米国のアフリカ系女性アーティスト(うわあ、なんと大ざっぱな括り口)をはしご。六本木・ビルボードライブ東京→→南青山・ブルーノート東京。ともに。“この人”がやるからこそのライヴ・ショウの価値を持っていた。

 まず、ウィリアムスのショウ。わあ、ステージ上には、米国TVドラマ「アグリー・ベティ」のファッション雑誌の意地の悪いディレクターがいるう! ほんと、まんま。そんなに同番組を見ていたわけじゃないけど、あの存在感あふれる役者の様には、ヴァネッサ・ウィリアムズやるなあと思わせられたものなあ。女優としても活躍する(というか、いつごろからかそっちのほうが主か?)彼女は過去何度か来日公演を行っているはずだが、ぼくは今回初めて彼女を見る。

 ピアノ(音楽監督。デュエットも1曲聞かせる)、キーボード、ギター、ベース、ドラム、女性バックグランド歌手というサポート体制。今回の日本行きのために組まれたバンドのようだが、あらら、ドラマーはJ.T.ルイス(2005年6月8日、2005年6月9日)じゃないか。ハービー・ハンコック(2000年3月14日、2001年12月27日、2003年8月23日、2005年8月21日、2012年3月3日)のヒップホップ導入バンドである“ロックイット”バンドに参画して知名度を得て、いろんなR&Bセッションとともに、キップ・ハンラハン(2000年1月12日、2001年5月15日、2011年12月8日)やブランドン・ロス(2004年9月7日、2005年6月8日、2005年6月9日、2006 年9月2日、2011年5月5日、2011年12月8日、2011年12月14日)らひねくれ派からも信任を受ける御仁ですね。

 ウィリアムスは、エメラルド色の薄地ジャンプ・スーツ調衣装に身を固めてショウを進める。で、こんなに芝居がかって歌う人も(ぼくの経験上)めったにないと思った。と、書くと、なんか悪口みたいだが、それは女優としてもエスタブリシュされた彼女ならではの見事なプロの芸風に他ならず。うへ〜、彼女は見事にヴァネッサ・ウィリアムスを演じていると痛感。いや、なかなかの見物でした。で、件のTV役と違い、時に人の良さが出る感じがしたのも、悪くなかった。

 全体的なショウの感じは、MOR目の穏健R&Bという感じか。本人の持ち歌を中心に、チャカ・カーン(2003年10月10日、2008年6月5日、2012年1月10日)は一番好きな歌手と言って、彼女がルーファス(2008年11月10日、2010年1月20日、2011年6月22日、2012年9月9日、2012年9月12日)時代に発表した「エヴァーラスティング・ラヴ」を歌ったりもしたが、これ2005年作でもタイトル曲としてカヴァーしている。また、ザ・アイズレー・ブラザース(2001月12月6日、2004年3月1日)の「ワーク・トゥ・ドゥ」も歌ったが、こんなに華々しいこの曲のヴァージョンは初めて聞くかも? その2005年作ではアイズレーズの「ハーヴェスト・フォー・ザ・ワールド」も取り上げてもいて、彼女は何気にアイズレーズ好きなのか?

 4月には、1920〜30年代にハーレムにあったクラブ“コットン・クラブ”の栄華を扱ったミュージカル「アフター・ミッドナイト」にゲスト出演したようで、そこで歌った「ストーミー・ウェザー」も彼女は堂々披露。同クラブでリナ・ホーンが当たり曲とした、ハロルド・アーレンのスタンダードですね。同ミュージカルの楽団を務めるのはリンカーン・ジャズ・オーケストラの面々で、そのプロデューサの一人にはウィントン・マルサリス(2000年3月9 日)も名を連ねている。現在は、パティ・ラベルがゲストで出ているようだ。

▶過去の、ハンコック
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2000-3.htm
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2001-12.htm
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2003-8.htm
http://43142.diarynote.jp/200508230545510000/
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▶過去の、ハンラハン
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▶過去の、ロス
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▶過去の、カーン
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▶過去の、ルーファス
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http://43142.diarynote.jp/201001211346277187/
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▶過去の、アイズレーズ
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▶過去の、マルサリス/LJO
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2000-3.htm

 一方のアンディ・アロウは25歳で、アルバム2作をリリースしているシンガー/ギタリスト。プリンス(2002年11月19日)のバンドであるザ・ニュー・パワー・ジェネレイションに入ってツアーしたことがあり、自主制作の2作目『Superconductor』(2012年)はプリンスがエグゼクティヴ・プロデューサーに立っていて、楽曲共作や傘下ミュージシャン提供などいろいろ助力している。

 ステージに出て来たアロウ嬢は、うわあぁ〜い、綺麗かわいい。アフロな髪型もあって、多くの人はすぐにエスペランサ・スポルディング(2008年9月5日、2008年12月1日、2010年9月4日、2011年2月17日、2012年3月7日、2012年9月9日)を思い出すだろう。エスペランサが柔和でシャイな印象を与えるとしたら、彼女はもう少しシャープでワイルド。彼女はカメルーン生まれで2000年に米国に引っ越したという情報を持つが、パっと見た感じ肌の色はそれなりに白い。母親のほうが米国人のようだが、非アフリカ系なのではないか。

 キーボード、ベース、ドラムという編成のバンドによる出音のでかいバンド音にのり、彼女は嬉々として歌をのせる。やはり、歌声はかなり可憐。しっとり目の曲だと、ミニー・リパートン的とも言いたくなる? それなりに広がりある曲調やアレンジが施されていたスタジオ録音物の音が頭にあると、もう少し厚い、かつメロウなサウンドを実演でも求めたくなるが、アロウという個体により集中しやすくはなるかも。意外だったのは、ギターを手にせずシンガーに専念する場合が多く、ギターを手にしてもコードを爪弾いたり単純にストロークするぐらい(すぐに、歌だけになったりも)であったこと。彼女、プリンスのバンドでどういう役割をやっていたのだろう。御大はずっと来日していないし、ずばらなぼくは彼のライヴ映像もチェックしていないので、謎は見ていてどんどん深まった。巨漢奏者によるベース音がデカすぎとアタマから感じていたが、彼がギター的な役割も担おうとしているのら、それも分らなくはなく……でも、やはり音デカすぎだな。

 曲はオリジナルに加え、マーヴィン・ゲイ「ホワッツ・ゴーイン・オン」やザ・ドゥービー・ブラザースの「ロング・トレイン・カミン」なども披露。アルバムではメイシオ・パーカー(1999年8月6~8日、1999年10月28日、2001年4月17日、2002年11月19日、2005年9月6日、2007年9月13日、2009年1月21日、2010年2月16日、2010年9月3日、2013年2月2日)とトロンボーン・ショーティ(2010年12月13日、2012年2月2日)が活躍する弾けたファンク曲もあれば、スタンダード的風情を持つ瀟洒曲もあった。まだまだ、これから開ける引き出しはあるという感じか。

 何をやろうと、何を歌おうと、この娘がやればOK、すべては光輝く……。実もフタもないない書き方になっちゃうけど、初々しさもいまだ持つ彼女のパフォーマンスに接していて、そう感じずにはいられず。でも、それはポップ・ミュージックにおいては一番重要なことだろう。

▶過去の、プリンス
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2002-11.htm
▶過去の、エスペランサ
http://43142.diarynote.jp/200809071430380000/
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http://43142.diarynote.jp/201209191229057579/
▶過去の、パーカー
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/augustlive.htm
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/octber1999live.htm
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2001-4.htm
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2002-11.htm
http://43142.diarynote.jp/200509130313320000/
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http://43142.diarynote.jp/200901221504141906/
http://43142.diarynote.jp/201002171552164447/
http://43142.diarynote.jp/201009111624281899/
http://43142.diarynote.jp/201302041827243806/
▶過去の、トロンボーン・ショーティ
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http://43142.diarynote.jp/201202090942324966/

<今日の、比較>
 ウィリアムスとアロウの年齢差は25、6歳。倍なのだな。アロウもだいぶ前に「ザ・ゲーム」というTVコメディ・ドラマに出演したことがあったらしいが、今後はどういうふうに進んで行くのだろう。とか、個ある両者を続けて見て、ふと183秒間かんがえる。

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