キャット・エドモンソン。ザ・ファンキー・ミーターズ
2015年5月10日 音楽 まずは、南青山・ブルーノート東京で、曲も書く30歳ちょいの米国人女性シンガーの初来日公演を見る。その小柄で細い体躯やさらりとした風貌とは相容れない“癖っ声”を持つ人物で、それだけで、何を歌っても人の興味をひくと思わされるタイプ。で、歌い始めたら、CDのまんま。わらっちゃった。
そんな彼女は古いハリウッド映画に親しんで育ち、アフレッド・アステアやジーン・ケリーらをアイドルとしてきたというのが要点。つまり、その趣味を今も持つ彼女のアルバムは一言で言えばジャジーな部分も持つレトロスペクティヴなポップ・ミュージックであり、その浮世離れした感じは、ジャズがポップ・ミュージックのメインストリームたりえたころの鷹揚な豊かさから導かれていると説明することができるだろう。
ギター、ベース、鍵盤(ヴァイブラフォンやアコーディオンやピアニカも触る)、ドラムを従えてのステージ。2作品を自主制作やクラウド・ファウンディング(応援者であるライル・ラヴィットのデュエットも含む2作目『Way Down Low』はなかなかのジャジー・ポップ好盤)で作ったあと、ソニーに認められて2015年のサード作『ビッグ・ピクチャー』はミッチェル・フルームのプロデュースにて、よりポップ寄りにあるものを作った。
おもしろいのは体躯の大きな女性キーボード奏者(キーボードをちょい触っただけで、何気にしっかりしていると思わされた)がもしかして半数の曲で、小さめのヴァイブラフォンを扱っていたこと。また、ドラマーも同様に鉄琴を演奏する局面もあり(一緒に連弾みたいになるときも)、こんなに鍵盤打楽器音が伴奏に使われるポップ・ミュージックも珍しいと思わずにはいられず。エドモンソンは洒脱な音の響きを持つということでヴァイブラフォン系の音を用いていると推測されるが、この後“渋谷系”にかする方向に彼女が向かって行っても不思議はないと思わされもしたか。もしくは、アメリカーナ的な味付けをより求めるのはアリだろう。あ、先に触れた2作目はその薫りもありますね。
その後は、六本木・ビルボードライブ東京に移動して、ニューオーリンズの顔役ファンク・グループ(2009年7月25日、2014年1月17日)のショウを見る。オルガンのアート・ネヴィル、ベースのジョージ・ポーターJr. (2007年2月2日。2007年2月4日、2008年8月12日)、ギターのブライアン・ストルツの3人に加え、今回のドラマーはテレンス・ヒューストンという若いアフリカ系の人物。
インスト表現主体、歌が入るパートはならすと3割欠けぐらいかな。前回来日時の文でも指摘したが、延々とフレイズや手癖楽器音を重ねて切れ目なく繋いで行く様は、ジャム・バンド・ミュージック的。ザ・ファンキー・ミーターズならぬ、ザ・ジャミング・ミーターズと名乗ったほうがしっくり来るとは思いマス。
とくに、今回はザ・ミーターズのキラー・チューンを重ねるということもなく、余計にジャム・バンド的と感じた。前回と同じようにボブ・ディランのブルース曲「エヴィリバディ・マスト・ゲット・ストーンド」(それが、この公演の最初のヴォーカル曲だった)をやったりもしたが、それはストルツが歌う。彼はこれまでより前に出る感じだったが、それに触れながら、パパ・グロウズ・ファンク(2004年3月30日、2007年2月5日、2009年7月27日)も解散しちゃったし、ギタリストが山岸潤史(1999年8月5日、2000年12月7日、2001年7月16日、2004年3月30日、2005年7月30日、2005年7月31日、2007年2月3日、2007年2月4日、2007年2月5日、2008年9月11日、2009年5月19日、2009年7月27日、2010年8月4日、2011年5月17日、2012年9月8日、2013年6月13日、2014年7月29日、2015年1月29日)じゃ駄目なのかと思うことしきり。ポーターJr.とは一緒にバンドをやったりしていて、仲良しだったりするし……。でも、山岸だと個の味が濃すぎるというところはある?
そしたら、アンコールはバディ・マイルス/ジミ・ヘンドリックスで知られる「ゼム・チェンジズ」(これも歌ったのは、ストルツ)。少しヘンドリックス的な演奏を見せるストルツの演奏に触れつつ、やはり山岸のほうが適任ぢゃんと思わずにはいられず。
サム・ピッキング主体のポーターJr.はやはり元気。新しいドラマーは特筆すべき人でもないと思ったが、本編最後の「ヘイ・ポッキー・アウェイ」のスネア音はマルと思う。それを歌ったのは、従来通りアート・ネヴィル。考えてみれば、同地のジャズ&ヘリテッジ・フェスティヴァルが終わって、彼らは極東にやってきたことになるのか。なんて、考えると、有り難みは増すか。悠々、着々、やはりじいさんたちのパフォーマンスからは彼の地の魔法がジューシーにいろいろ融けていたわけで……。90分の演奏時間、なり。
▶過去の、ザ・ファンキー・ミーターズ
http://43142.diarynote.jp/?day=20090725
http://43142.diarynote.jp/201401181209502731/
▶過去の、アート/ザ・ネヴィル・ブラザース
http://43142.diarynote.jp/200410121001170000/
▶過去の、ポーター・Jr.
http://43142.diarynote.jp/200702090041480000/
http://43142.diarynote.jp/200702121118370000/
http://43142.diarynote.jp/200808140129280000/
▶過去の、パパ・グロウズ・ファンク
http://43142.diarynote.jp/200403300522210000/
http://43142.diarynote.jp/200702122331070000/
http://43142.diarynote.jp/200908071452433928/
▶過去の、山岸潤史
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/augustlive.htm
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2000-12.htm
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2001-7.htm
http://43142.diarynote.jp/?day=20040330
http://43142.diarynote.jp/200508060616450000/
http://43142.diarynote.jp/200508060622480000/
http://43142.diarynote.jp/200702112125550000/
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http://43142.diarynote.jp/200702122331070000/
http://43142.diarynote.jp/200809160030188727/
http://43142.diarynote.jp/?day=20090519
http://43142.diarynote.jp/?day=20090727
http://43142.diarynote.jp/?day=20100804
http://43142.diarynote.jp/201105181052427410/
http://43142.diarynote.jp/?day=20120908
http://43142.diarynote.jp/201306171646424744/
http://43142.diarynote.jp/201408051721103640/
http://43142.diarynote.jp/201501301446383781/
<今日の、出演者>
エドモンソンには、先週末にインタヴューをした。相当に控え目な感じ(それを受けて、競争が苦手そうに見受けられるあなたが、昔アメリカン・アイドルに出たことがあるのは意外と感じるという主旨の発言をしたところ、本人もそれを肯定)で、まっさらな感じを受ける。そのときは淡いピンク基調のカーディガンなどを着ていて、アメリカ人、もとい彼女が育った南部ぽくないことも指摘すると、彼女ははにかみつつうれしそうに謝辞を返した。今後は、映画にも出たいそうだ。
一方、前回来日時に腰を痛めていて見る物をギョッとさせたザ・ファンキー・ミーターズのアート・ネヴィルなんだが、今回もステージの乗り降りにはかなり時間がかかっていた。でも、演奏の最中にお付きの人に腰を支え続けてもらうという局面はなし。オルガン演奏は前よりも控え目、歌も控え目。現在のザ・ファンキー・ミーターズ表現の中では主ではなく、従の位置に、彼はいる。つまり、主はポーター・Jr.とストルツの絡み。その事実は少し悲しいが、それでも見れて良かったと思わずにはいられないんだよなあ。彼は全曲ハモンドを弾いたが、横にはノードも置いていた。それハモンドの予備、それとも場合によっては電気ピアノ音色で弾くつもりでもあった?(確かに、「ヘイ・ポッキー・アウェイ」は電気ピアノ音が本来基調となる曲だよな) 腰をいたわりつつ、気をつけて飛行機で帰ってくださいね。戻ったら、彼らは米国で2公演が控えている。
そんな彼女は古いハリウッド映画に親しんで育ち、アフレッド・アステアやジーン・ケリーらをアイドルとしてきたというのが要点。つまり、その趣味を今も持つ彼女のアルバムは一言で言えばジャジーな部分も持つレトロスペクティヴなポップ・ミュージックであり、その浮世離れした感じは、ジャズがポップ・ミュージックのメインストリームたりえたころの鷹揚な豊かさから導かれていると説明することができるだろう。
ギター、ベース、鍵盤(ヴァイブラフォンやアコーディオンやピアニカも触る)、ドラムを従えてのステージ。2作品を自主制作やクラウド・ファウンディング(応援者であるライル・ラヴィットのデュエットも含む2作目『Way Down Low』はなかなかのジャジー・ポップ好盤)で作ったあと、ソニーに認められて2015年のサード作『ビッグ・ピクチャー』はミッチェル・フルームのプロデュースにて、よりポップ寄りにあるものを作った。
おもしろいのは体躯の大きな女性キーボード奏者(キーボードをちょい触っただけで、何気にしっかりしていると思わされた)がもしかして半数の曲で、小さめのヴァイブラフォンを扱っていたこと。また、ドラマーも同様に鉄琴を演奏する局面もあり(一緒に連弾みたいになるときも)、こんなに鍵盤打楽器音が伴奏に使われるポップ・ミュージックも珍しいと思わずにはいられず。エドモンソンは洒脱な音の響きを持つということでヴァイブラフォン系の音を用いていると推測されるが、この後“渋谷系”にかする方向に彼女が向かって行っても不思議はないと思わされもしたか。もしくは、アメリカーナ的な味付けをより求めるのはアリだろう。あ、先に触れた2作目はその薫りもありますね。
その後は、六本木・ビルボードライブ東京に移動して、ニューオーリンズの顔役ファンク・グループ(2009年7月25日、2014年1月17日)のショウを見る。オルガンのアート・ネヴィル、ベースのジョージ・ポーターJr. (2007年2月2日。2007年2月4日、2008年8月12日)、ギターのブライアン・ストルツの3人に加え、今回のドラマーはテレンス・ヒューストンという若いアフリカ系の人物。
インスト表現主体、歌が入るパートはならすと3割欠けぐらいかな。前回来日時の文でも指摘したが、延々とフレイズや手癖楽器音を重ねて切れ目なく繋いで行く様は、ジャム・バンド・ミュージック的。ザ・ファンキー・ミーターズならぬ、ザ・ジャミング・ミーターズと名乗ったほうがしっくり来るとは思いマス。
とくに、今回はザ・ミーターズのキラー・チューンを重ねるということもなく、余計にジャム・バンド的と感じた。前回と同じようにボブ・ディランのブルース曲「エヴィリバディ・マスト・ゲット・ストーンド」(それが、この公演の最初のヴォーカル曲だった)をやったりもしたが、それはストルツが歌う。彼はこれまでより前に出る感じだったが、それに触れながら、パパ・グロウズ・ファンク(2004年3月30日、2007年2月5日、2009年7月27日)も解散しちゃったし、ギタリストが山岸潤史(1999年8月5日、2000年12月7日、2001年7月16日、2004年3月30日、2005年7月30日、2005年7月31日、2007年2月3日、2007年2月4日、2007年2月5日、2008年9月11日、2009年5月19日、2009年7月27日、2010年8月4日、2011年5月17日、2012年9月8日、2013年6月13日、2014年7月29日、2015年1月29日)じゃ駄目なのかと思うことしきり。ポーターJr.とは一緒にバンドをやったりしていて、仲良しだったりするし……。でも、山岸だと個の味が濃すぎるというところはある?
そしたら、アンコールはバディ・マイルス/ジミ・ヘンドリックスで知られる「ゼム・チェンジズ」(これも歌ったのは、ストルツ)。少しヘンドリックス的な演奏を見せるストルツの演奏に触れつつ、やはり山岸のほうが適任ぢゃんと思わずにはいられず。
サム・ピッキング主体のポーターJr.はやはり元気。新しいドラマーは特筆すべき人でもないと思ったが、本編最後の「ヘイ・ポッキー・アウェイ」のスネア音はマルと思う。それを歌ったのは、従来通りアート・ネヴィル。考えてみれば、同地のジャズ&ヘリテッジ・フェスティヴァルが終わって、彼らは極東にやってきたことになるのか。なんて、考えると、有り難みは増すか。悠々、着々、やはりじいさんたちのパフォーマンスからは彼の地の魔法がジューシーにいろいろ融けていたわけで……。90分の演奏時間、なり。
▶過去の、ザ・ファンキー・ミーターズ
http://43142.diarynote.jp/?day=20090725
http://43142.diarynote.jp/201401181209502731/
▶過去の、アート/ザ・ネヴィル・ブラザース
http://43142.diarynote.jp/200410121001170000/
▶過去の、ポーター・Jr.
http://43142.diarynote.jp/200702090041480000/
http://43142.diarynote.jp/200702121118370000/
http://43142.diarynote.jp/200808140129280000/
▶過去の、パパ・グロウズ・ファンク
http://43142.diarynote.jp/200403300522210000/
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http://43142.diarynote.jp/200908071452433928/
▶過去の、山岸潤史
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/augustlive.htm
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2000-12.htm
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2001-7.htm
http://43142.diarynote.jp/?day=20040330
http://43142.diarynote.jp/200508060616450000/
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<今日の、出演者>
エドモンソンには、先週末にインタヴューをした。相当に控え目な感じ(それを受けて、競争が苦手そうに見受けられるあなたが、昔アメリカン・アイドルに出たことがあるのは意外と感じるという主旨の発言をしたところ、本人もそれを肯定)で、まっさらな感じを受ける。そのときは淡いピンク基調のカーディガンなどを着ていて、アメリカ人、もとい彼女が育った南部ぽくないことも指摘すると、彼女ははにかみつつうれしそうに謝辞を返した。今後は、映画にも出たいそうだ。
一方、前回来日時に腰を痛めていて見る物をギョッとさせたザ・ファンキー・ミーターズのアート・ネヴィルなんだが、今回もステージの乗り降りにはかなり時間がかかっていた。でも、演奏の最中にお付きの人に腰を支え続けてもらうという局面はなし。オルガン演奏は前よりも控え目、歌も控え目。現在のザ・ファンキー・ミーターズ表現の中では主ではなく、従の位置に、彼はいる。つまり、主はポーター・Jr.とストルツの絡み。その事実は少し悲しいが、それでも見れて良かったと思わずにはいられないんだよなあ。彼は全曲ハモンドを弾いたが、横にはノードも置いていた。それハモンドの予備、それとも場合によっては電気ピアノ音色で弾くつもりでもあった?(確かに、「ヘイ・ポッキー・アウェイ」は電気ピアノ音が本来基調となる曲だよな) 腰をいたわりつつ、気をつけて飛行機で帰ってくださいね。戻ったら、彼らは米国で2公演が控えている。
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