日本武道館。開演時間ちょうどに客電がおり、定時ぴったしにメンバーたちがステージに出てくる。武道館は観客の入場が手間取り、開演時間がそれなりに押すことが常なのにこれはとっても珍しい。

 ギターのデレク・トラックス(SGタイプの1本でスライド・バー演奏も通常演奏もすべてをこなす。チューニングはどうなっていたんだろ? 2004年5月20日、2006年11月20日、2014年2月11日)、ヴォーカルとギターのスーザン・テデスキ(2014年2月11日)に加え、3人の管(テナー、トランペット、トロンボーン。トロンボーンは女性)、3人のコーラス(男2、女1。前に出来て,2、3曲リードを取った男性はデレク・トラックス・バンドで歌っていた御仁か。記憶ある顔を見て、そう思った)、ベース、2人のドラム、キーボード/フルート。総勢、12人。

 脈々と積み重ねられて来た米国の様々な黒い市井の音楽の素晴らしさ、大所帯で音楽をすることの素敵があふれまくっていた公演。しかも、面々が楽しみつつ、本当に気持ちをこめてパフォーマンスしていたので、これは高揚しちゃうし、いい気持ちになれる。

 とともに、前回のテデスキ・トラックス・バンド公演のときとけっこう構成はかわっていて精進している、自らの音楽に“水”を与えている、と思わせるところも、すこぶるよかった。たとえば、前回時はほぼソロを取らなかったテデスキが今回はかつてブルース・レイディとしてピンの活動していたときのように、3曲でしっかりソロを取ったこと。特に、二つのブルース曲においてはかなり長目に。彼女は基本眼鏡をしていたが、途中は外していたりもしたな。
 
 コーラス陣3人が前に出来てゴスペル調コーラスを取り、曲に繋げる場面も。また、アフリカ系のテナー・サックス奏者が1曲で大々的にフィーチャーされたが、その自分を出した、定石から離れた創意あるソロに驚き、頷く。わあ、カマシ・ワシントン(2014年5月28日、2015年10月31日)やローガン・リチャードソン(2016年2月3日)より、独創的で変てこじゃあないか? また、2分の1のドラマーのJ.J.ジョンソンの演奏も凄っ。とか、ジャズも知っているいい奏者をちゃんと揃えつつ、“合奏”しているよな。本編終盤は多くのメンバーがさがり、ドラム2人とベースだけをバックにトラックスは延々とソロを取った。

 アンコールの最後の曲は、ザ・ビートルズの「ウィズ・ア・リトル・ヘルプ・フロム・マイ・フレンズ」のスケールの大きな、ソウルフルなカヴァー。その際の、テデスキの適切にくずしまくっていた歌唱は素晴らしいの一言。また、一発かました渾身のシャウトは鳥肌もの。この人、シンガーとしてどんどん成長している!

 ああ、アメリカの味、合衆国の襞……。てな、2時間15分。

▶過去の、テデスキ・トラックス・バンド
http://43142.diarynote.jp/201402121439433317/
▶過去のデレク・トラックス・バンド
http://43142.diarynote.jp/200405200442460000/
http://43142.diarynote.jp/?day=20061120
▶︎過去の、カマシ・ワシントン
http://43142.diarynote.jp/?day=20140528
http://43142.diarynote.jp/201511040742444324/
▶過去の、ローガン・リチャードソン
http://43142.diarynote.jp/?day=20160203

<今日の、大人数>
 九段下駅、武道館公演があるときはいつも混んでいるが、今日は花見客(まさに、旬。夜は雨が振り残念。ぼくもライヴ後に入っていた花見をやめた)もいて、すごい混み様。そうか千鳥ヶ淵と靖国神社と、花見名所が重なるのか。昼間、1965年パリのオランピア劇場で録られた2枚組『モータウン・レヴュー・〜ライヴ・イン・パリ』(タムラ、2016年)を聞く。14曲も、追加。ザ・ミラクルズ、マーサ&ザ・ヴァンデラス、スプリームス、スティーヴィー・ワンダー(2005年11月3日、2010年8月8日、2012年3月5日)、そしてアール・ヴァン・ダイクがリーダーとなるバック・バンド(2006年4月11日)のジャジーなインストもある。それを聞いて、至福の時間を過ごせた。けっこう剛毅にやっているなど、新しい発見もあった。今年のリイッシューNo.1候補となりえるな。……同好が集い、ときに助け合い、大人数が集まってこそのショウを浮かび上がらせる。そんなテデスキ・トラック・バンドのありかたも、その延長にあると言えるかもしれない。
▶過去の、スティーヴィー・ワンダー
http://43142.diarynote.jp/200511130015240000/
http://43142.diarynote.jp/201008261618276388/
http://43142.diarynote.jp/201203062006429595/
▶過去の、ファンク・ブラザース
http://43142.diarynote.jp/200604141318090000/

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