熟れているというしかない柔和にして深みを持つクラリネットの調べに、いい意味でもさっとした得体の知れない響きを持つマリンバの多様な音がその周りを固め、ときに前に出る。そのノーPAの重なりに触れながら、技術やイマジネーションととともに、音量や音質のコントロールも秀でた奏者として必要とされる要件であるのだと深く頷く。とともに、改めてマリンバの音を録音するのは難しそうだなとも思う。

 過去、クラシックの世界ではなされていなかったという組み合わせ(臨機応変、なんでもありのジャズの組み合わせでも、ぼくは知らない、って、ジャズのマリンバ奏者って、そうはいないものなあ)とか。クラリネット奏者のリチャード・ストルツマン(2014年10月17日)とマリンバ奏者のミカ・ストルツマン(2014年10月17日)の夫妻デュオ・アルバム『デュオ・カンタンド』をフォロウするリサイタルを、銀座・ヤマハホールで見る。ビルの7〜9階にある同ホールはビル立て直しに伴い2010年に新しくなったようだが、ぼくは新しくなってからは初めてここに来る。通常のエレヴェイターとは別に奥の方に30人は平気で乗れる大きなそれが設置してあった。

 ビル・ダグラス、ウィリアム・トーマス・マッキンリー、ジョン・ゾーン(1999年9月24日、2006年1月21日)、武満徹、チック・コリア(2006年9月3日、2007年10月1日、2016年9月16日)、J.S.バッハ、大島みちる、アストル・ピアソラ(アルバムでは、このタンゴの異端巨人の曲は取り上げていない)らの曲を披露する。1部は二人の演奏が主で、それぞれのソロ演奏も披露。2部には、バンドネオンの北村聡(2010年10月16日、2012年6月17日、2012年11月21日、2013年3月23日)とコントラバスの西嶋徹(2012年11月21日)も加わる。バンドネオンが入ったバッハの「フーガ」の妙味には新鮮な思いを得たな。また、2部では武満徹が大好きであった歌手の石川セリがちらり出てきて、掠れた声でほんの少しアカペアラで歌った。それは、武満が作曲や制作に関わった彼女のアルバムの収録曲なのだろうか。

 一応クラシックの公演ではあるのだろうが、現代音楽的なエッジもあるのでぼくには聞きやすく、また取り上げた曲の作者にも表れているように、参照する世界が広いので無理なく音の行方に身をゆだねることができた。クラシック流儀〜楽譜に依った自由な音楽の旅があり、ストルツマン夫妻の信頼関係に満ちた日々の音楽生活の清華である、とすることができる出し物であったな。ミカは終始嬉しそうに叩き(アップ目の曲となるとアクションもダイナミック)、すましているようでいながらリチャードは随所にお茶目さをにじませていた。

▶︎過去の、リチャード・ストルツマン
http://43142.diarynote.jp/201410220711345595/
▶︎過去の、ミカ・ストルツマン
http://43142.diarynote.jp/201410220711345595/
▶︎過去の、ジョン・ゾーン
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/september1999live.htm
http://43142.diarynote.jp/200601271857530000/
▶過去の、チック・コリア
http://43142.diarynote.jp/?day=20060903
http://43142.diarynote.jp/200710121726160000/ 
http://43142.diarynote.jp/201609201820427313/
▶︎過去の、北村聡
http://43142.diarynote.jp/?day=20101016
http://43142.diarynote.jp/201206210942136482/
http://43142.diarynote.jp/?day=20121121
http://43142.diarynote.jp/?day=20130323
▶︎過去の、西嶋徹
http://43142.diarynote.jp/?day=20121121

<今日の、人はそれぞれ>
 銀座のブランド店の横を通ると入口からさあっと冷風が流れて来るのをしっかり感じる。19時近く、暑くはないのだから、かなり店舗内エア・コンディションの温度設定が低いのだと思う。ま、中にはバシッと服をきた従業員の人たちがいるので、その方々に合わせた室内温度になっているのだろう。しかし、入口横にシャキッと立っている少しこぎれいな黒服といった男性の方々、そこからどういう職業的愉悦を得ているのかを慮るが、察せず。
 ジャズ・ピアニストのジェリ・アレン(2004年11月3日)が60歳で亡くなったというニュースが飛び込んできた。
▶︎過去の、ジェリ・アレン
http://43142.diarynote.jp/200411071405440000/

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