映画「約束の地、メンフィス〜テイク・ミー・トゥ・ザ・リバー〜」
2017年7月13日 音楽 新宿・K’s cinemaで、2014年米国映画「約束の地、メンフィス〜テイク・ミー・トゥ・ザ・リバー」を見る。サザン・ソウルの場を扱うドキュメンタリー映画というと2013年米国映画「黄金のメロディ マッスル・ショールズ」(2014年6月26日)を思い出すが、双方の表題が示すように、今回見た映画はスタックスやハイ・サウンドが本拠に置いたテネシー州メンフィスを扱い、前見たものはアラバマ州のフローレンスやシェフィールドにスタジオを構えたフェイムやマッスル・ショールズをネタに置く。まあ、どちらも米国20世紀の代えのない音楽財産を伝えてくれるのは間違いない。
監督をしているマーティン・ショアーはブルース系が強いミュージシャン上がりの人物で、不動産業及びソーシャル・キャピトルという総合エンターテインメントを扱う会社で成功を収めた実業家だ。サンタモニカにオフィスを置くキャピタル・ソーシャル社は映画や音楽やニュー・メディア関連で急成長した会社として知られるそうな。
プロデューサーはそのショアーに加えて、ノース・ミシシッピー・オールスターズ(2004年9月19日)のコーディ・ディッキンソンとハイ〜ザ・ロイヤル・スタジオ所有者/プロデューサーのウィリー・ミッチェルの息子のローレンス・ブー・ミッチェルが務める。業界のやり手とメンフィスの音楽シーンの現場をよく知る者がタッグすることで、このメンフィス音楽讃歌映画は完成を見たとしていいだろう。ディッキンソン兄弟とミッチェルはレコーディングのシーンにも出てくるが、ディッキンソンの親のジム(2008年、メンフィス没)はよく知られるようにボブ・ディランやライ・クーダー他のレコーディングに関わるとともに、グリーン・オン・レッドやアレックス・チルトンやG・ラヴ(2000年1月25日、2004年11月17日、2005年5月25日、2005年6月2日、2006年10月23日、2008年10月9日、2011年11月4日、2014年10月13日)らのプロデューサーを務め、自己名義の好ルーツ・ロック作を何枚もリリースしている偉人だ。
また、終盤のスタジオの場面にはトーキング・ヘッズのジェリー・ハリソンもチラリと登場。エンド・ロールにも音楽作りに関する項目に彼の名前が出てきたはず。彼、近年ブルース・ロック畑のケニー・ウェイン・シェパードやジャム・バンドのザ・ストリング・チーズ・インシデント(2003年4月12日、2004年4月22日、2005年9月28日)の新作を手がていていたりもし、けっこう土臭い音楽に関わっている。
音楽制作現場にいる人間が舵取りをしたブツらしく、映画はメンフィスゆかりのビッグ・ネームや実力者やその他が絡む9つのスタジオ・セッションの模様が柱となる。古い人とスヌープ・ドッグ(格好いいな)らラッパーを組み合わせたりもし、またボビー・ラッシュ(1999年12月10日、2012年4月19日)やシカゴ・ブルースを支えたギタリストのヒューバード・サムリンなどブルース側にいる人物もフィーチャーされるのは制作者の趣味か。ぼくはブルース好きでもあるので、何ら問題はない。その演奏場面の多くはせえので撮られていて、それは往年のメンフィス録音流儀を思い出させて胸アツにさせるだろう。その出演者たちのやりとりや会話も随時流され、アーティストや楽曲やレーベルの歴史についての能書きはそれほど多くない。ま、ぼくはそれでなんら構いませんが。
そうしたなか、1968年4月にメンフィスで起きたキング牧師暗殺の影は小さくなく扱われる。あの事件後に白人と黒人が共存していたスタックスのリベラルな運営/制作に変化が出たのはこれまで指摘されてきた(アトランティックに捨てられた後、アル・ベルによる黒人主導のイケイケ体制がしかれ、白人がメンバーにいたザ・MGズの面々は徐々にスタックスから離れた)が、映画では才能ある黒人音楽家を増やしたくなかったからスタックスはつぶされた云々や、キング牧師が殺されなかったらスタックスは続いたというような言葉も、映画には出てくる。
ヒューバート・サムリン、ボビー・ブルー・ブランド、オフの場面でもいい味出していたギタリストのチャールズ・ピッツらは、撮影後に鬼籍入り。スタジオ場面には絶対的な味や技があるし、こういう映画(でなくてもいいのだが)はもっともっと作られるべきだろう。これを見て、過剰にメンフィスに行って見たいとは思わなかったが。かけがえのないソウルやブルースのかたちについてはいろいろ再認識せざるをえない。
メイヴィス・ステイプルズ、ブッカー・T・ジョーンズ(2008年11月24日、2009年7月25日、2010年2月8日 、2011年9月12日、2012年5月11日、2013年10月29日、2017年4月13日)、デイヴィッド・ポーター(!)、ウィリアム・ベル(2007年7月18日、2015年3月28日)、アル・ベルら、往年の人たちはみんないい感じ。好きな音楽をやっていると幸せな老後が待っている…。この映画を見ると、そう断じたくなる人がいるかもしれない。それから、ちょい進行役みたいな形で、俳優のテレンス・ハワード(TVドラマ「エンパイア」の主役のおっさん)も登場。とってもカッコをつけた彼は、1曲でギターを弾きながら歌う。
▶︎過去の、映画「黄金のメロディ マッスル・ショールズ」
http://43142.diarynote.jp/201406270933515875/
▶︎過去の、ノース・ミシシッピー・オールスターズ
http://43142.diarynote.jp/200410121003440000/
▶過去の、G・ラヴ
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2000-1.htm
http://43142.diarynote.jp/200411191620390000/
http://43142.diarynote.jp/?day=20050525
http://43142.diarynote.jp/200506021851060000/
http://43142.diarynote.jp/200610251744090000/
http://43142.diarynote.jp/200810111558573845/
http://43142.diarynote.jp/?day=20111104
http://43142.diarynote.jp/201410210816075554/
▶︎過去の、ザ・ストリング・チーズ・インシデント
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2003-4.htm
http://43142.diarynote.jp/?day=20040422
http://43142.diarynote.jp/200510030022330000/
▶︎過去の、ボビー・ラッシュ
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/december1999live.htm パーク・タワー・ブルース・フェス
http://43142.diarynote.jp/201204200904022166/
▶過去の、ブッカー・T・ジョーンズ
http://43142.diarynote.jp/?day=20090725
http://43142.diarynote.jp/200812110456078867/
http://43142.diarynote.jp/201002090914248826/
http://43142.diarynote.jp/201109151819433479/
http://43142.diarynote.jp/201310301217408539/
http://43142.diarynote.jp/201704161228187684/
▶過去の、ウィリアム・ベル
http://43142.diarynote.jp/200707232251010000/
http://43142.diarynote.jp/201503301741586544/
<今日の、もう一本>
映画館のお客は、見事に中年以上が多し。もう少し、若者がいてもいいがなあ。そして、そのあとは内幸町の試写室に回り、海外でも知名度の高い日本人監督の新作を見る。15日まではSMSなどに出すのはご遠慮くださいと言っていたので、詳しくは書かない。音楽を担当していたのは、鈴木慶一(2004年12月12日、2011年8月7日、2013年8月11日)。先に見たのが映画音楽だったからか、あまり音楽が目立たない映画、いや音楽効果をあまり用いない作品であると思った。
▶︎過去の、鈴木慶一
http://43142.diarynote.jp/200412212058580000/
http://43142.diarynote.jp/201108101635051749/
http://43142.diarynote.jp/201308130851402454/
監督をしているマーティン・ショアーはブルース系が強いミュージシャン上がりの人物で、不動産業及びソーシャル・キャピトルという総合エンターテインメントを扱う会社で成功を収めた実業家だ。サンタモニカにオフィスを置くキャピタル・ソーシャル社は映画や音楽やニュー・メディア関連で急成長した会社として知られるそうな。
プロデューサーはそのショアーに加えて、ノース・ミシシッピー・オールスターズ(2004年9月19日)のコーディ・ディッキンソンとハイ〜ザ・ロイヤル・スタジオ所有者/プロデューサーのウィリー・ミッチェルの息子のローレンス・ブー・ミッチェルが務める。業界のやり手とメンフィスの音楽シーンの現場をよく知る者がタッグすることで、このメンフィス音楽讃歌映画は完成を見たとしていいだろう。ディッキンソン兄弟とミッチェルはレコーディングのシーンにも出てくるが、ディッキンソンの親のジム(2008年、メンフィス没)はよく知られるようにボブ・ディランやライ・クーダー他のレコーディングに関わるとともに、グリーン・オン・レッドやアレックス・チルトンやG・ラヴ(2000年1月25日、2004年11月17日、2005年5月25日、2005年6月2日、2006年10月23日、2008年10月9日、2011年11月4日、2014年10月13日)らのプロデューサーを務め、自己名義の好ルーツ・ロック作を何枚もリリースしている偉人だ。
また、終盤のスタジオの場面にはトーキング・ヘッズのジェリー・ハリソンもチラリと登場。エンド・ロールにも音楽作りに関する項目に彼の名前が出てきたはず。彼、近年ブルース・ロック畑のケニー・ウェイン・シェパードやジャム・バンドのザ・ストリング・チーズ・インシデント(2003年4月12日、2004年4月22日、2005年9月28日)の新作を手がていていたりもし、けっこう土臭い音楽に関わっている。
音楽制作現場にいる人間が舵取りをしたブツらしく、映画はメンフィスゆかりのビッグ・ネームや実力者やその他が絡む9つのスタジオ・セッションの模様が柱となる。古い人とスヌープ・ドッグ(格好いいな)らラッパーを組み合わせたりもし、またボビー・ラッシュ(1999年12月10日、2012年4月19日)やシカゴ・ブルースを支えたギタリストのヒューバード・サムリンなどブルース側にいる人物もフィーチャーされるのは制作者の趣味か。ぼくはブルース好きでもあるので、何ら問題はない。その演奏場面の多くはせえので撮られていて、それは往年のメンフィス録音流儀を思い出させて胸アツにさせるだろう。その出演者たちのやりとりや会話も随時流され、アーティストや楽曲やレーベルの歴史についての能書きはそれほど多くない。ま、ぼくはそれでなんら構いませんが。
そうしたなか、1968年4月にメンフィスで起きたキング牧師暗殺の影は小さくなく扱われる。あの事件後に白人と黒人が共存していたスタックスのリベラルな運営/制作に変化が出たのはこれまで指摘されてきた(アトランティックに捨てられた後、アル・ベルによる黒人主導のイケイケ体制がしかれ、白人がメンバーにいたザ・MGズの面々は徐々にスタックスから離れた)が、映画では才能ある黒人音楽家を増やしたくなかったからスタックスはつぶされた云々や、キング牧師が殺されなかったらスタックスは続いたというような言葉も、映画には出てくる。
ヒューバート・サムリン、ボビー・ブルー・ブランド、オフの場面でもいい味出していたギタリストのチャールズ・ピッツらは、撮影後に鬼籍入り。スタジオ場面には絶対的な味や技があるし、こういう映画(でなくてもいいのだが)はもっともっと作られるべきだろう。これを見て、過剰にメンフィスに行って見たいとは思わなかったが。かけがえのないソウルやブルースのかたちについてはいろいろ再認識せざるをえない。
メイヴィス・ステイプルズ、ブッカー・T・ジョーンズ(2008年11月24日、2009年7月25日、2010年2月8日 、2011年9月12日、2012年5月11日、2013年10月29日、2017年4月13日)、デイヴィッド・ポーター(!)、ウィリアム・ベル(2007年7月18日、2015年3月28日)、アル・ベルら、往年の人たちはみんないい感じ。好きな音楽をやっていると幸せな老後が待っている…。この映画を見ると、そう断じたくなる人がいるかもしれない。それから、ちょい進行役みたいな形で、俳優のテレンス・ハワード(TVドラマ「エンパイア」の主役のおっさん)も登場。とってもカッコをつけた彼は、1曲でギターを弾きながら歌う。
▶︎過去の、映画「黄金のメロディ マッスル・ショールズ」
http://43142.diarynote.jp/201406270933515875/
▶︎過去の、ノース・ミシシッピー・オールスターズ
http://43142.diarynote.jp/200410121003440000/
▶過去の、G・ラヴ
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2000-1.htm
http://43142.diarynote.jp/200411191620390000/
http://43142.diarynote.jp/?day=20050525
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http://43142.diarynote.jp/200610251744090000/
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http://43142.diarynote.jp/?day=20111104
http://43142.diarynote.jp/201410210816075554/
▶︎過去の、ザ・ストリング・チーズ・インシデント
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2003-4.htm
http://43142.diarynote.jp/?day=20040422
http://43142.diarynote.jp/200510030022330000/
▶︎過去の、ボビー・ラッシュ
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/december1999live.htm パーク・タワー・ブルース・フェス
http://43142.diarynote.jp/201204200904022166/
▶過去の、ブッカー・T・ジョーンズ
http://43142.diarynote.jp/?day=20090725
http://43142.diarynote.jp/200812110456078867/
http://43142.diarynote.jp/201002090914248826/
http://43142.diarynote.jp/201109151819433479/
http://43142.diarynote.jp/201310301217408539/
http://43142.diarynote.jp/201704161228187684/
▶過去の、ウィリアム・ベル
http://43142.diarynote.jp/200707232251010000/
http://43142.diarynote.jp/201503301741586544/
<今日の、もう一本>
映画館のお客は、見事に中年以上が多し。もう少し、若者がいてもいいがなあ。そして、そのあとは内幸町の試写室に回り、海外でも知名度の高い日本人監督の新作を見る。15日まではSMSなどに出すのはご遠慮くださいと言っていたので、詳しくは書かない。音楽を担当していたのは、鈴木慶一(2004年12月12日、2011年8月7日、2013年8月11日)。先に見たのが映画音楽だったからか、あまり音楽が目立たない映画、いや音楽効果をあまり用いない作品であると思った。
▶︎過去の、鈴木慶一
http://43142.diarynote.jp/200412212058580000/
http://43142.diarynote.jp/201108101635051749/
http://43142.diarynote.jp/201308130851402454/
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