KAKULULUセレブレイト企画、2日目は13時から。と、タイム・テーブル表示に従い池袋・東京建物 Brillia HALLに開演時間に合わせて入ったら、すでに演奏が始まっていた。あれれえ?

 1番手は、伊藤ゴロー(1999年6月3日、2014年8月3日、2018年1月7日、2018年6月4日) アンサンブル。ガット・ギターを持つ彼に加え、ピアニストがステージに向かって後方左側、また後方右側順にコントラバス、チェロ、ヴァイオリン、フルート奏者と並ぶ。普通、音の低い弦楽器が外側だが、逆であった。この6月に出た『アモローゾフィア ~アブストラクト・ジョアン~』(ユニバーサル)の録音参加者選抜隊によるもののよう。とにもかくにも、格調高く弦仕様の優美で大人のインスト表現が繰り広げられる。伊藤はソロを取るわけでもなく淡々、各奏者をギター音で指揮している感じもあったか。1年ぶりのライヴで少し戸惑っているというようなことを言っていたが、プロフェッショナルなり。

 ピアニストは佐藤浩一(2014年10月22日、2016年7月11日、2017年10月27日、2018年1月7日、2018年4月7日、2018年6月4日、2019年1月5日、2019年10月30日、2020年8月16日、2021年7月30日)だった。先週インタヴューしたばかりだが、気安くしゃべっていた人が別世界のような広いステージで粛々と演奏している姿を見ると、不思議な気持ちになる。特に、こういうとても厳かで美的感覚が強い音楽であると……。佐藤は2枚組『Embryo』(Nagalu)を11月30日に出すが、そのディスク1はピアノ・ソロ(古典調律による)で、ディスク2が弦音とギターとリズム隊をいろいろ組み合わせる内容を持つ。この日のライヴは、彼がリズム出しして始まる曲もあった。

▶過去の、伊藤ゴロー
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/livejune.htm エスピリト
http://43142.diarynote.jp/201408061110256933/
http://43142.diarynote.jp/201801081118162617/
https://43142.diarynote.jp/201806060708363548/
▶︎過去の、佐藤浩一
http://43142.diarynote.jp/201410251055118180/
http://43142.diarynote.jp/201607121045394372/
http://43142.diarynote.jp/201711020707155260/
http://43142.diarynote.jp/201801081118162617/
https://43142.diarynote.jp/201804081516393408/
https://43142.diarynote.jp/201806060708363548/
https://43142.diarynote.jp/201910311450514339/
https://43142.diarynote.jp/202008171907569224/
https://43142.diarynote.jp/202107310742529881/

 2番目は、ピアノと歌の寺尾紗穂(2020年3月13日)、エレクトリック・ベースの伊賀航(2021年5月26日)、ドラムのあだち麗三郎(落ち着いた音楽性ながら、キックを二つ、左側にはスネア二つ〜とはいえ、一つはスナッピー/金属線群なしのようなのでタムと言った方がいいのか〜を並べる)の3人組、冬にわかれて。今年出した『タンデム』(P-ヴァイン)からの曲を中心にやったようだが、伊賀航って女性が歌うとしっくりくるほんわか好曲を書くんだな。

▶︎過去の、寺尾紗穂
https://43142.diarynote.jp/202003141341444882/
▶︎過去の、伊賀航
https://43142.diarynote.jp/202105271048588035/

 3番目の出演者は、モノンクル(2014年2月20日、2016年8月10日、2018年5月13日、2020年1月19日)。ヴォーカルの吉田沙良とエレクトリック・ベース/サンプラーの角田隆太のお二人に加え、今回はギターとドラムによるキーボードレスの編成による。だが、鍵盤音やコーラスやビートのプリセット音が趣味良く重ねられる。とにかく、先の 冬にわかれて がスカスカのサウンドだったので、もう始まってその濃密にして達者なサウンドに耳奪われる。プリセット音なしの3人の演奏による曲もあったが、それでも十全。みんな、うまいな。とくに、ギターのサポート音には感心。腕の立つ人でも、サウンド総体からエフェクターをかけたカッティング音が微妙に浮いた感じになる場合が往々にしてあるのだが、それがない。そして、挟間美帆(2014年7月10日、2015年10月15日、2016年10月28日、2017年9月3日、2019年2月6日、2020年8月16日、2021年7月30日、2021年9月19日)のオーケストラ公演(2021年7月30日)にゲスト入りした際の吉田の歌いっぷりに感心した後だと、こういうポップ&コンテンポラリーな設定での歌い口もより興味深く感じられる。やはり、難しいライン取りをしているな。彼女たちがもっと簡単で晴れやかな曲をやれば、ドリームズ・カム・トゥルー的な人気を得ることができるのか。と、3秒考えた。

▶︎過去の、ものんくる/吉田沙良
https://43142.diarynote.jp/201402210802184994/
http://43142.diarynote.jp/201608111103309626/
https://43142.diarynote.jp/201805150750157494/
https://43142.diarynote.jp/202001201340286359/
https://43142.diarynote.jp/202107310742529881/
▶過去の、挾間美帆
http://43142.diarynote.jp/201407111305232157/
http://43142.diarynote.jp/201510181000334516/
http://43142.diarynote.jp/201610311054183284/
https://43142.diarynote.jp/201709101639096076/
https://43142.diarynote.jp/201902071836593799/
https://43142.diarynote.jp/202008171907569224/
https://43142.diarynote.jp/202107310742529881/
https://43142.diarynote.jp/202109200901226322/
 
 4番目は、ドラムの石若駿(2014年9月26日、2016年6月27日、2016年7月21日、2016年9月4日、2017年6月21日、2017年7月12日、2019年1月21日、2019年3月16日、2020年10月29日、2021年4月11日、2021年4月19日、2021年7月9日、2021年11月5日)とダブル・ベースの金澤英明(2004年7月27日)とピアノの石井彰(2005年6月5日、2006年11月3日、2011年7月25日、2021年3月29日)からなる、Boys Trio。

 石若がこの顔ぶれのトリオを組んだのは中2であったそう。それ、日野皓正(2005年6月5日、2006年11月3日、2011年3月28日、2011年7月25日、2011年9月2日 、2013年9月22日、2014年4月4日、2015年3月10日、2017年9月3日、2018年8月11日、2019年4月27日)グループ流れで結成されたのだろう。3人は日野をゲストに迎えた『Boys』(Anturtle Dede)を昨年リリースしている。まず、3人でゆったりピアノ・トリオ表現を1曲やったあとは、フロントにアルト/ソプラノ・サックスの松丸契(2021年4月6日、2021年9月23日)とエレクトリック・ギターの細井徳太郎が入る。石若流れの二人が入って以降は、けっこうアブストラクト路線に移行。スピリチュアルなところもあったか。一つは3つの曲を続けたような感じの長尺のものだったが、2番目はマイルス・デイヴィスの「オール・ブルース」のリフでシャンソンの「愛の賛歌」のメロディをぶちまけるというもの。はは。

 ここで、細井徳太郎の演奏を聞けたのはうれしい。ふふ、ジミ・ヘンドリックス型の吹っ切れた演奏をかます。マーク・デュクレなんかを想起するのも容易か。ジャズにも一度ちゃんと浸った末にもう一回りして原初的衝動に満ちた演奏をしているという風情、なり。君島大空(2020年11月19日)なんかとも親しいようで、今後もいろいろな彼を見れるといいな。

▶︎過去の、石若駿
http://43142.diarynote.jp/201409291402101328/
http://43142.diarynote.jp/201607221000152412/
http://43142.diarynote.jp/201606281737237220/
http://43142.diarynote.jp/201609201052518160/
http://43142.diarynote.jp/?day=20170621
http://43142.diarynote.jp/201707130853185809/
https://43142.diarynote.jp/?day=20180404
https://43142.diarynote.jp/201901231045028294/
https://43142.diarynote.jp/201903171331065828/
https://43142.diarynote.jp/202010300958115053/
https://43142.diarynote.jp/202104121207459452/
https://43142.diarynote.jp/202104211350032210/
https://43142.diarynote.jp/202107100947566078/
https://43142.diarynote.jp/202111061132061463/
▶︎過去の、金澤英明
https://43142.diarynote.jp/200407271618520000/
▶︎過去の、石井彰
http://43142.diarynote.jp/200506120639310000/
http://43142.diarynote.jp/?day=20061103
https://43142.diarynote.jp/201107310727152406/
https://43142.diarynote.jp/202103300808386569/
▶︎過去の、松丸契
https://43142.diarynote.jp/202104071750586426/
https://43142.diarynote.jp/?day=20210923
▶過去の、日野皓正
http://43142.diarynote.jp/200506120639310000/
http://43142.diarynote.jp/?day=20061103
http://43142.diarynote.jp/?day=20110328
http://43142.diarynote.jp/201107310727152406/
http://43142.diarynote.jp/?day=20110902
http://43142.diarynote.jp/201309260930584072/
http://43142.diarynote.jp/201404070654593139/
http://43142.diarynote.jp/201503110740041978/
http://43142.diarynote.jp/201709101639096076/
https://43142.diarynote.jp/201808120917002515/
https://43142.diarynote.jp/201904271153238361/
https://43142.diarynote.jp/201904281151232549/
▶︎過去の、君島大空
https://43142.diarynote.jp/202011201047548918/

 この後は最後の出演者、キセル(2001年5月14日、2009年4月4日)が登場したはずだが、場所を移動する。ついでに、喉を少し潤し……。

▶︎過去の、キセル
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2001-5.htm
https://43142.diarynote.jp/200904120632543345/

 夜は、代官山・晴れたら空に豆まいて で、関西のブルース・シンガー/ギタリストである田中名鼓美を見る。2部制で、彼女は異なるバンドを従えた、オリジナル曲主体のパフォーマンスをそれぞれで見せた。昼間とは、がらりと音楽性が変わるナリ。

 田中の過去の3枚のアルバム曲や新録曲や近年の配信曲をまとめた『Onward and Upward』(P-ヴァイン)を6月にリリース。そのときに、ミュージック・マガジン誌記事用に彼女にインタヴューしたのだが、とっても生理的に楽しいキャリアを持っていて、応援したいなと思わせる。大人になってからの女性ミュージシャンのあり方の、ロール・モデル足り得るとも言えるかな。なお、名鼓美は本名で、「父(音楽好きで、その流れで彼女は英語曲に親しんだ)が大学生のときに下宿していたお宅に鼓があって、それを叩かせてもらった際の感激があって、打てば響くような心の持ち主になるようにと付けたようです」、とのこと。

 1部はNacomi &The Blues Templeでのライヴ。Pierre落合(ギター)、高野秀樹(ドラム)、松田エビス隆(ベース)、ゲストのNATSUKO(ハーモニカ)によるバンドでみんな赤基調の服でまとめている。田中は英語にも堪能で、海外のブルース・フェスにもいろいろ出張っているが、その際はこのバンドで行っていたりもするよう。フリなんかも楽しく決まる部分もあり、エンターテインメント感覚にも留意したうえで、華のあるブルースをやると説明できるか。オリジナルに加え、オーティス・ラッシュの「ホームワーク」なんてのもやっていた。

そして、2部はNacometersによるパフォーマンス。北田太一(ドラム)、masakimurase (キーボード)、川辺ぺっぺい(ベース)の3人がサポートする。こちらはブルース・ビヨンドの音楽性を持つ曲を披露。田中は2部ではスライド・バーを小指にはめて演奏した場合もあった。終盤2曲はセカンド・ライン調オリジナルで、最後はザ・バンドの「オフィーリア」を披露した。

<今日の、会場>
 池袋のほう、両日ともにけっこう大掛かりに映像がおさえらていた。各出演者(持ち時間40分)の合間は30分で、再入場可能なり。朝から何も食べてないので、伊藤ゴローを見たあと会場外に出るが、何かのイヴェントもやっているようですごい人出だ。昨日書いた向かいの公園はアルファルト敷で公園というよりは、広場だな。なんかいい店はないかなーとキョロキョロ歩いたら、近くになんか構えがいい感じの結構大きな居酒屋があり、昼間からちゃっんと(?)やっているので、思わずそこに入ってしまう。屋号は龍という文字が入っていたような。お酒2杯つまみ2皿をさらりと摂る。一気に落ち着く。その各休憩時にはKAKULULUの店主が出てきて、出演者たちと少しトークしたりもする。伊藤ゴローには、20年前にギターを習っていたことがあったそう。どうやら、豊島区のほうからKAKULULU側にこの1300人収容の立派なホールを使ってやりませんかという打診から、縁のアーティストたちによる2日間のイヴェントが実現したみたい。そして、同所に自分のドラムを置いていると言われる石若駿が総合キュレイター的な働きもしたようだ。通して実演に接すると、どこか時代性も持つ大人の趣味性の高い音楽と親和性の高いカフェであると了解できるか。
 代官山のほうは、全員着席仕様(テーブル出ず)ながら、フルハウス。休憩時にはトイレの列ができて、混んでいるんだなと思った。みんな名鼓美姐さんの実のある実演に接せて、にっこりではなかったかな。なぜか、奇跡的に(?)感染者数は低い数字で止まっている。なんとか、そのまま、、、。

コメント