市ヶ谷・日本シネアーツ社試写室で、リサ・バロス・ディーサとグレン・レイバーンが監督する、2013年英国/アイルランド映画「グッド・ヴァイブレーションズ」を見る。1970年代の、北アイルランドのベルファストを舞台とする映画だ。もちろん、背景には当時吹き荒れていた過激な宗教的、政治的軋轢があり、それはやはり意味を持たせられる。

 ベルファストで「グッド・ヴァイブレーションズ」というレコード店を営んだ人物(テリー・フーリー。1948年〜)の実話をもとにする、もろな音楽映画だ。70年代中期に結婚をきにレコード店を始めた主人公はザ・ビーチ・ボーイズ(2014年3月28日)の曲タイトルを店名に掲げ、シャングリラズやハンク・ウィリアムズなど、アメリカ白人好みの音楽が好きな人のよう(あと、レゲエもお店でかけていた)。だが、レコード屋に来た若者の一言から、彼は地元のパンク・バンドであるルーディのショウに出向き、その率直な物言いと勢いを抱えたパンク・ロックに開眼。以後、レコード店を続けながら、気に入ったパンク・バンドのシングルを少ないながら作るようにもなった。うち、ザ・アンダートーンズはジョン・ピールが気に入ったこともありサイアーとの契約を取り付け、彼は一躍ベルファストのパンク・ロックのゴッドファーザーとして注目を受ける……。

 ロンドンでもダブリンでも、マンチェスターでもグラスゴーでもなく、ベルファスト。もう少しその特殊な地の位置をわかりやすく出して欲しかったという気もしなくはないが、ロック/パンクにまつわるもやもやと素敵を映画は抱える。あと、編集とかが英国的であると感じた。まあ、ベルファストはアイルランドではなくUKに属するわけだが。英語はあんまし訛っている感じがしなかったが、そんなものか。

 グッド・ヴァイブレーションズは1983年まで続けられ、その後何度も再開店/再閉店を繰り替えし、フーリーはいまも存命であるようだ。

▶︎過去の、マイク・ラヴ/ザ・ビーチ・ボーイズ 
http://43142.diarynote.jp/201403291149242320/

 一息つき、丸の内・コットンクラブに。今、東京駅の丸の内口の外って、なかなかいい感じのオープン・スペースが設けられているのだな。それには、観光客もニッコリだろう。出演者は1982年に米国人両親のもとパリで生まれた、ニュー・イングランド音楽院卒である在NYのピアニストのトリオ。うれしいっ、ダン・テファーのこと一度見たかったんだよなー。

 あの魔境の白人リード奏者のリー・コニッツ(2013年9月7日、2017年9月3日)に気に入られて彼とのデュオ作を複数だし、一方ではレニー・トリスターノ流れ楽理を収めているヴェテラン女性歌手のジュディー・ニーマックやニーボディのベン・ウェンデル(2013年8月22日、2015年4月16日、2017年1月23日)との双頭作もリリース。またソロ演奏作ではゴルドベルグ変奏曲にのぞんだり、いっぽうヤマハのエンドーサーある彼は同社の自動演奏装置を介するピアノ演奏アルバム(生演奏と相乗する同軌音が重なる)を2019年新作として発表したりし、なんとも活動がとっちらかっていて面白すぎる。そして、今回はトリオによる公演となったわけだが、やはりその編成が彼の個性を大いに照らしているところはあるのかな。

 ベースのホルヘ・ローデル (2011年7月20日、2016年6月11日、2017年2月1日、2017年9月3日、2017年9月6日、2018年12月11日。彼を何度も同行させているジュリアン・ラージはローデルと呼ぶが、テファーはローダーと英語読みでMC紹介していた)とドラムのネイト・ウッド(2013年8月22日、2015年9月30日、2016年10月29日)というリズム・セクションを伴う。2年前のトリオ最新作のベーシストは今週日本に来るトーマス・モーガン(2012年6月24日、25日、2013年9月7日、2017年3月2日、2017年6月19日、2019年5月17日 )とウッドのコンビで録っていたが、ローデルもすでに彼の2008年作に参加していたりもし、勝手知ったる仲間という感じだろう。

 そして、演奏が始まるやいなや、おおコレはと息を飲む。もう、曲作り/構成が凝っており、すぐに引っ張られる。その”濃さ”は、アルバム以上。ベース・ラインにせよ、変幻自在に奏法を変えていくドラムにせよ、よくもまあデファーの考える複雑きわまりない曲/構造(拍子もブっとび)についていくなあと感心。もう、その流動性をたんまり持つ楽曲の構築性にまず興味が向けざるをえない。もちろん、モンク愛好などから来る癖のある指さばきも立派なものだが、まずはトリオがインタープレイし合いながら大胆な構造を作るようなその総体に唸ってしまう。まさに、これはプログ(レッシヴ)・ジャズと言うしかない。いやあ、現代ジャズいろいろあります、テファーさんアンダーレイテッドすぎます。ガーシュインの「アイ・ラヴズ・ユー、ポーギー」のカヴァーも、ゆらゆら揺れていたなー。

▶︎過去の、リー・コニッツ
http://43142.diarynote.jp/?day=20130907
https://43142.diarynote.jp/201709101639096076/
▶過去の、ベン・ウェンデル
http://43142.diarynote.jp/201308251333326263/
http://43142.diarynote.jp/?day=20150416
https://43142.diarynote.jp/201701240949045953/
▶︎過去の、ホルヘ・ローデル
http://43142.diarynote.jp/201107230819362417/
http://43142.diarynote.jp/201606121230202174/
http://43142.diarynote.jp/201709101639096076/
https://43142.diarynote.jp/201709110842026988/
https://43142.diarynote.jp/201812121252088734/
▶︎過去の、ネイト・ウッド
http://43142.diarynote.jp/201308251333326263/
http://43142.diarynote.jp/201510021221454336/
http://43142.diarynote.jp/201610311234024646/
▶︎過去の、トーマス・モーガン
http://43142.diarynote.jp/201207031323242844/ 菊地雅章
http://43142.diarynote.jp/201210271744294415/ 菊地雅章
http://43142.diarynote.jp/?day=20130907 リー・コニッツ
https://43142.diarynote.jp/201703081443314613/
https://43142.diarynote.jp/?day=20170619
https://43142.diarynote.jp/?day=20190517

 次は、六本木・ビルボードライブ東京で、ソウル・シンガーのメリッサ・モーガンを見る。メルバ・ムーアやフレディ・ジャクソン、ボウ・ウィリアムズなどを送り出していたハッシュ・プロダクション〜それこそ、ブラコン(ブラック・コンテンポラリー)期を彩る、当時はキャピトルが配給した都会派ソウルのプロダクション/レーベルでしたね〜1986年に送り出した歌姫。そこからのデビュー時のリード・シングルはプリンス(2002年11月19日)の「ドゥ・ミー・ベイビー」で、R&Bチャート1位となった。

 キーボードと指揮のディヴァーヌ・ウィリアムズ(そんなに大編成のバンドじゃないのに、その存在はわりかし謎。彼のみ客席に背を向け鍵盤をひき、ときにバンドに合図を送る。感じとしては、バンドの盛り上げ役と観客との繋ぎ役を担うカーク・フランクリン〜2009年9月18日、2017年2月2日〜みたい?)、キーボードとピアノのジョーダン・ウィリアムズ、ギターのアンソニー・グッドウィン、ベースのヘゼキーヤ・ベシア・Jr.、ドラムのチェイス・ハーパー、日本語がペラペラっぽい(日本育ちだったことがあるんじゃないかと思わせる)テナー・サックスのアイザイア・リチャードソン・Jr.、バックグラウンド・ヴォーカルのラターシャ・マックリムモンとピーター・ケインズ という編成にてのパフォーマンス。彼女は昨年13 年ぶりとなるアルバム(『Love Demands』Goldenlane )を昨年リリースしたが、それを期に組んだバンドかどうかは知らないが、まとまっていた。それなりに、面々の年齢は若そうであったかな。

 そんな面々はプリセット音に頼らずしっかり人力サウンドを出し、朗々と歌い上げるモーガンを支える。とくにドラマーはこれが歌モノのサポート演奏なのと思わずにはいられないなんとも力づく100%(でも、テクはしっかりしている)の叩きっぷりに終始していてびっくり。そんな彼の演奏に現れているように、往年のハッシュ時代のメロウネスとはまったく無縁の竹を割ったような実演であったと間違いなく言える。
 
 そして、そんな指針が可能であったのは、モーガンの力強い喉があったためとも指摘できる。少しキンキンいう質感を持ちつつ、歌い飛ばしていく様は痛快。やっぱし、歌える人であったんだよなあと頷き、高揚しちゃいますね。終盤は場内を回って歌ったが、人当たりの良さもたっぷり。90分ほどパフォーマンスした。

▶過去の、プリンス
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2002-11.htm
▶過去の、カーク・フランクリン
http://43142.diarynote.jp/200909251530436151/
https://43142.diarynote.jp/201702081152242280/

<今日の、中継>
 前日夜の用事が入っておらず、また早朝からいろいろ立て込んでいることもあり、めずらしく10時にはベッドに横になる。すると、1時半ごろに目が覚めてしまう。サッカーのアンダー20世界大会のトーナメントの第1戦となる日韓戦がこの時間にやっており<Jスポーツ>で放映されるという情報は掴んでいたので、ならばとTVをつけるとその“チャンネル3”で試合を放映していた。家では光ファイヴァーのチャンネルのみを見ることができ、結線していない地上波と衛星放送は視聴不可能なので、家ではサッカーの代表選はまず見ることができないのだが、これはラッキー。前半を終えて、0-0。そのまま終了まで見るつもりだったが、後半開始前に寝ちゃう。0-1で負けたんだな。コットンクラブのあと時間調整でバーに入ったら、今度は日本代表の愛知県での親善試合をデカいモニターで放映していて、すこしだけ見入る。こちらも、0-0。
 ところで、この日はかなりな吉報あり。やりぃ。わーいわーい。だが、調子に乗るまいと、少し自戒。

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