Shinya Fukumori presents 「nagalu Festival 2021」のデイ3。この日は、二つの“nagalu”所属アーティストが、入れ替えで出演した。

 まずは、ギターの藤本一馬 (2011年8月22日、2012年6月17日 、2013年4月19日、2019年7月6日、2019年12月18日、2021年11月26日)、ピアノの栗林すみれ、アルコ弾きする時間も短かくないダブル・ベースの西嶋徹(2012年11月21日、2017年6月27日、2018年12月10日、2019年12月18日)、ドラムの福盛進也 (2018年1月7日、2018年4月7日、2019年1月5日、2019年6月14日、2019年12月18日、2021年11月25日、2021年11月26日)からなる4ピースのグループであるレムボート。“nagalu”のなかでは一番常識的な編成を取っているカルテットだが、カルテットではなくグループと書きたくなるのはやはり旧来のジャズからの脱指針を抱えているからだろうな。実際、12月20日発売なものの今日先行販売されていたデビュー作『星を漕ぐもの』より、この日の実演は4人で曲にある情景を見据えて寄り添い、一つの像を結ばせるという感覚が明解に出されていたように思う。リーダーはなし、曲も皆で出し合っていて、4人対等という触れ込みなり。

 藤本の流動的な爪弾き(このグループではエレクトリック・ギターを中心に弾く)も効いていて、もし他者に明解に説明するなら、曲によってはパット・メセニー(1999年12月15日、2002年9月19日、2010年6月12日、2012年1月25日、2012年3月3日、2013年5月21日、2015年9月27日、2019年1月7日、2019年1月11日、2019年1月16日)的なストーリー/情景的提示のスタンスを取るとしたくなるか。そうしたしなやかさや広がりを、より静謐に、アコースティックに、簡潔に(ソロはあるものの、どの曲も5分ぐらいの尺に抑えられていたのではないか)、4人は送り出す。響きと間にも、留意して……。一昨日、昨日とソロを取らなかった福盛もここでは曲の始まりにさざ波のようなソロを取る。キック・ドラムは本当に控えめに。しかし、大昔には彼がヴィニー・カリウタ(2009年2月6日、2014年9月7日)に憧れていたなんて嘘みたい。当時の福盛進也が、今の彼の演奏を見たらびっくり仰天するんじゃないだろうか。経験や変化は美徳以外の何ものでもない。

 このショウでより簡潔に披露されたのは、西嶋と藤本の曲が多かったのか。1曲、栗林がブリリアントなソロを録る曲があって、その際に藤本はちらちら栗林の方向き、うれしそうに微笑んでいた。なんかブループ構成員内の力学のあり方が透けるようでもあり、ヴィジョンを共有しあえる仲間が手を差し伸べ合う集団表現っていいナとも思わせられた。

▶︎過去の、藤本一馬
https://43142.diarynote.jp/201109100857091783/
https://43142.diarynote.jp/201206210942136482/
https://43142.diarynote.jp/201304211111189539/
https://43142.diarynote.jp/201907071754237718/
https://43142.diarynote.jp/201912191314476679/
https://43142.diarynote.jp/202008290914077509/
https://43142.diarynote.jp/202111270737509911/
▶︎過去の、西嶋徹
http://43142.diarynote.jp/?day=20121121
https://43142.diarynote.jp/201706281510173316/
https://43142.diarynote.jp/201812111218404525/
https://43142.diarynote.jp/201912191314476679/
▶︎過去の、福盛 進也
http://43142.diarynote.jp/201801081118162617/
https://43142.diarynote.jp/201804081516393408/
https://43142.diarynote.jp/201804081516393408/
https://43142.diarynote.jp/201906151238565701/
https://43142.diarynote.jp/201912191314476679/
https://43142.diarynote.jp/202111261008298329/
https://43142.diarynote.jp/202111270737509911/
▶過去の、パット・メセニー
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/december1999live.htm
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2002-9.htm
http://43142.diarynote.jp/201006181520054406/
http://43142.diarynote.jp/201201271245417497/
http://43142.diarynote.jp/201203062005542291/
http://43142.diarynote.jp/201305260927026044/
http://43142.diarynote.jp/201510021129591335/
https://43142.diarynote.jp/201901090933013218/
https://43142.diarynote.jp/201901121341307532/
https://43142.diarynote.jp/201901180819479701/
▶過去の、ヴィニー・カリウタ
http://43142.diarynote.jp/?day=20090206
http://43142.diarynote.jp/201409100930206205/

 そして、Shinya Fukumori presents 「nagalu Festival 2021」の最後を飾るのは、“nagalu”主宰者である福盛進也をリーダーに置く出し物だ。“nagalu”第一弾となる彼の『Another Story』のコア・メンバーにより、ヴォーカルも用いた独自世界を提示しようする。

 ドラム/作曲の福盛進也、ピアノの佐藤浩一 (2014年10月22日、2016年7月11日、2017年10月27日、2018年1月7日、2018年4月7日、2018年6月4日、2019年1月5日、2019年10月30日、2020年8月16日、2021年7月30日、2021年11月6日、2021年11月25日)、ギターの藤本一馬 、ダブル・ベースの西嶋徹、アルト・サックスの蒼波花音 (ぼくからは一番離れていた位置に立っていた彼女、アルトより大きい楽器を持っているようにも見えた。彼女の従来のサックス流儀に沿わない合いの手音は効いていたりもし、ある曲の出だしで取ったソロにぼくはヤン・ガルバレク〜2002年2月13日、2004年2月25日〜を想起した)、ヴォーカルとギターの青柳拓次(2007年1月27日、2011年5月22日、2017年9月8日、2018年6月2日)という面々がステージに上がる。

 『Another Story』はヴォーカル入り曲もうまく配置したアルバムだったが、ショウの前半は比較的ヴォーカルを入れた行き方を取る。アルバムに入っていない遠藤賢司の「カレーライス」も研ぎ澄まされた感覚で届けたか。青柳の超然とした味にも頷くな。福盛はアイデアを貯めていて、『Another Story』を三部作まで続けたいと考えている。また、その終盤にはやはり第一作に参加し個を出していたSalyu(2011年8月7日、2013年8月11日、2019年10月27日)も加わり、わりとインプロヴィゼイショナルな、歌詞なしの歌を悠々披露する。彼女と青柳が気ままに掛け合いを見せる部分もあった。

 その後は、青柳も一時は引っ込み、インストでことを進めるが、歌ものにせよ、演奏ものにせよ、それらの聞き味はマジ個性的。他に比類するものがないなと、ため息をつく。ジャズの新しい表情を獲得しようとするそうした行き方はこのフェスの他の出演者にも貫かれていることだが、とくにこの最終のショウの音楽の手触りは唯一。日本人としての侘び寂び、幽玄の感覚を通過した、余韻と情緒に富む現代ジャズ・ビヨンド表現と言うしかないし、これは世界に発信できる鋭敏な日本の音楽であると感じる。福盛は高校時代からアメリカに留学し、その後ドイツに住んでいたという歩みを持つが、ちゃんと外を知っているからこそ、この不思議でもある回路は出てきたものであるのは疑いがない。そして、そういう独自志向に添う共演者たちも有能だ。

 それから、ヴォーカル・ナンバーを聞きながら思ったのは、このユニットで飛躍を求めるヴォーカリストのレコーディングをサポートするというのはどうか。もう一歩先にある大人の歌世界を求めようとする自覚的なシンガーを、しっとり個性的に彼らが受け止め、その伸張を成就させる。かなりアリと思うけどなあ。かつてはキャラメル・ママだったら、この時代は福盛『Another Story』バンド、な〜んて。オレンジ・ペコーをやっている藤本は当然として、佐藤にせよ、林正樹にせよ、そのコア・メンバーたちはヴォーカル物にも近い立ち位置を持っている。

▶︎過去の、佐藤浩一
http://43142.diarynote.jp/201410251055118180/
http://43142.diarynote.jp/201607121045394372/
http://43142.diarynote.jp/201711020707155260/
http://43142.diarynote.jp/201801081118162617/
https://43142.diarynote.jp/201804081516393408/
https://43142.diarynote.jp/201806060708363548/
https://43142.diarynote.jp/201910311450514339/
https://43142.diarynote.jp/202008171907569224/
https://43142.diarynote.jp/202107310742529881/
https://43142.diarynote.jp/202111071551287545/
https://43142.diarynote.jp/202111261008298329/
▶︎過去の、青柳拓次
http://43142.diarynote.jp/200702010112550000/
http://43142.diarynote.jp/201105230926029205/
https://43142.diarynote.jp/201709110843278416/
https://43142.diarynote.jp/201806051311346158/
▶︎過去の、Salyu
https://43142.diarynote.jp/201108101635051749/
https://43142.diarynote.jp/201308130851402454/
https://43142.diarynote.jp/201910291047462413/
▶過去の、ヤン・ガルバレク 
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2002-2.htm
http://43142.diarynote.jp/200402251031510000/

<今日の、東京都の施設>
 朝起きて、空気が乾いていると感じる。そろそろ、加湿器を出さねばいけないな。15時、ライヴに行くために外に出ると、おお空気が冷たい。風もないのに。気温はまだ10度欠けぐらいでしょう。あー、真冬が思いやられる。厚手のコート類も出さなくてはいけないぞ。あ“〜面倒くせえ。地下鉄の有楽町駅から東京国際フォーラムの地下を通って会場に行く際、ホールAでキング・クリムゾン公演があることを知る。おじいちゃん、来日しているのか。そういえば、誰かがチケット代べらぼうに高いと言っていたか。
 最初のショウと次のショウの間17時ぐらいに、ちょい本屋を覗きたくなり、フォーラムの間のスペースを通ろうとすると、そこにはものすごい人、人、人。よく観察するとずっと奥のフォーラムのなかから帯状な感じで人の波が出てきていて外をぐるりと回った末にまたフォーラム内に戻るように続いている。人々はそれなりに上の年齢層で男性が多い。もしやと思い、一人のおじさんにこれは何の列ですかと尋ねると、穏やかに「キング・クルムゾンです」。え〜、なんで寒いなかこんなに不都合な入場形態を取っているんだろう。開場が遅れ、入り口に人がたまらないための対策? このおり、胸を焦がした天下の大御所バンドの実演に触れられるということだけで皆ルンルンなのかもしれないが、理不尽な行動を強いられているのにあまり大群にやさぐれた情緒なし。今、高年齢のほうがキレやすいと言われていたりもするが、そういう人はいなかったのか。長時間だろう実演を、みんな着席せずに受けたのかなー。
 ところで、“ngalu”フェス、各ショウともに複数のカメラで撮影されていた。

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