ヒューマン・トラスト・シネマ渋谷で、モータウン・レコードを扱うドキュメンタリー映画を見る。ドキュメンタリー畑のベンジャミン・ターナーとTV-CFをいろいろ作って思いるゲイブ・ターナーの兄弟が監督した2019年米国映画だ。原題は、「Hitsville: The Making of Motown」。かつてのモータウンの愛称は、“ヒッツヴィルUSA”。お金は、現在モータウンを抱えるユニヴァーサル系列が出している。

 本人全面協力による、ベリー・ゴーディJr.の成功一代記。今はモータウン博物館になっている、ミシガン州デトロイト西グランド通り2648番地の一軒家に作られた初代モータウン社屋(ゴーディJr.はその2階に住んでいたそう)を訪ねたゴーディJr.とスモーキー・ロビンソンの会話(2人のやり取りはロザンゼルスでも撮影されている)を軸に、映画産業への進出やセレブリティ生活を求めて1970年代前半にロサンゼルスに本社を移転させるころまでの彼の成功譚が綴られる。 

 しっかし、1929年生まれのゴーディJr.と1940年生まれでかつてモータウンの副社長を務めたこともあったはずのスモーキー・ロビンソン(2019年9月20日)は本当に元気。とくに撮影時、80歳代後半だったゴーディJr.の矍鑠な様と言ったなら。また、2人は本当に仲がよく、饒舌。本当によく喋る。いっぱい捨てた撮影テープがあるんだろうな。最後には、2人でモータウン社歌を一緒に歌うシーンも出てくる。そんなのあったんですね。ロビンソンは昨年秋に米国ツアーをしぼくも見に行ったが、この映画は本国では8月公開のようなので、それに合わせたという側面もあったのかな? ところで、スモーキー・ロビンソンはLA移転に大反対だったそうだ。

 冒頭ではゴーディJr.のモータウン設立までのことが軽く語られるが、曲作りにも長けた音楽好きであり、まずはレコード屋を始めたもののツブして(それは洗練されたジャズを中心に置き、彼が好まなかった大衆人気を持つブルースを在庫に置かなかったことが敗因であると、本人は自己分析。→それにより、大衆性=ポップとは何かを悟ったそう)しまい、その後に務めたフォードの自動車生産ラインにおける分業体制の効率の良さをを学んだことが、モータウンの会社組織運営に応用されたことが示される。そして、それ以降、モータウンの歩みと主となるアーティストのことが語られる。

 モータウンの分業体制の妙とリンクされ、映画は<タレント発掘>とか<アーティスト教育>とか<A&R>とか<ツアー>とか、いくつもの章立てがされて進められる。わりと時系列に紹介されもするので違和感はないし、見やすくはある。終盤は、ゴーディJr.自らが穏健なレーベルのイメージ維持のためにリリースに反対したと語るマーヴィン・ゲイの社会的メッセージ曲「ワッツ・ゴーイン・オン」とからめ、白い米国社会におけるモータウンということにも少し言及される。

 とにかく、当時のフォルムや写真は、それだけで胸が高鳴ったり、目が点になったり。スティーヴィー・ワンダー(2005年11月3日、2010年8月8日、2012年3月5日)、ティト・ジャクソン(2010年7月15日、2015年12月5日、2016年8月21日、2019年2月1日)をはじめとする現行ザ・ジャクソンズ(2011年12月13日、2012年12月7日)のメンバー、ブライアン&エディ・ホーランド、マーサ・リーヴスらをはじめ、ドクター・ドレー(モータウンの成功にならい、彼もレコード会社を起こしたそう)やジョン・レジェンド(2005年5月8日)やニール・ヤング(彼はバッファロー・スプリングフィールドのブルース・パーマーやリック・ジェイムズらとマイナー・バーズというバンドを組んでモータウンと契約したことがあった。録音もしたものの、それは未発売。2001年7月28日)など、この映画のために撮り下ろされた関連アーティスト/スタッフたちの発言も随時組み込まれる。管理部門のスタッフには、それなりに白人スタッフがいたことも伝えられる。

 映画アタマは、モーター・タウン=自動車産業に支えらた1960年ごろのデトロイトの街を紹介する映像が流されるが、それを見ると本当に華やかキラキラしていて思わずため息。華あるポップ・ミュージックは社会の栄華と繋がったものであるのだと、皮膚感覚で感じてしまう。また、いくつかの土地に飛び、様々な人たちが関与する映画の内容に触れると、新型コロナ流行前に完成した作品だとも痛感する。ドキュメンタリーにせよドラマものにせよ、いろいろ撮影が遅延しているものは今たくさんありそうで、これから新作の数が減ったり、切り口が狭められた内容のものが多くなったりするだろう。

▶︎過去の、スモーキー・ロビンソン
https://43142.diarynote.jp/201909260735539261/
▶過去の、スティーヴィー・ワンダー
http://43142.diarynote.jp/200511130015240000/
http://43142.diarynote.jp/201008261618276388/
http://43142.diarynote.jp/201203062006429595/
▶過去の、ザ・ジャクソンズ/ティト・ジャクソン
http://43142.diarynote.jp/201007161048008489/
http://43142.diarynote.jp/201112201157058751/
https://43142.diarynote.jp/201212131613509711/
http://43142.diarynote.jp/201512091352434769/
https://43142.diarynote.jp/201608241301049887/
https://43142.diarynote.jp/201902020805005099/
▶過去の、ニール・ヤング 
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2001-7.htm フジ・ロック
▶過去の、ジョン・レジェンド
http://43142.diarynote.jp/200505141714260000/
▶︎過去の、モータウン絡みの映画
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2003-12.htm
http://43142.diarynote.jp/?day=20060411 ザ・ファンク・ブラザース公演
https://43142.diarynote.jp/200701211122480000/

 その後は、渋谷・JZ Blatで、中川ヨウのプロデュースに公演を見る。クラシック・ギター奏者の鈴木大介(2009年10月8日)を主役に置くもの。彼は一般大学に通い、個人師事のもと技量を得て海外コンペティションで好成績を納め、その世界の前線に立つようになった人であるよう。それって、クラシックの世界では珍しいのではないだろうか。そっちには疎いので、よく分からないが。そんな鈴木が、広い視野を持つ働き盛りのジャズ系奏者とたちと協調し、普段は演奏しない曲を披露するという主題を持つ。選曲とアレンジは、彼がしているよう。

 なんか飄々とした感じの鈴木をサポートするのは、テナー・サックスの田中邦和(2010年7月1日、2010年12月16日、2012年10月16日、2012年12月11日、2015年12月17日、2016年7月16日、2017年7月8日)、ピアノの林正樹(2013年9月6日、2015年9月27日、2015年12月17日、2016年7月16日、2018年5月13日 、2019年1月7日、2019年10月6日、2019年11月19日、2019年11月21日、2019年12月18日、2020年8月28日)、ダブル・ベースの鈴木正人2003年12月4日、2004年7月6日、2004年11月30日、2005年6月9日、2005年10月30日、2005年11月15日、2007年1月27日、2007年10月17日、2008年1月31日、2009年1月16日、2009年10月31日、2011年3月2日、2011年5月22日、2013年1月29日、2013年2月19日、2013年8月29日、2014年2月20日、2014年4月3日、2014年12月28日、2016年9月27日、2017年9月8日、2018年6月2日)、鈴木大介とは中学校で同級生であったというドラムの大槻"カルタ"英宣(2004年11月30日、2007年11月27日、2010年2月17日、2010年11月26日、2013年7月1日、2013年9月13日、2015年7月23日)という面々だ。

 オープナーは、ニコロ・パガニーニの曲を独奏。彼は引きこもり期に、このイタリア人クラシック・ヴァイオリニスト/ギタリストの曲を演奏する映像を次々にあげていたよう。次の鈴木の自作曲は林と鈴木正人が入っての演奏だったが、なるほど曲調はクラシックともジャズとも言い難い。と、思ったら……。

 なんと、フルのメンバーでやる3曲めから、鈴木はエレクトリック・ギター(テレキャスターの形だった)を手して、座らずに立って演奏する。足元をいじっている感じはなかったが少しエフェクターも通すなか、彼は一部分を除いてはすべてピック弾きでことをこなす。それ、普段の鈴木のパフォーマンスに接している人だとギョっとなるものではなかったか。もちろんソロを取る場合もあるが、リズム・ギター的演奏とともにアンサンブルを導き、随所でメンバーにソロを取らせていた。林の強弱に満ちた演奏はとくに耳を引いた。

 演目はボサっぽい感じのギターの刻みで開かれた「8 1/2」をはじめフェリーニの映画音楽曲を中心に、ニノ・ロータの曲も1曲披露。それらが鈴木大介流の端正さやユーモアとともにさくっと編み込まれた形で送り出される。そこには、原曲をもう一つ別のところに持っていきたいという意思もにじませるか。考えてみれば、1曲演奏したオリジナル以外は皆イタリア人の楽曲を題材に置いていたわけで、このショウは鈴木が感じる年代もジャンルも超えたイタリア的感性を自らのフィルターを通してぽっかりと浮き上がらせるというテーマも抱えているような気がした。とにかく、せっかくの場であるので、通常とは違うものを見せたいという気持ちは大きかったのではないかな。

▶︎過去の、鈴木大介
https://43142.diarynote.jp/200910140952248669/
▶過去の、田中邦和
http://43142.diarynote.jp/201007081547031840/
http://43142.diarynote.jp/201012171104366095/
http://43142.diarynote.jp/?day=20121211
http://43142.diarynote.jp/201512271306411506
http://43142.diarynote.jp/?day=20160716
https://43142.diarynote.jp/201707101243147840/
▶過去の、林正樹
http://43142.diarynote.jp/201309121810294280/
http://43142.diarynote.jp/201510021129591335/
http://43142.diarynote.jp/201512271306411506
http://43142.diarynote.jp/201607191312426603/
https://43142.diarynote.jp/201805150750157494/
https://43142.diarynote.jp/201901090933013218/
https://43142.diarynote.jp/201910070759405954/
https://43142.diarynote.jp/201911201705565775/
https://43142.diarynote.jp/201911230723444744/
https://43142.diarynote.jp/201912191314476679/
https://43142.diarynote.jp/202008290914077509/
▶︎過去の、鈴木正人
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2003-12.htm コンボ・ピアノ
http://43142.diarynote.jp/200407062149440000/
http://43142.diarynote.jp/?day=20041130
http://43142.diarynote.jp/?day=20050609
http://43142.diarynote.jp/?day=20051030
http://43142.diarynote.jp/200511221816310000/
http://43142.diarynote.jp/200702010112550000/
http://43142.diarynote.jp/200710181835010000/
http://43142.diarynote.jp/200802051630130000/
http://43142.diarynote.jp/?day=20090116
http://43142.diarynote.jp/?day=20091031
http://43142.diarynote.jp/?day=20110302
http://43142.diarynote.jp/201105230926029205/
http://43142.diarynote.jp/201301311032072367/
http://43142.diarynote.jp/201302201720351212/
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http://43142.diarynote.jp/201709110843278416/
https://43142.diarynote.jp/201806051311346158/
▶過去の、大槻“カルタ”英宣
http://43142.diarynote.jp/?day=20041130
http://43142.diarynote.jp/200711290932200000/
http://43142.diarynote.jp/201002191112552825/
http://43142.diarynote.jp/201012051849242327/
http://43142.diarynote.jp/?day=20130701
http://43142.diarynote.jp/201309161512043853/
https://43142.diarynote.jp/201507251003319800/

<今日の、おつとめ>
 国税調査の回答をネットでする。5年おきにやるみたいなので、これをするのは5年ぶりとなるのか? 前回回答したのはもっと昔のような気がするが、まだ5年しかたっていないのか。という気に、今回はなった。前回はネット回答はなかったよな?  間違いなく、楽ですね。

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