まず見たのは、今の米国ジャズ界を代表する俊英ジャズ・ドラマーであるケンドリック・スコット(2009年3月26日、2013年2月2日、2013年8月18日、2013年9月11日、2015年2月4日)がずっと同じ顔ぶれで維持しているリーダー・グループであるオラクルの公演。南青山・ブルーノート東京、ファースト・ショウ。

 ただし、今回は2人がレギュラー・メンバーではなく、スコットも入っているテレンス・ブランチャード(2005年8月21日、2009年3月26日、2013年8月18日)のバンドの同僚が同行。サックスのジョン・エリスにかわりウォルター・スミスⅢ(2009年3月26日)、そしてウッド・ベースのジョン・サンダースにかわりジョシュア・グラブリー(2013年9月11日)がステージに上がった。翌日にスコットにインタヴューをしたら、家庭の都合と他のバンドのツアーで同行出来なかったそう。ピアノのテイラー・アイグスティ(2009年6月24日、2013年2月2日、2013年3月19日、2013年9月11日)、ギターのマイク・モレーノ(2008年11月22日、2013年9月11日)は不動の奏者なり。

 素晴らしい、リアル・ジャズの実演だったと思う。いい意味で予想がはずれたのが、純レギュラー編成でないために、個人プレイを前に出したものになるのかと思いきや、かなり奏者感の練り合わせがなされた、質の高い集団演奏をきっちり聞かせていたこと。それは、これまでになくスコットのドラム・ソロのパートが少なかったことでも明らかだ。

 そうでありつつ、各人のソロはちゃんと解き放たれ、今っぽいところは十全に持つのに過去の王道ジャズとの太い連続線をより感じさせる。てなわけで、ブラック・ポップやエレクトロやヒップホップも好きなスコットの純ジャズ・マンとしての矜持も山ほど感じさせられたショウ。それは、今いろいろな現代ジャズ系ドラマーが出すヒップホップ流れの意図的なほつれや乱れを、彼の繊細なドラミングは排していることから来る所感でもあるが。もちろん、スコットはレギュラー・グリップで叩く。今もっともレギュラー・ギリップ奏法が綺麗な現代ドラマーが、彼かも知れぬ。

▶過去の、ケンドリック・スコット
http://43142.diarynote.jp/?day=20090326
http://43142.diarynote.jp/201302041827243806/
http://43142.diarynote.jp/201308191407221107/
http://43142.diarynote.jp/201309161510164697/
http://43142.diarynote.jp/201502051100298160/
▶過去の、テレンス・ブランチャード
http://43142.diarynote.jp/?day=20050821
http://43142.diarynote.jp/200903271727246000/
http://43142.diarynote.jp/201308191407221107/
▶過去の、テイラー・アイグスティ
http://43142.diarynote.jp/200906300951327850/
http://43142.diarynote.jp/201302041827243806/
http://43142.diarynote.jp/201303221327416224/
http://43142.diarynote.jp/?day=20130911
▶過去の、マイク・モレーノ
http://43142.diarynote.jp/?day=20081122
http://43142.diarynote.jp/?day=20130911
▶過去の、ウォルター・スミスⅢ
http://43142.diarynote.jp/?day=20090326
▶過去の、ジョシュア・クランブリー
http://43142.diarynote.jp/?day=20130818

 その後、急いで渋谷・クラブクアトロに向かう。NYベースのインディ・バンドのザ・パインズ・オブ・ビーイング・ピュア・アット・ハートが出演。けっこう、混んでいた。ここのところ、このクアトロに来たなかでは一番の入り。この手のバンドはえてして演奏時間が短いが、前座があったので、ショウの後半は見ることができた。

 甘酸っぱい情緒を持つ、青春系ギター・バンド。そこここで、さざ波と言いたくなるキブンが送り出される。ある種の翳りは、好スパイスか。彼らをシューゲイズ島に入れる向きもあるようだが、シューゲイザーというと過剰なギター音や負の何かが渦巻くという印象を持つぼくには、ロックの草食系的側面を闊達に描くギター・バンドに聞こえてしまうが。フロント・マンのキップ・バーマンはエレクトリック・ギター弾き語りを披露する場面も。最後の曲は、マンチェスターの人気バンドだったジェイムスの1993年曲「レイド」のカヴァーで、新入りの(なのかな?)女性キーボード奏者がヴォーカルをとった。なんか、民謡スタンダード「ラ・バンバ」(もしくは、ザ・ビートルズもカヴァーした「ツイスト・アンド・シャウト」)をデフォルメしたよう感じも、それはあり。

<今日の、感謝>
 アラン・トゥーサン(2006年5月31日、2006年6月1日、2007年10月21日、2009年5月29日、2011年1月10日、2012年10月15日、2013年10月22日、2015年1月21日)が亡くなったというニュースが飛び込んで来た。今年1月にも来日し勇士を見せていたわけだが、彼は欧州ツアー中、この月曜のマドリッドでのショウの後に倒れ、病院に搬送中に亡くなったという。カトリーナ・ハリケーン被災後、ニューオーリンズの財産や担い手に脚光が浴びせられ、彼は第一線に復帰したわけだが、素晴らしい人生であり、幸福な晩年であったと思う。1938 〜2015年、享年77歳。早すぎるなんて、言うのはよそう。今思うのは、大学時代にレコードを探し聞き漁ることができて良かったということと、近年にライヴをいろいろ見ることができてうれしいっということ。ありがとうございましたあっ。
蛇足)ここのところだと、ツアー中にお亡くなりになったミュージシャンは、ソロモン・バーク(2004年9月19日、2010年5月29日)、ドナルド・ダック・ダン(2008年11月24日、2012年5月11日)、ジョニー・ウィンター(2011年4月13日、2012年5月27日2014年4月18日)、など。

▶過去の、アラン・トゥーサン
http://43142.diarynote.jp/200606071933120000/
http://43142.diarynote.jp/200606071936190000/
http://43142.diarynote.jp/200710221206190000/
http://43142.diarynote.jp/200906051614524790/
http://43142.diarynote.jp/201101111202336229/
http://43142.diarynote.jp/201210201217291727/
http://43142.diarynote.jp/201310241000242214/
http://43142.diarynote.jp/201501220923108418/
▶過去の、ソロモン・バーク
http://43142.diarynote.jp/200410071540230000/
http://43142.diarynote.jp/201006071813157081/
▶過去の、ドナルド・ダック・ダン
http://43142.diarynote.jp/200812110456078867/
http://43142.diarynote.jp/201205131715485366/
▶過去の、ジョニー・ウィンター
http://43142.diarynote.jp/201104142210374126/
http://43142.diarynote.jp/?day=20120527
http://43142.diarynote.jp/201404191144475668/

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