アップリンク渋谷で、ラッカとコバニという、ISIS(イスラム国)に支配された中東シリアの都市をそれぞれ舞台におくドキュメンタリー映画を二つ見る。ともに、アップリンクの配給で、順に4月と5月に公開される。

 2017年米国映画「ラッカは静かに虐殺されている」の原題は、「City of Ghosts」。ラッカとは、ISISが首都であることを宣言したシリア北部の都市の名称。その物騒な邦題は、ISISの暴挙を告発しようとする市民組織“RBSS (Raqqa is Being Slaughtered Silently)からきている。ISISはお金をかけた映像マテリアルを用いたプロパガンダをしてきたことで知られるが、逆に虐げられる側がスマートフォンで撮影した映像をもとにISISがラッカでしていることを草の根的に告発せんとするシリア人たちの活動(そのサイトは、http://www.raqqa-sl.com/en/)を追ったものだ。

 ISISに不都合なことをするRBSSのメンバーや関係者は殺害されたりもし、設立メンバーたちは国外に逃れることを余儀なくされ、現地の地下メンバーたちと連携し活動を維持していく姿もいろいろ描かれる。監督は1983年生まれ、NY在住のマシュー・ハイネマン。そして、なんと総指揮はジャニス・ジョプリンやJBのドキュメンタリー映画に関与してきているアレックス・ギブニー(2016年6月20日、2016年6月26日)だ。自分の知らないところに大変な場所があるという事実はちゃんと伝わるこの映画、アマゾンもお金をだしている。

▶︎過去の、アレックス・ギブニー
http://43142.diarynote.jp/201606231719464677/
http://43142.diarynote.jp/201606281735457440/

 一方、2016年オランダ映画「ラジオ・コバニ」はトルコとの国境に近い街であるコバニを舞台とするもの。監督は1975年イラクのクルディスタン自治区の生まれで、1998年からオランダに居住しているラベー・ドスキー。コバニに住む人たちと同じクルド人の血を引く彼はコバニに別の撮影のために向かうタクシー車中で自主ラジオ放送の「おはようコバニ」を聞いて、その開始者にして話し手であったディバロン・キコに一発で魅了され、彼女(そのころ、二十歳ぐらいか)を追うことにしたのだという。映像は2014年から3年間にわたり撮影されたという。

 最初の空撮写真で、ラッカと比較にならないほどコバニの街が戦闘で破壊されている事実を知らされる。そして、頭のほうはISISとそれに対する連合軍の交戦/空爆シーンや、2015年1月になった解放後の生々しい瓦礫下の死体処理の模様が続き、戦争はあまりに愚であることを思い知らされる。

 映画はディバロン・キコのモノローグなども使われ、彼女の存在を中央に置くとも言えるのだが、そのフレッシュで前向きな姿や放送の様を介して、再生に向かうコバニの、そして市井の人々の姿を伝えようとする映画となっている。キコは今、ラジオ放送をやめ、教師をしているそうだ。

 その後は渋谷・クラブクアトロで、米国在住者3人と日本人ベーシストのファンク・セッションを見る。2本の映画で少し社会派になった自分が、即ぎゅわんと快楽派になっちゃった。

 登場したのは、ギターの山岸潤史(1999年8月5日、2000年12月7日、2001年7月16日、2004年3月30日、2005年7月30日、2005年7月31日、2007年2月3日、2007年2月4日、2007年2月5日、2008年9月11日、2009年5月19日、2009年7月27日、2010年8月4日、2011年5月17日、2012年9月8日、2013年6月13日、2014年7月29日、2015年1月29日、2016年1月15日)、ベースのKen Ken(2015年5月24日)、女性ドラマーのニッキ・グラスピー(2006年9月4日、2012年7月30日、2015年7月27日)、山岸とニューオーリンズでパパ・グロウズ・ファンクを一緒にやっていたキーボードと歌のジョン・グロウ(2004年3月30日、2007年2月5日、2009年7月27日)なり。渋谷・クラブクアトロ。

もともとパパ・グロウズ・ファンクは米国ではジャム・バンド・サーキットにのっていた集団でもあるのだが、1曲たっぷり15分はありそうな力づくファンクを、次々とかまして行く。そして、インスト主体ながら、要所では変化をつけるようにグロウはヴォーカルもとる。

 やはり、その中央には山岸がいて、彼が中心となりファンク・セッションは流れて行く。山岸のソロでは、マイルス、ヘンドリックス、モンゴ・サンタマリアらの曲クォーテイションが自在になされる。ああそう言えば、ある曲のイントロでは彼が大昔京都で参画したソー・バッド・レヴューのキラー・ファンク・インスト「ソウル地下鉄」のリフも延々弾いた。イエイッ! ツェッペリンの「グッド・タイムズ、バッド・タイムズ」は曲としてちゃんとやったか。面々は当然ザ・ミーターズの「アフリカ」(その曲をカヴァーしたパッパーズ〜2002年7月28日、2002年11月2日、2007年6月5日〜は「アフリカ」から「ハリウッド」とリフレインを代えたが、山岸たちは今回その部分「ニューオーリンズ」と歌った)、「ヘイ・ポッキー・ウェイ」から、録音はされたものの未発表になっているという曲までやる。グラスピーはニューオーリンズ属性は入っていないもののスネアなどそれに準ずるマナーを見せたりもする。ツェッペリンはセカンド・ラインに近いビート感覚を持つ曲があったりもし、1976年作『プレゼンス』では“ニュー・オーリンズ”をもじったタイトルの「ロイヤル・オーリンズ」というファンク曲もやっている。

 怒涛の、ファンク・パーティ。ステージと客席が一体となる様は、すげえ。この盛況を受け、パパ・グロウズ・ファンク+で再結成なんてことはならないか。

▶過去の、山岸潤史
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/augustlive.htm
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2000-12.htm
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2001-7.htm
http://43142.diarynote.jp/?day=20040330
http://43142.diarynote.jp/200508060616450000/
http://43142.diarynote.jp/200508060622480000/
http://43142.diarynote.jp/200702112125550000/
http://43142.diarynote.jp/200702121118370000/
http://43142.diarynote.jp/200702122331070000/
http://43142.diarynote.jp/200809160030188727/
http://43142.diarynote.jp/?day=20090519
http://43142.diarynote.jp/?day=20090727
http://43142.diarynote.jp/?day=20100804
http://43142.diarynote.jp/201105181052427410/
http://43142.diarynote.jp/?day=20120908
http://43142.diarynote.jp/201306171646424744/
http://43142.diarynote.jp/201408051721103640/
http://43142.diarynote.jp/201501301446383781/
http://43142.diarynote.jp/201601190806343491/
▶︎過去の、Ken Ken
http://43142.diarynote.jp/201505260835591800/
▶︎過去の、ニッキ・グラスピー
http://43142.diarynote.jp/200609070212050000/
http://43142.diarynote.jp/201208091321435870/
http://43142.diarynote.jp/201508050852067247/
▶過去の、ジョン“パパ”グロウ
http://43142.diarynote.jp/200403300522210000/
http://43142.diarynote.jp/200702122331070000/
http://43142.diarynote.jp/200908071452433928/
▶︎過去の、ザ・ファンキー・ミーターズ
http://43142.diarynote.jp/?day=20090725
http://43142.diarynote.jp/201401181209502731/
http://43142.diarynote.jp/201505111009314451/
▶︎過去の、レッド・ホット・チリ・ペッパーズ
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2002-7.htm フジ・ロック
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2002-11.htm
http://43142.diarynote.jp/200706061354020000/

<今日の、会場>
 ぎょぎょ。クアトロは本当に満員。えええ、彼らこんなに人気があったの? 驚きました。若い人も少なくない。隣にいた綺麗なおねえさんに、「誰が好きで見にきているの?」と思わず尋ねてしまう。そしたら、「Ken Kenなんですけど、今日はファンクを聞きたくてきました」と模範的なお答え。キミは素敵だ。そしたら、会場にはルクセンブルグ人ピアニストのミシェル・ライス(2016年4月12日、2016年7月21日、2016年11月4日)もいる。ちょうど、彼のジャパン・カルテット(2016年7月21日)のアルバムのマスタリングできていて、グラスピーはバークリー音大時代の友達なのだという。彼女がバークリーに行っていたとは知らなかった。
▶︎過去の、ミシェル・ライス
http://43142.diarynote.jp/201604271333586112/
http://43142.diarynote.jp/201607221000152412/
http://43142.diarynote.jp/201611101506534154/

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