
た。
 
 ステージ上の彼はドレッド・ロックスを束ね、ジーンズに
Tシャツと軽装。ちゃんとご存じなようで、変化が欲しいな
と感じるところで、日本人の女性ヴァイオリニスト(fumiko
という名前だったかな)、ピアニストトの松永貴志(2003年
7月1日)、三味線奏者の上妻宏光(2002年5月13日)が
断続的に出てきて、デュオでやる。まあ、それはそんなもん
というか感じか。また、後半部ではステージを降りて、前の
ほうの客と重なる。何人もの人に、それぞれシークエンス声
を出させ、彼はそれに重なる。歌った人、みんな普通にやっ
てきたお客さんなのかな?

 その後、南青山・ブルーノート東京。ソウル・クオリティ
・カルテットを見る。女性ヴォーカルを全曲でフィーチャー
するスウェーデンのグループで、新作はイタリアのイルマか
ら出ている。ボサ味なんかを巧みに入れての、いまどきのフ
ュージョン・グループと言っていいのかな。
 下北沢・ラカーニャ。まず、女性3人(ヴァイオリン、ピ
アノ/アコーディオン、ベース)を引き連れた、五郎さんの
パフォーマンス。この軽妙な大先輩のパフォーマンスは前に
ほんの少しだけ見たことがあったが(1999年8月9日)、だ
いぶ印象が違う。まあ、バンドでやっているせいもあるけど、
生理として強かった。最近、けっこうライヴをやっている
せいもあってか、ちゃんと声も出ているし、動くし。激しい
曲ではフォーク・ギターの弦が何本も切れた。

 ステージを終えた五郎さん、「(こんなステージ見て)怒
った?」。いや、全然怒ってないですよ。まあ、ぼくと世代
も感性も違うなというのは感じたけど。でも、ちゃんと歌心
あるなと思ったし、その人間性に通じる不思議な味があるよ
な。一部、赤裸々な私生活の吐露の様は“フォーク界のマー
ヴィン・ゲイ”と例えておこうか。こんど、彼のカヴァー、
官能的にやってよ。あと、クスクス笑いを誘うMCは上手い
ですね。新作用のレコーディングも終わったようで近々出る
ようだ。

 続いて、五郎さんとは70年代同じ吉祥寺周辺のサークルに
いたという、ギタリスト(バンジョーやウクレレもうまい)
のキヨシ小林。率いるグループ名にあるように、ジャンゴ・
ラインハルトを根っこに置く、ジプシー・スウィング表現を
飄々とやるグループ。生ギター2本と生ベースが、彼をフォ
ロウする。うち、ギターの一人は彼の高一という息子さん。
家族内継承。それって、ジプシー・スウィングとして正しい
あり方かも。ほのぼのとした時間が流れる……もう少し音が
大きくても良かったかな。最後に五郎さんとの共演も。

ソニックマニア

2004年1月31日
 幕張メッセ。サマーソニックの、規模の小さな冬版と言っ
ていいのかな。ポカポカの天気のもと、道も空いていて、気
持ち良く会場に着く。駐車場も空いてて、けっこう会場側に
止められる。言うことないな。

 ステージは同じ場所内に二つ。会場の上辺左右の角にステ
ージが設営され、交互にバンドが出演する。真ん中にはヴィ
ジョンが一つ。後ろから見ていると、ステージとヴィジョン
両方一緒に無理なく見れて、けっこう案配がいい。進行はタ
イムテーブルにかなり忠実。会場内はあまり混んでおらず、
かといって寂しさを感じさせるほどでもなく、わがままなぼ
くには楽にいやすい。コーン他が出る翌日は、この1.5 倍売
れているそうだが。

 会場内には、皮ジャン、髪逆立て、リーゼントの人たちが
散見。なるほど、出演者の傾向がそこに現れていますねね。
もろに気のよいあんちゃんミックス系ロックを聞かせるイン
ソレンス以降、シャム69の代役G.B.H.、カラシ、ザ・ハイ・
ロウズ、ランシド、ブライアン・セッツァー・アンド・スリ
ム・ジム・ファントム・ウィズ・マーク・ウィンチェスター
という6バンドをちゃんと見たり、見なかったり。アイスラ
ンドのラップ・ロックの担い手、カラシは童謡の" 足柄山の
金太郎" (正式にはなんて題なんだろう?)も日本語でやる。
ぼくは、今回彼らを初めてみたが、ちょっと高揚させられ
る部分あったな。ランシドは、ぼくには健康的すぎる。さすが、
そのティム・アームストロングは人気歌手ピンクの穏健ア
ルバムをソツなくプロデュースしているはずだと変な所で納
得。ストレイ・キャッツのメンバーが二人そろったトリは荒
かったけど、確かに感興を誘う一つのカタチがあったと思う。   

サンパウロ

2004年1月30日
渋谷(並木橋)・AIR。佐藤タイジの誕生日お祝いを兼
ねたイヴェントで、DJは田中知之やケンイシイが回したよ
うだが、混んでいたなあ。

 深夜2時少し前から、サンパウロ(2002年11月15日)のラ
イヴ。佐藤タイジ、森俊之、沼澤尚によるベースレスのイン
スト・バンド。3人はコスプレ(?)にて、ステージに登場。
いろんな開放系フェスでライヴを重ね、アルバムも出して
いるサンパウロだが、そういう積み重ねを通じて、どんどん
練れてきているんだろうなあと実感。大まかなアウトライン
だけ決めて、あとは音楽が向かうままにというのは基本では
あるだろうけど。うちの二人絡みの実演はこの1月16日にも
見たばかりだが、もっとふくよかに、大きく回っていくよう
な感覚がこちらにはある。あと、けっこう4つ打ち部分が増
えてい(ような気がし)て、煽情性を増しているとも感じる。
途中で、もろにアンダーワールド調も。でも、腕が立つから
聞けてしまう。切れ目なく、1時間半ぐらいはやったはず。

ジェイミー・カラム

2004年1月28日
 英国でかなり売れているそうな、20代前半のジャズ系のシ
ンガー/ピアニスト。ショーケース・ライヴ、原宿・ブルー
・ジェイ・ウェイ。ユニヴァーサルが大枚叩いて獲得したと
いう触れ込みだが、その前の作品をぼくはそこそこ気にいっ
ていた。長くないながら、白人の縦ベース奏者、ドラマーを
連れてきてのパフォーマンス。あらら、小さな人なのね。な
るほど、そこそこ達者な指裁きのもと、甘ったれた顔に似合
わない太い声で歌う。かなりエンターティンメント性も追求
しようとしてもいるが、それはジャズ・ヴォーカル/ポピュ
ラー・ヴォーカル系の歴史を見てもそれほど突飛なことでは
ない。突然ピアノを弾くのをやめ、立って客席側によりアピ
ールする感じで歌ったり。また、椅子に立って、足で鍵盤を
踏み、アクセント音を出したりとか、やんちゃな、ときに臭
いと思わせる(おばさんたちが歓びそうな)行き方も随所に
折り込む。ときには、ベン・フォールズ・ファイヴにちょっ
とかするところもあるか。ロック系プロモーターの人も複数
来ていて、夏のフェスあたりに出演する可能性もあり?

ジョン・トロペイ

2004年1月27日
 南青山・ブルーノート東京。セカンド・ショウ。主役は、
ニューヨークのスタジオ界でずっと活動してきているギタリ
スト。ただし、リズム隊がスティーヴ・ガッドとアンソニー
・ジャクソンで、そっちのほうを見たくて来たお客さんが多
かったのかな。サックスはルー・マリーニ。映画『ブルース
・ブラザース』でマット・マーフィーとアリサ・フランクリ
ンが経営しているお店で働いていたお兄さん(役)。とはい
え、ステージ上の彼はけっこう老けていて、年月の流れを痛
感させられた。その点、リズム隊はもともとじじ臭いルック
スだったのか、あまり変化を感じさせませんでしたね。

 レパートリーはけっこうジャズ曲、それをフュージョン流
儀で披露する。燻銀、て言い方もありか。この日は、舎弟の、
昔ドラムをやっていてスティーヴ・ガッドにかつては心酔
していたラッパーと見にいく。もう、彼は大興奮。隙間が絶
妙に活きたアンサンブルも超素晴らしいと力説する。ハイハ
イ。なんか、自宅スタジオを近々再びドラムを日常的に叩け
る環境にするとのことで、ならおまえ自分の作る音はこれか
ら全部生ドラムで行けや、と一喝する。下町兄弟/Motomy B
ANANA ICE Kudoのプロダクツ、果してどーなることやら。
ぼく「結局、あなたたち以外、ジャム・バンドと呼ばれる人達はみんなブルーノートか
らドロップしちゃいましたよね」
ジョン・メデスキ「だよな。それ、俺たちがジャム・バンドじゃなかったという、確固
たるな証明になってんじゃないの。まったくもって、ははは。それにしてもよお、ブル
ーノートも俺たちだけ抱えてりゃいいのによ。なんか、俺たちをやってうまく行くとか
思って余計なのに手を出すから、そんなことになるんだよ。あ、今のオフレコね。……
いや、出していいよ。だって、俺たちブルーノートにもそういう態度取っているし、ブ
ルーノートもそういう俺たちだというのは重々承知しているから」

 渋谷・Oイースト、旧オンエア・イースト。改装なったハコだが、安普請だった前の
と比べるととっても立派ね。拍手を送る。ただし、あんなに天井が高いんだったら、も
っとステージ高を上げるべきではなかったか。意外に後ろからだと見えにくい(2階も
柵の前に立った人以外は見えない)。それ、スタンディング公演以外も想定しているか
らなのか? それからもう一つ、バー等のオペレーションは大ペケ。3つの飲み物販売
カウンターがあるくせに、アルコールは一つだけでしか販売せず長蛇の列。飲み物を買
うのに25分も並ばされた。ただ、この日は買っていないが、ワインをボトル売りしてい
るのはマル。値を聞いたらすごい安かったが、そこそこの味だといいな。

 オールナイトのイヴェント(オーガニック・グルーヴなのかな?)。MMW(1999年
8月5日、2000年8月13日、2001年2月5日、2002年9月7日)の実演開始時刻という
深夜1時15分ごろに行くとまだ場内に入れない人でけっこうな列。でも、早く入れろよ
、みたいな空気が待っている人達にないのはヘルシー。やっと中に入ると、演奏はもう
始まっていた。いつものMMW。酔狂で、混沌としてて、アシッド(話はズレるけど、
今年のボナルー・フェスのライヴ盤に入っている彼らの旧曲「抹茶」のリメイク演奏は
鬼のようにカッコいい。アシッドと今を目一杯吸い込んだザ・ミーターズという感じで
)で、腕の立つ演奏。やっぱ、ぼくは大好きじゃ。
 

 ところで、近くリリースされる2年ぶりの新作は、ダスト・ブラザーズのジョン・
キングのプロデュースだそう。また作業は終わっておらず、もしかするとベックやミ
シェル・ンデゲオチェロが歌を入れるかも(彼女側からやりたいと言われているらし
いが。ジョンは彼女とデイヴィッド・フュージンスキとボストンの女性ドラマーと新
グループを組む予定アリ)、だと。

 嬉しい実演を見ながら、アート・ガーファンクルが大麻所持で捕まったというニュ
ースを、なぜかぽっかりと思い出す。ぼくが取っている一般紙とスポーツ紙、両方で
ちゃんと載っていて、さすがサイモン&ガーファンクルのご威光はまだ日本でもある
んだなと思うととともに、マリファナなんかでパクられたという事実にも驚いた。最
初はスピード違反で捕まってチェックを受けて発覚したということだが、よほどその
とき警官と揉めたのか? 新聞には、ガーファンクルは「俺は有名人だ」と言ったが
警官は彼のことを知らなかった、なんてことも書いてあったが……。S&G解散後の
70年代初頭には大スターながらしゃあしゃあと日本に単身やってきてヒッチハイクの
旅ををしたこともあったガーファンクルは、すっこーんと抜けてて、とにかく変な人
。そして、だからこその、あの歌でもあるのだとも思う。ガーファンクルの高音美声
は“天使の歌声”なんて称されたことがあるけど、ぼくに言わせれば、不埒さと裏返
しの、透き通った悪魔(と書くと、さすが筆が滑ったという感じになってしまうけど
)の歌声にほかならない。A地点を見ていても、彼の視線はどこかであっさりと屈曲
しB地点に届いている、みたいな。抽象的な書き方になるけど。それが、彼の歌声の
肝とぼくは思う。実は、ぼくかなり彼の覚醒感ある歌が好きです。

 そして、舌をペロリと出したMMWの音もそれと重なる感覚があるかもしれない。

<付録>当人たちが選ぶ、MMWのアルバム歴代ベスト3。
「『ザ・ドロッパー』。『シャック・マン』。『ファマーズ・リザーヴ』だな」(ビ
リー・マーティン)
「あ、俺も同じだよ」(クリス・ウッド)
「俺は、『ザ・ドロッパー』、『エレクトリック・トニック』、『シャック・マン』」(
ジョン・メデスキ)
 そのあと、アコースティックなものはどーなのよとか(デビュー作の『ノーツ・フ
ロム・ザ・アンダーグラウンド』も悪くないよな、てな声も)、3人でいろいろ意見
を交わす。で、ここらへんで、一度キャリアをまとめるコンピを出したほうがいいよ
なあという結論に落ちつく。そのうち彼らのサイトに、ベスト盤にはどの曲を入れた
らいいかを問うコーナーが出るかも。
 秋葉原・グッドマン。ライター他いろいろやっている土佐有明くんが主宰しているイ
ヴェント(偉いね)。過去、もっと見たいアーティスト公演と重なっていて行けなかっ
たが、今回で3回目になるよう。その標榜するものは、確かなはみ出しを持つロック側
のアーティストと耳の確かなロック・リスナーに聞かれるべきことをやっている逸脱ジ
ャズ系アクトを組み合わせ、後者を広く知らしめん……ということになるのかな。

 着いたときはパニック・スマイル(2001年9月22日)は終わっていて、界という、フ
ァンクとかラップとかエスノとか(曲間では、ヴォーカリストは民謡っぽい独唱をチラ
リ聞かせたりも)を混ぜたロック・バンドから見る。続いて、勝井祐二(1月16日、他
)のソロ。いろいろとエフェクターを駆使しての、毎度個性を痛感させるパフォーマン
ス。

 そして、ONJQ(2002年3月17日、2003年6月28日)やROVO(2000年7月29日
、2000年9月14日、2001年2月3日、他)のドラマーでもある芳垣安洋のリーダー・グ
ループであるエマージェンシー!が登場。ONJQの大友(ギター)と水谷(ベース)
に、斉藤“社長”良一(ギター)。ようは、リアルなジャズも知っている狼藉リズム・
セクションにツイン・ギターが乗るという構図。ミンガスの祭祀的名曲やベニー・グッ
ドマン楽団の当たり曲「シング・シング・シング」とかを大人の乱暴モノの視点を介し
て再構築。

 しかし、そんなに広い会場ではないが、満杯。イヴェントとしては大成功なのではな
いか。



 シカゴ・アンダーグラウンド、アイソトープ217 、トータス、ブロークバック等々に
係わる、在シカゴの、今の感性を持つジャズ系ミュージシャンが集まっての公演。渋谷
・クラブクアトロ。過去の同系公演(1999年6月6日、2000年3月25日、2000年10月15
日,2001年11月7日、2003年1月30日)と違い空いている。でも、見やすくて、いい。

 ノンストップで3時間20分のショウ。ざっと、書き留めておこう。

 まずは、ロブ・マズレクのコンピューターを用いたソロのパフォーマンス。基本的に
はアブストラクト。約30分。続いて、ギターのジェフ・パーカー(取材したら、けっこ
う知的な感じあり)が中心になったセット。リズムはノエル・クッパースミスとティム
・ブルベナ。これがもろに硬派フュージョン演奏で、ぼくはスティーヴ・カーンのアイ
ウィットネスを思い出した。30分強。次は、そこにダグ・マッカム(同、けっこう子供
っぽい)が加わり、そのままステージはブロークバックのセットに移行する。おお、マ
ッカムはベースを手にせず、ギターに専念(それとも、これが普段言われているところ
の6弦ベース? 音や効果は完全にギターでした)。パーカーのセットのフュージョン
ぽさを引き継ぎぐもので、前回2001年秋のトータスの前座のときのフリー・ジャズ調の
ものとは全然違う。途中に、マズレク(コルネットとコンピューター)も加わり、これ
は立った現代ジャズになっていて、彼の力量を再確認。そして、続いて、マズレクとマ
ッカムが入れ代わって、ステージはシカゴ・アンダーグラウンド(・カルテット)にな
る。まあ、シカゴにあるサークルのデコボコ、フレキシブルにどーにでもできますよと
いう彼らの思うところは実感できたのは間違いない。
米国西海岸ベイエリアのヴェテラン・ファンク・バンドを見る前に、南青山・スパイ
ラルホールでもうすぐ新作『フィールズ・ライク・ホーム』(ザ・バンドのガース・ハ
ドソンとリヴォン・ヘルムの一部参加が嬉しい)をリリースするノラ・ジョーンズ(20
02年5月20日、9月12日)のショーケース・ライヴを見る。彼女がその新作クレジット
で“ハンサム・バンド”と名付けて感謝の意を評している、ライヴ・バンドの流れをく
む5人編成のレコーディング基調バンド(ギター2、生ベース、ドラム、バック・ヴォ
ーカル)を率いてのもの。30分ぐらいで6曲、新作からのもの。漂う、もう一つのアメ
リカ。あっさりしたパフォーマンスだったけど、やっぱり彼女の声は得難いものである
ナと痛感。なんの仕掛けもなくバカ売れしてしまったデビュー作だったが果して今回は
どうなるか?

 その後、南青山・ブルーノート東京でタワー・オブ・パワー(1999年11月4日、2002
年8月11日)。セカンド・ショウ。最初のほうは音がなんか良くない感じ(音量も小さ
かったか?)で、あれ? でも、全日すぐに売り切れたそうで、初日から入り/熱気と
もに破格のものあり。中盤から、多くの客は総立ち。メンバー紹介のときは、やはりロ
ッコ〜ガルバルディのリズム隊をはじめ、オリジナル・メンバーに熱い声援が集まる。
最後で「ダウン・トゥ・ザ・ナイトクラブ」や「ホワット・イズ・ヒップ」などを連発。破格の様式を持
つ怪物バンド、やっぱりウキっとはなる。今のシカゴにはジャズのまっとうな素養とモ
ダンなロック感覚を自在に重ね合わせる秀逸表現を生む土壌が確かにあるが、70年前後
のベイエリアのファンク・シーンも同様だったのだなあなんて、感慨もふんわり。とい
うわけで、翌日に続く。
 初台・ドアーズ。初めて行ったが、地下2階分吹き抜けの、見やすい、なかなかのハコ。会場禁煙なのもいいし(そのぶん、会場がトイレ臭いゾと感じるのはなんだかだが)、飲み物も300 円で大拍手。アストロホールと違いけっこう品ぞろえもしてあるし(寒いのでホット・ラムを頼んだらちゃんと対応してくれた)、偉い。

 客は100 人ぐらいはいたような気がしたが、それをけっこうな入りと感じるぼくは認識が甘いのか。ジャズじゃないしな。男女比は男性のほうが少し多いが、けっこう一人で来ているような女性も目につく。ははあ、これが小野島さん言うところの“勝井ギャル”? でも、他の演奏者にも女性ファンはついてそうだしな。

 “まぼろしの世界”組の勝井(2003年3月6日、7月29日、他)と鬼怒(2003年6月30日、他)、シアターブルック(2003年6月22日、他)/サンパウロ(2002年11月15日、他)組の佐藤と沼澤、その四者による、キーがアウトはしない、リフを繋いでいくようなインプロ系パフォーマンス。みんな楽しそうというか、本当に楽器で人とコミュニケート図るのが好きなだろうなと思わせる実演。ときに佐藤タイジは肉声も。途中、マーヴィン・ゲイの「ホワッツ・ゴーイン・オン」になり、彼は歌う。今日日、胸に染みる歌詞。っていうか、すごい歌詞を持つ名曲だよな。今更ながら。それで40分ぐらいやったかな。そして、もう1曲、佐藤タイジが中心となる曲を一発。そのあと、ボンテージ・フルーツのセットになるはずだが、南青山・ブルーノート東京に移動。

 そちらは、元ガリアーノのロブ・ガリアーノとその周辺技術者をしていたディル・ハリスのユニットの出演。耳当たりのよいスピリチュアル・ジャズをクラブ・ミュージック的視点で掴み直しつつ、できるだけ生っぽい音作りで再提出しようとする。二人に加えて、ピアノ・トリオ、管楽器3本、ヴォーカル3人という大所帯によるパフォーマンス。ステージ横の後ろに位置する当の二人は表立ってはあまり音を出さず(コンピューターによる効果音やパーカッション音を少し加える。前者はもう少し大々的にやっても良かったかも)、バンドのパフォーマンスをニコニコ見守るといった感じ。20〜30代だろう演奏陣はけっこう腕が立つ。この前のマシュー・ハーバートのビッグ・バンド(2003年9月15日)よりも、多分。それを聞くと、今の若い英国ジャズの担い手はそこそこ水準あるナと思わされる。

 シンガーのうち一人は、やはりガリアーノで活躍したヴァレリー・エティエンヌ。おお。実はロブと彼女は夫婦なのだとか。彼女はガリアーノ解散後1枚ソロを出していて、そのときインタヴューしたことがあるが、なかなか凛とした人。そのときの、「子供のころ、ロンドンの街角でプラットフォーム・シューズ(厚底グツのことか)を履いたリンダ・ルイスを見て胸がときめき、シンガーを目指した」という発言はすごく印象に残っている。その後、彼女はルイスの弟と一緒のグループを組んだりもしたはずだが、憧憬が新しい芽を生むという話や、人と人の数奇な実のある結びつきとかいった話、ぼくはとっても好きなのだ。

 実演の前後に、ジャイルズ・ピーターソン(2002年11月7日)がDJをする。終わってからの方のそれは出音がでかくて、話が非常にしづらくて困った。昔(ちょうど、4ヒーローやニコレットが話題を呼んでいたころ)、英国マーキュリーの彼のオフィスで話を聞いたことがあったけど、今はほとんど活動停止のトーキング・ラウドだけにもうユニヴァーサル・ミュージックの社員じゃなくなっちゃったのかな? そのとき、彼が一番心残りなことは、ヤング・ディサイプルズをちゃんと売ってあげられなかったことと言ってたっけ。彼、本当にヤング・ディサイプルズには可能性を感じていたみたい。

スカポンタス

2004年1月15日
 場所は原宿ブルー・ジェイ・ウェイ。昨年の10月に出来た新しいハコ、ぼくは今回初めていく。思ったより狭く、天井が低い(ステージ高も低い)。大昔のディスコのようにフリー・フードのシステムが取られていると聞いていたが、なるほどテーブルにはそれぞれ食堂のように割り箸が入った容器が置いてある。ソニー・ミュージック系列会社が経営しているらしいが、今月はレコード会社の人の送別会と英国人若造のコンヴェンション(ともに、ユニヴァーサル・ミュージック関連)であと2回ここに来る予定……。

 2002年7月11日でも触れている、10人編成のスカ・バンド。大阪からワゴン一台で、機材込み10人がぎゅうぎゅう詰めで来ているらしいが、そういうMCを聞くとビミョーにうらやましいような。今の根性なしのオレには絶対にできないもの。それに、もらい事故の確率ってけっこう高そうだよなあなんて、最近高速走ると感じてしまいヘタレてしまうんだよなあ。

 伸び盛りというか、見せる風景に少し広がりあり。メジャーと契約をかわし、これから自分たちの道が広がっていることを信じて一丸になっている。それに触れながら、国際大会に出た伸び盛りのユース世代のサ
ッカー選手のようなもんか、とも思う。胸いっぱいの大志はずっと持ちつづけていてほしいと思う。シングル曲らしい、自分たちにとって初めてのヴォーカル曲と断る曲をやっていたが、かつてのマッドネスやセレクターら2トーン系バンドのお復習いは、音楽性の部分でも、クスっとできる態度の部分でも大アリだと思った。

ロン・カーター

2004年1月14日
 南青山・ブルーノート東京。ファースト・ショウ。大御所ベーシスト(2001年6月7日)のギグは、『ザ・ゴールデン・ストライカー』という新作のフォーマットによるもので、ピアノ(マルグリュー・ミラー)とギター(ラッセル・マローン、2001年1月31日)というドラムレスの編成。3人は蝶ネクタイしての正装。鼻唄キブンで、無理なく、ちょっと黄昏たノリ(それは十二分に留意されてのものだろう)の室内楽的な演奏を重ねていく。アンコールの「いつか王子様が」なんて瀟洒で、合っている。なんか、ジャズの肝をさらりと撫でる。こーいうのはあり。カーターの余裕の指裁き(左手の小指を非常に多用するんだナ)を見ながら、こんなアコースティック・ベースの権化のような人も、70年代初頭(CTI系セッション)はそれなりにエレクトリック・ベースを手にしていたことを思い出す。時代やその人の年代によっても、アーティストのポイントは移行してくる……。
 ずっと年末は昼夜が逆転していたものの、正月そうそう見事に正常に戻りニッコリ。例年になくとっても暖かい新年明けで、それにもにっこり。でも、今朝はちょっと寒いかも。なんとか、家にあるCDを3分の1処分しようとしているのだが、ぜんぜん作業は進まない。いや、やる気がまったく出ない。駄目人間、という文字がアミ5パーセントで頭のなかを漂う。逃避でマジメに原稿仕事をやっちゃったりして……。

 昼間は髪を切りにいき、夜は今年初めてのライヴ。昨年8月3日の項で、見逃したけどまた来るでしょと書いているが、こんなに早くやってくるとは。ははは、嬉しい。ぼく、アット・ザ・ドライヴ・イン(2000年5月24日、2000年8月6日)のときから、中心人物のオマーとセドリックを心憎からず思っているんだよなー。

 前座で、バトルズというインストの4人組。ドラムに、ギター/キーボード二人に、ギター専任一人という変則編成。うわあ、こりゃすげえ。乱暴に言ってしまえば、シカゴ音響とジャム・バンドとプログレッシヴ・ロックを創造性豊かに掛け合わせた感じ。なんともスキルフルであり、感性の部分においても非常に研ぎ澄まされてて、刮目。とくに、ドラムのパワフルにして技ありの叩きっぷり(ときに人力ダブっぽい感じも)には惚れ惚れ。なんと、彼はヘルメットにいた人だそうだが。へえ。ヘルメットはジャズ大好きという奥行きを持つ(オルタナ系)ロック・グループとして鳴らしたので、ここでの妙味もなんとなく納得。かつて、そのフロントに立っていた丹精な顔したペイジ・ハミルトンにインタヴューしたとき、ジャズ話で盛り上がったっけなー。おそらく、今年のベスト10に入るだろうライヴ。とにかく、最高。大発見! 

 そして、ザ・マーズ・ヴォルタ。彼らの初来日ステージのとき(2002年4月7日)のように、単独演奏をフューチャーすることなく(とくに、黒人キーボード奏者は奥に引っ込むようになってしまった)、全体のバンドの絡みや仕掛けで表現を聞かせる。流動感は減じたが、曲が長いのは同じ。今回はパーカッション奏者が新たにバンドに加わっていたが、ほとんどいてもいなくても変わりがない感じ。ただし、痩身で頭は簡易アフロといった感じで、それはグループの風情には溶け込むものであったが。バトルズの後だとちょっと分が悪いところもあったが、ロックの流儀に染まろうとするところとロックのそれから離れようとするところの微妙な行き来が興味深いバンドであると思った。ロックに対するファジーな距離感……こそが彼らの肝。場所は渋谷・アックス。見事な入りでした。オトコが多かったような気がしたが、彼らはオトコ人気のバンドなのか? 

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