1960年NOLA(ルイジアナ州ニューオーリンズ)生まれのアルト・サックス奏者は、MCでソツなく日本語の単語を入れたりもする。その様で、昔何度も来日しているんだろうナと思わせる。ぼくは、この著名ジャズ・マンを今回初めて見たわけだが(おそらく)。

 マルディグラ・インディアン家系で、今もチーフの活動をしているとも伝えられる御仁。“ウィズ・ドクター・ジョン(2000年5月24日、2002年3月23日、2005年9月20日、2012年2月15日、2013年10月1日)”名義の『Indian Blues』(Candid,1992)のジャケット・カヴァーはチーフの格好をした彼の写真であったし、マルディグラ・インディアン音楽に向き合ったアルバムも彼は複数自主リリースしているようだ。何年か前には、NOLA出身トランペットの若大将的存在のクリスチャン・スコット(2008年7月23日、2008年9月10日、2009年1月31日、2009年9月15日、2010年9月3日、2011年12月17日)との連名アルバムを出したこともありましたね。あ、スコットって、ハリソンの甥なんだっけ。

 そんな彼はルイジアナ州バトンルージュにあるサザン・ユニヴァーシティやボストンのバークリー音楽大学を経て、1980年代初頭にアート・ブレイキーのザ・ジャズ・メッセンジャーズに加入。溌剌名手の登竜門的バンド員への抜擢で、彼の名前はジャズ界で広く知られることとなる。そして、そのときの同僚が、やはりNOLA出身で今のNYのジャズ新潮流シーンの元締め的な位置にいると書けるだろう、トランペッターのテレンス・ブランチャード(2005年8月21日、2009年3月26日、2013年8月18日)。彼とは、ザ・ジャズ・メッセンジャーズ在籍と重なりつつ双頭バンドを組んだときもありました。そういえば、2000年代上半期のハリソン・バンドにはベース奏者のヴィセンテ・アーチャー(2007年10月3日、2009年4月13日、2010年7月24日、2013年2月2日、2013年6月4日)がいて、そこから引き抜かれるカタチで、アーチャーはロバート・グラスパーのトリオに加入し、ブルーノート発の初期2作でベースを弾いていたりするわけだ。

 基本は気っ風のいいハード・バッパーだが、けっこう先鋭的な設定で突っ走らんとするときもあれば、ヒップホップ要素導入アルバムやかなりなスムース・ジャズ調作品もあり。基本、おっちょこちょい気味なナイス・ガイと分析することもできようか。ワン・ホーンのギター付きクインテットによるこの晩の実演も、アルトを思うまま吹く(ときに、濁りというか、重さも出て、テナー・サックスに近い質感を出す場合もある)だけでなく、いろんな人の曲もやり、歌も歌い、パーカッション・ソロも披露し、といった具合で、けっこうとっちらかっていたなあ。

 丸の内・コットンクラブ、ファースト・ショウ。バンド・メンバーのうち、ピアノとベース(一部はエレクトリック・ベースを弾く)とドラマーはまだ20代の感じで、ハリソンの教え子とか。一時はNYに住んだこともあったろうが、ハリソンはNOLA在住であり、サイドの4人も皆NOLA生まれであるとか。

 当初はフツーのジャズ調(って、妙な言い方だが)で進むが、皆気心が知れているはずなのに、なんかギクシャクというか、どこかその総体はデコボコした感じも与える。それも、NOLA流? 自作曲だけでなく、アート・ブレイキー、チャーリー・パーカー、ビリー・ストレイホーン、さらにはザ・ヘッドハンターズ(cf.ハービー・ハンコック)の曲も演奏。そのザ・ヘッドハンターズ曲に耳馴染みがなかったので、1990年後期のヴァーヴ発の再結成盤に入っていた曲だったのだろうな。そうだ、ザ・ヘッドハンターズの重要メンバーである打楽器奏者のビル・サマーズ(2002年8月2~4日、文中では触れてないが、自己バンドのロス・オンブレス・カリエンテスでの出演。2010年7月9日)はずっとNOLAを拠点にしていて、その流れで、ハリソンは2007年の同欧州ツアーにベニー・モウピンの代役で入ったことがあった。そのおり、ポール・ジャクソン(2002 年3月12日2008年6月12日)も不在で、なんとT.M.スティーヴンス(2001年10月31日、2011年8月12日、2012年5月31日)がベースを演奏。その模様は、P-ヴァイン発の2枚組実況盤で確認できます。

 MCで全員NOLA出身であることを何度か強調していたハリソンだが、後半は歌も歌い、NOLA味が出てくる。だって、やったのがNOLAパレードのスタンダード曲「聖者の行進」、ザ・ミーターズの「ヘイ・ポッキー・アウェイ」、ドクター・ジョンのカヴァーで知られる「アイコ・アイコ」だったんだもの!

▶過去の、ドクター・ジョン
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2000-5.htm
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2002-3.htm
http://43142.diarynote.jp/200510030016390000/
http://43142.diarynote.jp/201202161725143619/
http://43142.diarynote.jp/201310050709459564/
▶過去の、スコット
http://43142.diarynote.jp/200807241546500000/
http://43142.diarynote.jp/?day=20080910
http://43142.diarynote.jp/200902030206339619/
http://43142.diarynote.jp/?day=20100903
http://43142.diarynote.jp/?day=20100903
http://43142.diarynote.jp/201112201159168538/
▶過去の、ブランチャード
http://43142.diarynote.jp/?day=20050821
http://43142.diarynote.jp/200903271727246000/
http://43142.diarynote.jp/201308191407221107/
▶過去の、アーチャー
http://43142.diarynote.jp/200710121727100000/
http://43142.diarynote.jp/?day=20090413
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http://43142.diarynote.jp/201306060730086224/
▶過去の、サマーズ
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/framepagelive.htm
http://43142.diarynote.jp/?day=20100709
▶過去の、ジャクソン
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2002-3.htm
http://43142.diarynote.jp/?day=20080612
▶過去の、スティーヴンス
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2001-10.htm
http://43142.diarynote.jp/201108131129381378/
http://43142.diarynote.jp/?day=20120531
▶過去の、ザ・ファンキー・ミーターズ
http://43142.diarynote.jp/?day=20090725
http://43142.diarynote.jp/201401181209502731/

<今日の、はじめて>
 本編が終わると、全員遠いほうの通路をぐるりと回って退出。そして、そのまま、逆側(いつも出演者が出入りする通路)からまた5人はステージに戻って、アンコールに入る。わ、そんなことをした出演者には初めて触れるナ。さすが、パレード大好きなNOLAネイティヴで固められたバンドと、ぼくのココロは小躍り? 50代半ばのハリソンは、おやじギャグはかましても、老けている感じはなし。そんな彼には後日取材することになっているが、いやいやいっぱい聞きたいことがあるなー。ハリソンの公演は4日間、28日まで。
追記:インタヴューしたら、こんなことを言っていました。▶来日は、20回以上している。▶NOLAの音楽的特徴を語るのに、打楽器の重要性を、彼はなにげに強調していた。▶NYには1982年から20年間住んでいた。▶彼の父親、そして父親の死後にチーフとなったマルディグラ・インディアンの連の名は“ガーディアンズ・オブ・ザ・フレイム”。実は先に出した『Indian Blues』を出したとき、彼はまだチーフではなかったけど、あの格好をしちゃったそう。▶NOLAを舞台とし、NOLA文化愛が横溢する米国好評TV「トレメ」(本国では2010年ぐらいに放映)は彼の父と彼のことが下敷きになっているそうですがと問うと、「だって、僕が企画のときから密接に関わっただもん」。▶首を痛めたことがあって、あまりサックスを吹けないときに、歌うようになった。▶ヴィセンテ・アーチャーの、その後の活躍はうれしい。▶とても交友関係は広いようで、なんと数ヶ月前からザ・クッカーズ(2012年10月17日)に加入したそう。次回来日は、それで来る可能性もあるな。
 彼は、すべてオリジナル曲でかためた『Quantum Leap』(FOMP13131、自主リリースなのかしら)というCDをくれた。今回の同行奏者全員やビル・サマーズ(2010年7月9日、他)が入ったものだが、これがかなりアグレッシグかつ真摯なジャズ志向作でびっくり。おお、現代ジャズ・マンとして、勝負しているじゃないか! その手の演奏は、ぼくが見たショウでは見せていなかったので余計に驚く。ブルース曲も入ってもいるが、それも確かなミュージシャンシップのもと、並のブルース曲にはしないという意志が息づく。また、ファンキー要素やラップ導入もうまくそこで入れたものもある。傑作、じゃ。で、彼は資料を送るから連絡先を教えてといってきたので、名刺を渡す。そしたら、8月29日朝(日本時間。米国に発つ前か)にちゃんとメールを送ってきた。真面目で、マメな人です。
▶過去の、ビル・サマーズ
http://43142.diarynote.jp/?day=20100709
▶過去の、ザ・クッカーズ
http://43142.diarynote.jp/201210201219525855/

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