キューバ人ジャズ・ピアニストであるチューチョ・バルデス(2009年9月14日、2010年3月25日、2012年5月1日、2013年2月28日)の実演は今年2月に見ている。そのときは、ソロのパフォーマンス。1年に何度も見たいというほど、彼の愛好家ではないものの、今回のサポートの4人(打楽器2人、ウッド・ベース、ドラム)のパーソネルに皆ヴォーカルと書いてあり、見てえ〜となってしまった。歌が溢れたパフォーマンスなら、触れたいよなあ。で、予習したら、なんと同名グループのアルバムが2010年に出ていたりもするし、今回の同行奏者は、彼のソロ名義の新作『Caridad Amaro』(Jazz Village)と結構重なっている。腕が立つ彼らは、皆キューバの若手の名手たちなよう。南青山・ブルーノート東京、ファースト・ショウ。

 近年のアルバムに示されているように、インスト主体の表現で、ヴォーカル活用曲が次々に並ぶという感じではなかった。が、ぼくが見たバルデス実演の中では一番興味深いものであったのは間違いない。基本は、なんでもアリ。クラシック曲やジャズの曲のクォーテイションが散ったピアノ演奏から、ベース奏者がエレクトリック・ベースに持ち替えた(そのさい突然、スタンリー・クラーク〜2008年9月8日、2010年12月3日、2012年12月5日〜が大好きなのかと思わす演奏になる)ジャズ・ファンク曲まで。1曲目だか2曲目だかで早々に披露されたロドニー・バレットのドラム・ソロはジャズ・ビートかからもラテン・ビートからも離れたもので、あえて誤解を恐れずに書けば、あなたはロバート・グラスパー(2007年10月3日、2009年4月13日、2009年12月19日、2010年12月16日、2012年6月12日、2013年1月25日)のグループに入りたいのネ、と思わす叩き口のもの。他の曲でも、彼はけっこうそのノリで叩いたりもした。また、新作でも再演しているバルデスの雄大しっとりメロディアス曲「カリダド・アマーノ」も悠々活き活きと披露された。それから、2、3曲では、バタ・ドラムを叩いて歌うレイセル・ボンバレがフィーチャーされ、サンテーリアを根に置くようなそれは興味深すぎ&訴求力大。彼は、最後のファンキー曲のときは軽やかな踊りも披露した。

 その後、渋谷・サラヴァ東京で、ジュリエッタ・マシーンを見る。ライヴをやる回数が少ないためもあるだろう、満員。歌とキーボードの江藤直子(2013年7月13日、大友良英あまちゃんバンド)、ギターの大津真、エレクトリック・ベースの西村雄介、ドラムの藤井信雄(2001年9月22日、他。菊地成孔DCPRG)の4人からなる、広い視野と豊かな経験ありきの、しなやかで清新なポップ・バンド。この晩は<ジュルエッタ・マシーン・クワイエット・セプテット2013>と謳われていて、ヴォーカルの高遠彩子、チェロの笠原あやの、トロンボーンの青木タイセイ(2005年2月19日、2007年1月27日、2006年11月14日、2011年7月27日、2013年2月19日、他)が加わる。まさに悠々、甘いも粋も噛み分けた趣味的ミュージシャンたちによる洒脱ポップの聖なる宴……なんちって。優美さ〜流麗さの奥にある、あっち側を見据える冒険心〜刺の存在もまた麗しかった。

▶過去の、バルデス
http://43142.diarynote.jp/200909181205563624/
http://43142.diarynote.jp/201003271334102896/
http://43142.diarynote.jp/201205080621274204/
http://43142.diarynote.jp/201303070813066769/

▶過去の、クラーク
http://43142.diarynote.jp/?day=20080908
http://43142.diarynote.jp/201012051906481605/
http://43142.diarynote.jp/201212131141531884/

▶過去の、グラスパー
http://43142.diarynote.jp/200710121727100000/
http://43142.diarynote.jp/200904150840164356/
http://43142.diarynote.jp/201001051625155901/
http://43142.diarynote.jp/201012171104366095/
http://43142.diarynote.jp/201206141342549869/
http://43142.diarynote.jp/201301270742196778/

▶過去の、江藤
http://43142.diarynote.jp/201307160735048974/

▶過去の、藤井
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/livezanmai.htm

▶過去の、青木
http://43142.diarynote.jp/?day=20050219
http://43142.diarynote.jp/200702010112550000/
http://43142.diarynote.jp/200611190319380000/
http://43142.diarynote.jp/201302201720351212/


<今日の、ワープ>
 ライヴを見る前、駒込の六義園に紅葉を見に行く。初めて行ったが、ほう。徳川綱吉の時代に、彼に近い和歌山ルーツのお侍さんが作った大庭園で、今は都の所有で有料(300円)にて公開されている。わあ、木の薫りや、雰囲気がすごい。即、東京じゃないみたい、と、密かに高揚。もう少し後のほうが、紅葉は鮮やかか。16時ちょいに入園し、17時前からライトアップ。通常は17時に閉園するらしいが、この時期は21時まで開いているよう。陽が暮れるにつれて、どんどん入園者が増えていく。でかい池に映る、光を照らされた風景がとっても綺麗で、風情あり。写メがどれも絵になる、という感じ? 茶屋みたいなところで、日本酒のお燗を2杯。安酒だろうが、シチュエーションに勝る良スパイスなし。至福。で、青山に向かうが、ちょっとしたワープ気分を味わった。

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