ロサンジェルス出身、バークリー音大在籍中に録ったデビュー作はグレッチェン・パーラト(2009年2月3日、2012年2月22日、2013年3月19日、2016年9月4日,2017年9月20日)がプロデュースしていた現代女性ジャズ歌手の公演を、南青山・ブルーノートで見る。セカンド・ショウ。

 赤系のカジュアルなワン・ピースを着た(←それは、気安い感じを受け手に与えるか)デスバーグを、テナー・サックスのルーカス・ピノ、ピアノとキーボードのマティス・ピカード、エレクトリック・ベースのアーロン・リャオ、ドラムのジョナサン・バーバーという面々がバックアップ。まだそんなに年が行っていないだろう彼らは、主役を親身に盛り立てるといった感じで、それはまさしくバンドの風情ありか。ピアニストがちょっとアートな弾き方をしていたと思ったら、一転してラテン調のビートになったとたん笑顔で手拍子を促すハンド・クラッピングをするあたり、フフフとなれました。

 初々しさを持ちつつ余裕ありとも思わせるテスバーグは、キャット・エドモンソン(2015年5月10日、2018年5月29日)ほどではないが、なかなか可憐系のクセ声の持つ主。であるとともに、実演に触れると彼女はスタンダードを歌わない場合でもオーソドックスなジャズ・ヴォーカル表現をしっかり愛好する人物であることもくっきり浮き上がる。その際たるものは、歌い方。歌詞に沿って、手振りや動きを入れながら歌う様は若手のジャズ歌手にはないと言っていいはず(彼女も30歳ぐらいかと思うが)。また、彼女はピアニストとデュオでしっとり歌う局面もあった。だが、一方ではパーラト流れの今様の音楽性も併せ持つわけで、そのデュアルな感覚は面白いし、彼女の個性につながっている。ちなみに、新作『アウト・フォー・デリバリー』の鍵盤はクリス・バワーズ(2014年7月27日)が弾いている。

 5弦のフレットレスを弾いていたべーシストはけっこうサム・ピック奏法をぐつぐつと多用。この手のタイプとしては、それは珍しい。最初はダブル・ベース奏者を雇ったほうがいいんじゃねとも思っていたが、そういう様に触れるうちに彼でいいっかという気持ちになった。彼女の新作レコーディングにも参加しているドラマーのバーバーは鬼のように簡潔なキット(カノウプス)を用いていたが、スネアは二つ置き。タムの位置にあった一つの方の音はかなりパシャパシャした音質を持ち、それはプログラム音的な手触りをどこか醸し出す。今、スネアを二つ置くドラマーは少なくないが(それを曲により叩き分ける場合が多い)、彼ほど1曲の中で二つのスネアを両方叩く人には初めて触れた。

▶過去の、グレッチェン・パーラト
http://43142.diarynote.jp/200902040424558168/
http://43142.diarynote.jp/201202251301444372/
http://43142.diarynote.jp/201303221327416224/
http://43142.diarynote.jp/201609201052518160/
https://43142.diarynote.jp/201709240954004876/
▶︎過去の、キャット・エドモンソン
http://43142.diarynote.jp/201505111009314451/
https://43142.diarynote.jp/201805300825448262/
▶︎過去の、クリス・バワーズ
https://43142.diarynote.jp/201408051020111821/
https://43142.diarynote.jp/201901301508232449/ (インタヴュー)

<今日の、R.I.P.>
 ジョアン・ジルベルト(2003年9月12日)が、6日におなくなりになった。
▶過去の、ジョアン・ジルベルト
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2003-9.htm
https://43142.diarynote.jp/201906110953249486/ ジルベルトの存在をトリガーに置く映画。日本では、8月下旬から公開。