赤坂・サントリーホール、ソロ公演。上原ひろみ(2004年11月25日、2005年7月31日、2006年9月3日、2009年9月4日、2010年12月3日、2011年9月3日、2011年9月9日、2011年12月11日、2012年7月25日、2012年12月9日、2014年9月6日、2014年9月7日、2016年9月4日、2016年9月15日、2016年11月16日、2017年5月7日、2017年9月28日)の2019年新作『SPRCTRUM』(テラーク)はピアノ・ソロ作で、ショウはもちろんそれに準ずる。2部制にてもたれ(休憩のとき、調律師が実に長々とチューニング作業をしていたなー)、彼女はアンコール登場時にも衣服をかえて出てきたので、3度お召し返したことになる。いずれもスニーカーに足の踝が出る短めのタイトなパンツにどばっと羽織るような上着という出で立ちで、それは“元気印”と言いたくなるもの。アルバム・デビューして15年強たつが、ほとんどイメージが変化していないことに気づいた。
左手がよく動くなあ〜左右のバランスがすごいぞと思わせる1曲めの「カレイドスコープ」、様々なブルース・コードに基づくジャズ奏法の流れを私流に俯瞰するような2曲目の「イエロー・ウーリッツァー・ブルース」と、ほぼほぼ新作収録曲が演奏される。もちろん、アルバムで聞かれるヴァージョンとは気分で変えられ、尺は少し長めだ。彼女はずっとソロによるライヴ公演を続けてきており、今後も続くが、それこそはフレッシュな姿を見せ続けられる所以だろう。もとい、それがジャズというものですね。「カレイドスコープ」と3曲めの「ホワイトアウト」を始める際は、5〜10秒ほどピアノに黙祷すかのようにフリーズし、降りてくるのを持つという沈黙を経てから、彼女は指を這わせた。
完全生音による公演。そのことではっきりと出るのが、彼女はけっこう弾きながら声を出すということ。また、右足のストンプ音がくっきりと聞こえ、それも存在感大。そのことから、彼女ってあまりペダルを使わないピアニストであることにも気づかされる。ときに右足をあげたり、腰を浮かせたり。そういうやんちゃな自然発生的な所作とともに、彼女はピアノを弾くことにすべてを捧げた人間であり、またピアノに選ばれた女性であることをこれでもかと示す。
ザ・ビートルズの「ブラックバード」のカヴァーもやったが、それもアルバム収録曲。「ブラックバード」はなんといってものブラッド・メルドー(2002年3月19日、2003年2月15日、2005年2月20日、2015年3月13日、2019年5月31日、2019年6月3日)の十八番曲とも言えるものだが、それでも弾きたかったらやってしまうのが、上原たるところ。もちろん、ワタシの「ブラックバード」になる自信があるからやったのだろう。確かにメルドーとは異なる、ザ・ビートルズの曲をここでも演奏。少し誇張して書けば、メルドーのほうがジャズ的機微をちりばめつつ原曲の曲趣を立てているところがあるのに対し、この晩の彼女の演奏はもっとわがままに自分の得意技とともに自分を出すということをしていた。そういえば、新作収録曲の「セピア・アフェクト」はどこかザ・ビートルズの「ディア・プルーデンス」のメロディが入るとはまりそうな左手の反復が用いられる。
なにも遮るものがないなかで自在に繰り出されるピアノ音に、これが上原ひろみなのだよなあという思うが湧き上がる。彼女の指さばきは、どこかジャズをジャズたらしめる大切な何かから外れる部分がある。あれ、そこでこれをもってきちゃのうのと、ぼくはずっこけちゃうところがある。別な言い方をすれば長い歴史で培われてきたジャズ純度をさげることも、彼女は自分たらんとして出してしまう。それは、ソロだとよりストレートに露わになる部分がありますね。定石外しと書くとちょい違うかもしれないが、それこそは上原たる個性。やはり、彼女の演奏はジャズとして見るより、”ヒロミズ・ミュージック”として聞くべき物であるとも、ぼくはこの晩のソロ演奏に触れながら再認識した。
アルバムとこの晩の演奏を比較するなら、どちらが感興が大きかったかといえば、ぼくはアルバムのほう。それは演奏の質ではなく、ピアノの音質の部分に負うところが大きい。あまりに鮮やかなピアノ音を収めていた『SPRCTRUM』は大きな音で聞くと、まさにキラキラしたピアノ音のシャワーを浴びるような、えも言われぬ体感があったもの。その点にこだわれば、この日の生音ライヴのピアノ音はもちろん自然ながら、さすがに押し出しは弱かった。この大きさの会場には、ノーPAのピアノ単体演奏には少し大きすぎるかとも感じる。音の部分において、新作は本当にすごいとも再確認した。
▶過去の、上原ひろみ
http://43142.diarynote.jp/200411292356580000/
http://43142.diarynote.jp/?day=20050731
http://43142.diarynote.jp/200609070211000000/
http://43142.diarynote.jp/200909120647256771/
http://43142.diarynote.jp/?day=20101203
http://43142.diarynote.jp/201109121452527893/
http://43142.diarynote.jp/201109151818437240/
http://43142.diarynote.jp/201112191449196187/
http://43142.diarynote.jp/201207310933428147/
http://43142.diarynote.jp/201212140959573710/
http://43142.diarynote.jp/201409100929108025/
http://43142.diarynote.jp/201409100930206205/
http://43142.diarynote.jp/201609201052518160/
http://43142.diarynote.jp/?day=20160915
http://43142.diarynote.jp/201611171021419374/
http://43142.diarynote.jp/201709291218574592/
▶過去の、ブラッド・メルドー
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2002-3.htm
http://www.myagent.ne.jp/%7Enewswave/live-2003-2.htm
http://43142.diarynote.jp/200502232041270000/
http://43142.diarynote.jp/?day=20150313 メリアナ
https://43142.diarynote.jp/201906050929394234/
https://43142.diarynote.jp/201906050931369228/
<今日の、帰りしな>
帰路、ANAホテルの2階横を通って駅に向かう。おれ、2年前の夏に、ここに泊まったことがあった。プールに入ったよな。一泊なのに、東京タワーがきっちり見えるいい部屋をあてがってくれて、ぼくの中ではいいホテルだな。入り口に待機しているタクシー車両は、どの会社もトヨタのジャパン・タクシー。確かに普通の車両よりジャパン・タクシーに乗ったほうが開放感があってぼくは好きだが、それしかここには乗り入れてはいけないとかいう取り決めがあるのか? その先のホテルのカフェはビュッフェをやっているのが外からでも分かったが、ラーメンという赤提灯を出しているコーナーあり。その後の、溜池山王駅。トイレに入ったら、個室での飲食はご遠慮くださいとの張り紙あり。え〜、トイレで食事をするのなんて絶対やだよー。ところで、サントリーホールに上原が出るには10年ぶりだそうで、それについての光栄をMCで語っていたが、一回アンコールに応えた以外は、場内が明るくなってから拍手が止まなくても、一切出てこなかった。クラシック箱という会場の属性に忖度しない〜クラシックの公演は観客が卑しいのか、のべつまくなしの拍手攻撃で公演後も出演者に何度も出て来させる。その不毛さたるや〜、上原のきっぱりした態度に拍手。
左手がよく動くなあ〜左右のバランスがすごいぞと思わせる1曲めの「カレイドスコープ」、様々なブルース・コードに基づくジャズ奏法の流れを私流に俯瞰するような2曲目の「イエロー・ウーリッツァー・ブルース」と、ほぼほぼ新作収録曲が演奏される。もちろん、アルバムで聞かれるヴァージョンとは気分で変えられ、尺は少し長めだ。彼女はずっとソロによるライヴ公演を続けてきており、今後も続くが、それこそはフレッシュな姿を見せ続けられる所以だろう。もとい、それがジャズというものですね。「カレイドスコープ」と3曲めの「ホワイトアウト」を始める際は、5〜10秒ほどピアノに黙祷すかのようにフリーズし、降りてくるのを持つという沈黙を経てから、彼女は指を這わせた。
完全生音による公演。そのことではっきりと出るのが、彼女はけっこう弾きながら声を出すということ。また、右足のストンプ音がくっきりと聞こえ、それも存在感大。そのことから、彼女ってあまりペダルを使わないピアニストであることにも気づかされる。ときに右足をあげたり、腰を浮かせたり。そういうやんちゃな自然発生的な所作とともに、彼女はピアノを弾くことにすべてを捧げた人間であり、またピアノに選ばれた女性であることをこれでもかと示す。
ザ・ビートルズの「ブラックバード」のカヴァーもやったが、それもアルバム収録曲。「ブラックバード」はなんといってものブラッド・メルドー(2002年3月19日、2003年2月15日、2005年2月20日、2015年3月13日、2019年5月31日、2019年6月3日)の十八番曲とも言えるものだが、それでも弾きたかったらやってしまうのが、上原たるところ。もちろん、ワタシの「ブラックバード」になる自信があるからやったのだろう。確かにメルドーとは異なる、ザ・ビートルズの曲をここでも演奏。少し誇張して書けば、メルドーのほうがジャズ的機微をちりばめつつ原曲の曲趣を立てているところがあるのに対し、この晩の彼女の演奏はもっとわがままに自分の得意技とともに自分を出すということをしていた。そういえば、新作収録曲の「セピア・アフェクト」はどこかザ・ビートルズの「ディア・プルーデンス」のメロディが入るとはまりそうな左手の反復が用いられる。
なにも遮るものがないなかで自在に繰り出されるピアノ音に、これが上原ひろみなのだよなあという思うが湧き上がる。彼女の指さばきは、どこかジャズをジャズたらしめる大切な何かから外れる部分がある。あれ、そこでこれをもってきちゃのうのと、ぼくはずっこけちゃうところがある。別な言い方をすれば長い歴史で培われてきたジャズ純度をさげることも、彼女は自分たらんとして出してしまう。それは、ソロだとよりストレートに露わになる部分がありますね。定石外しと書くとちょい違うかもしれないが、それこそは上原たる個性。やはり、彼女の演奏はジャズとして見るより、”ヒロミズ・ミュージック”として聞くべき物であるとも、ぼくはこの晩のソロ演奏に触れながら再認識した。
アルバムとこの晩の演奏を比較するなら、どちらが感興が大きかったかといえば、ぼくはアルバムのほう。それは演奏の質ではなく、ピアノの音質の部分に負うところが大きい。あまりに鮮やかなピアノ音を収めていた『SPRCTRUM』は大きな音で聞くと、まさにキラキラしたピアノ音のシャワーを浴びるような、えも言われぬ体感があったもの。その点にこだわれば、この日の生音ライヴのピアノ音はもちろん自然ながら、さすがに押し出しは弱かった。この大きさの会場には、ノーPAのピアノ単体演奏には少し大きすぎるかとも感じる。音の部分において、新作は本当にすごいとも再確認した。
▶過去の、上原ひろみ
http://43142.diarynote.jp/200411292356580000/
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▶過去の、ブラッド・メルドー
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2002-3.htm
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<今日の、帰りしな>
帰路、ANAホテルの2階横を通って駅に向かう。おれ、2年前の夏に、ここに泊まったことがあった。プールに入ったよな。一泊なのに、東京タワーがきっちり見えるいい部屋をあてがってくれて、ぼくの中ではいいホテルだな。入り口に待機しているタクシー車両は、どの会社もトヨタのジャパン・タクシー。確かに普通の車両よりジャパン・タクシーに乗ったほうが開放感があってぼくは好きだが、それしかここには乗り入れてはいけないとかいう取り決めがあるのか? その先のホテルのカフェはビュッフェをやっているのが外からでも分かったが、ラーメンという赤提灯を出しているコーナーあり。その後の、溜池山王駅。トイレに入ったら、個室での飲食はご遠慮くださいとの張り紙あり。え〜、トイレで食事をするのなんて絶対やだよー。ところで、サントリーホールに上原が出るには10年ぶりだそうで、それについての光栄をMCで語っていたが、一回アンコールに応えた以外は、場内が明るくなってから拍手が止まなくても、一切出てこなかった。クラシック箱という会場の属性に忖度しない〜クラシックの公演は観客が卑しいのか、のべつまくなしの拍手攻撃で公演後も出演者に何度も出て来させる。その不毛さたるや〜、上原のきっぱりした態度に拍手。
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