毎年、池袋・東京芸術劇場で持たれている音楽フェスティヴァルの、昼下がりに行われた<スペシャル・コンサート>を見る。ロンドン在住の現代音楽家の藤倉大が仕切るもので、今年で5回目となる。ぼくが藤倉の名を知ったのは、ギタリストの笹久保伸(2013年8月29日、2014年5月24日、2014年12月12日、2017年2月4日、2018年6月3日、2019年11月24日、2020年9月18日、2021年2月14日、2021年7月10日)とのデーター交換によるエレクトロニカ傾向作『マナヤチャヤ』(ソニー)によってであった。この2人がどういう経緯で一緒の出し物を作ることになったかは知らないが、いろんな人たちが出る正味2時間にわたるプログラムを見ても、しなやかにして顔の広い人なんだろうと思わせられる。

 話は脱線するが、今年の笹久保伸のリモート期であることを逆手にとった快進撃はすごい。モニカ・サルマーゾ(2017年10月8日)やアントニオ・ロウレイロ(2013年8月29日、2013年9月6日、2017年4月15日 )、サム・ゲンデルら5人とそれぞれ“電線”対話した『CHICHIBU』(Chichibu)に続き、LAのあららな異才であるサム・ゲンデルとの『SAM GENDEL & SHIN SASAKUBO』(カルネ音楽部)、フランスのは破格鋭敏ギタリストのノエル・アクショテとのデュオ『Auto & Bauto』(Bandcamp)と、国外の大逸材と重なりあう好作品をこの半年間に彼は連発しているのだから、すごすぎ。口アングリ、耳ばっくり。うむ、彼もここに加えて欲しかったな。

 笙の東野珠実(2014年12月11日 )や箏の八木美知依(2008年8月24日、2008年9月25日)など和の楽器や回路をワープさせる出し物や、佐藤紀雄が率いる“アンサンブル+”による演奏など出し物はいろいろ。締めの曲は藤倉の曲を佐藤のノマド・アンサンブルと名付けられた20人ほどの弦楽器奏者たちが演奏する曲だったが、とっても重なりの妙が現れたもので引き込まれる。チェロ3とコントラバス1しか低音の楽器がいないのにそっちがとても豊かに聞こえたのにも頷く。その曲では、指揮をとるただのおじさんぽい佐藤がとっても立派に見えた。

 また、ヤン・バングと藤倉の協調映像も出されたり、大友良英(2002年3月17日、2003年6月28日、2004年2月6日、2004年10月10日、2004年11月7日、2005年4月26日、2006年1月21日、2006年4月18日、2007年4月21日、2009年5月31日、2011年6月8日、2012年3月21日、2013年7月13日、2016年9月4日、2016年10月27日、2019年11月12日)の偶発性にも満ちた曲を子供達とノマド・アンサンブルでやる曲もある。大友は毎回このフェスに作品を出しているようだが、いろんな枠を超えようとしつつユーモラスでもあるそれはやはり面白かった。

 根っこには、現代音楽ビヨンドの面白がり精神や実験性が。そして、まず作曲(といっても、どういう書かれ方がされているのかと思わすものもあるのが要点。多く曲は世界/日本初演と紹介されていた)あり、それらを一筋縄では行かない人選や編成で開き、その先にある創造的な何かをも求める催しが、大掛かりに実践されていることに安堵のようなものも覚えた。このライヴ評は日経新聞10月13日夕刊に出ます。

▶過去の、笹久保伸
http://43142.diarynote.jp/201309021134211584/
http://43142.diarynote.jp/201405271717357738/
http://43142.diarynote.jp/201412281015581474/
http://43142.diarynote.jp/201702081153548285/
http://43142.diarynote.jp/201710061415044353/
https://43142.diarynote.jp/201806051522321880/
https://43142.diarynote.jp/201911251210191459/
https://43142.diarynote.jp/202009190752549504/
https://43142.diarynote.jp/202102151301034903/
https://43142.diarynote.jp/202107111030289457/
▶︎過去の、モニカ・サルマーゾ
https://43142.diarynote.jp/201710121700178187/
▶過去の、アントニオ・ロウレイロ
http://43142.diarynote.jp/201309021134211584/
http://43142.diarynote.jp/201309121810294280/
https://43142.diarynote.jp/201704170805443358/
▶︎過去の、東野珠実
https://43142.diarynote.jp/201412251103164767/
▶過去の、八木美知依
http://43142.diarynote.jp/200808260821260000/
http://43142.diarynote.jp/200809270215092074/
▶︎過去の、大友良英
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2002-3.htm
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2003-6.htm
http://43142.diarynote.jp/200402061359140000/
http://43142.diarynote.jp/200410162220330000/
http://43142.diarynote.jp/?day=20041107
http://43142.diarynote.jp/200504301042210000/
http://43142.diarynote.jp/200601271857530000/
http://43142.diarynote.jp/200604210538510000/
http://43142.diarynote.jp/200704251227010000/
http://43142.diarynote.jp/?day=20090531
http://43142.diarynote.jp/201106141341111340/
http://43142.diarynote.jp/201203260805006088/
http://43142.diarynote.jp/201307160735048974/
http://43142.diarynote.jp/201609201052518160/
https://43142.diarynote.jp/201610310943306583/
https://43142.diarynote.jp/201911131405562579/

<今日は、盛りだくさん>
 公演後、受け付け階に降りると、ドラム音が聞こえてくる。おお、横のほうにあるガラス貼りのスペースで、八木美知依と本田珠也 (2000年5月9日、2002年9月22日、2003年6月10日、2004年10月13日、2007年12月4日、2011年5月5日、2012年7月16日、2013年7月27日、2015年5月20日、2018年1月19日、2018年4月7日、2019年7月16日、2021年4月6日、2021年4月14日)の2人がリハーサルをやっている。それは2時間後の無料(と思う)の出し物でとても興味惹かれるが、別の用事を入れてしまった。それをはじめ、昨日〜今日の2日間に渡りこの会場建物のあちこちでいろんな出し物が持たれているよう。地下の2箇所ではアンビエント音を流す部屋が2つあったし、またその階下では、ヤン・バングとアイヴィン・オールセット(2001年9月28日、2003年6月28日、2008年11月13日、2010年9月5日、2017年1月28日、2018年9月18日)のデュオ、さらにニルス・ッペッター・モルヴェル(2001年9月28日、2005年8月20日、2008年11月13日、2018年9月18日)らのパフォーマンス映像を見せる会場もあった。オールセットらノルウェー勢は本来この催しに出ることになってたが、この新型コロナ禍においては訪日が難しいので、映像提供となったよう。
 そういえば、今週頭にオスロ在住のピアニストである田中鮎美(2016年10月29日)にズーム取材をした。彼女はすでにピアニストとして入ったタイム・イズ・ア・ブラインド・ガイドの『Lucus』(2018年)とトーマス・ストレーネン/田中鮎美/マルテ・レア三者名画の『Bayou』(2021年)がECMからリリースされているが、この10月に晴れて田中鮎美トリオの『スベイクエアス・サイレンス』(彼女はそれに、−水響く− という邦題をつけた)が同社から発売される。田中鮎美トリオは『Memento』‎(AMP、2016年)というアルバムを出しているが、同じ顔ぶれで録った『スベイクエアス・サイレンス−水響く− 』は実は自分たちで録音を済ませており、別のレーベルから出そうとしていたのだという。だが、マンフレート・アイヒャーが同作を気に入り、見事ECMからの発売となったそう。曲順と一部の曲の尺はアイヒャーが変えたそうだが、録音(場所も)には一切していない。それ、アイヒャー制作のクレジットがあるECM作としてはレアなケースとなるのではないか。ピアニストのマイケル・ケイン(2003年11月18日、同23日)唯一のECM作『Circa』(1997年)も録音の場にアイヒャーがいなかったアルバムだったが(渡ノルウェー直前に骨折入院してしまい、アイヒャー抜きでレインボウ・スタジオで録音された)、その事実が内容に関係していると、ケインはかつて言っていたことがあった。すごい円満な印象を与える田中鮎美のインタヴューは、ミュージック・マガジンの11月号に掲載。ECMが作った彼女のEPK→https://www.youtube.com/watch?v=6u7YjeIDcJY

▶過去の、本田珠也
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2000-5.htm
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2002-9.htm 菊地雅章
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2003-6.htm 菊地雅章
http://43142.diarynote.jp/200410162306570000/
http://43142.diarynote.jp/200712151621260000/
http://43142.diarynote.jp/201105101010399933/
http://43142.diarynote.jp/201207180824136323/
http://43142.diarynote.jp/201307291053021427/
http://43142.diarynote.jp/201505211022511238/
http://43142.diarynote.jp/201801200930278094/
https://43142.diarynote.jp/201804081516393408/
https://43142.diarynote.jp/201907180809371988/
https://43142.diarynote.jp/202104071750586426/
https://43142.diarynote.jp/202104151741019185/
▶︎過去の、ニルス・ぺッター・モルヴェル
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2001-9.htm 2001年9月28日
http://43142.diarynote.jp/200508230544440000/ 東京ジャズ
http://43142.diarynote.jp/200811141532429331/
https://43142.diarynote.jp/201809191422205248/
▶︎過去の、アイヴィン・オールセット
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2001-9.htm 2001年9月28日
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2003-6.htm 2003年6月28日
http://43142.diarynote.jp/200811141532429331/
http://43142.diarynote.jp/201009171511588216/
http://43142.diarynote.jp/?day=20170128
https://43142.diarynote.jp/201809191422205248/
▶︎過去の、田中鮎美/ナカマ
https://43142.diarynote.jp/201610311234024646/
▶︎過去の、マイケル・ケイン
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2003-11.htm ミシェル・ンデゲオチェロ

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