まず、渋谷・映画美学校試写室で、2021年日本映画「なん・なんだ」を見る。監督は1980年生まれの山嵜晋平。うわあ、すごい昭和感が強い映像の映画だな。そのトーンは意識的なものだろうか。横須賀や奈良や京都で撮影されているようだ。

 熟年夫婦のほつれた関係を軸に、周りの人たちを含めての生理的にやり場のない切ないストーリーが描かれる。溌剌したものを排したくすんだ色調で描かれる大人の物語り、と言えるだろうか。映画に浸ってきていないぼくには、フィリップ・グラスが音楽を担当していた1985年米国映画「Mishima: A Life In Four Chapters」に出ていた烏丸せつこ以外に知っている出演者は一人もいない。もう一人の主役の下元史朗は通受けしている俳優のようだが、彼の台詞回しがピンと来ない、脚本の会話などにも違和感をぼくは覚えるところがあると思って見ていた。しかし終盤、どんどん映画はいい感じに向かい……。なるほど、だなあ。

 要所で少し入る音楽は、下社敦郎による。使う楽器はおそらくエレクトリック・ギター、エレクトリック・ベース、ドラムだけ。ギターやドラムだけの場合もあるが、これは最低限にしてOKな音楽づけと感じた。来年1月中旬より公開される。

 その後は、目黒・BLUES ALLEY JAPANで、サロゲート・トリオを見る。パーカッションのヤヒロトモヒロ(2007年11月14日、2009年2月8日、2009年10月12日、2010年7月22日、2011年10月26日、2012年6月13日、2014年2月9日、2014年2月22日、2014年6月16日、2015年8月31日、2019年10月19日、2019年11月21日)、ピアノの阿部篤志(2010年4月19日)、箱モノのエレクトリック・ベースとダブル・ベースを弾く宮田岳が、その構成員。30歳だそうな宮田は頭脳警察他ロック畑を歩んでいるそうで、ヤヒロがじゃがたらで一緒になった際にコイツは何かあると感じ自分の側に引っ張ったのだという。宮田は漆/木工作家もしていて、そちらの方でEテレにも出ているそうな。そういう方の情報はすべてヤヒロが話したが、その穏やかで気持ちのあるMCはなかなか。MC嫌いのぼくだが、これならいいナと思えた。

 ともあれ。平たく言えばピアノ・トリオの表現となるのだが、これは“許容の音楽”だと思った。人間いろいろな嗜好があって当たり前、違う文化や流儀や音楽が当然という開かれた認識が前提で様々なものを受け止め、3人は音楽を紡いでいると思えたから。その際にフックとなるのは南米やアフリカの音楽の心得だったりするわけだが、普段閉塞した感覚に囲まれている人がこの呼吸しているトリオ音を聞いたなら、なんかさあっと前が開ける感じも得るのではないだろうか。阿部はピアノを弾きながら曲によっては鼻歌気分でスキャットを入れる。それも、どこか効果的であった。

▶過去の、ヤヒロトモヒロ
http://43142.diarynote.jp/?day=20071114
http://43142.diarynote.jp/200902102121513506/
http://43142.diarynote.jp/200910141731349364/
http://43142.diarynote.jp/201007241308021448/
http://43142.diarynote.jp/201111141210356758/
http://43142.diarynote.jp/201206141343402196/
http://43142.diarynote.jp/201402111029354181/
http://43142.diarynote.jp/201402240940377749/
http://43142.diarynote.jp/201406180852131370/
http://43142.diarynote.jp/201509021103292742/
http://43142.diarynote.jp/201708081443281390/
https://43142.diarynote.jp/201708280821026300/
https://43142.diarynote.jp/201910200819159611/
https://43142.diarynote.jp/201911230723444744/
▶︎過去の、阿部篤志
https://43142.diarynote.jp/201004211621084144/

<今日の、試写室>
 ぼくが座った少し前の横の方に、上映中携帯をいじっている人がいた。まあ、まっすぐスクリーンを見ている場合は視野に入らないのでそれほど気にしていなかったが、後ろにいる(だろう)人が、ついに「携帯、見るのやめてもらえますか」と丁寧な言葉ながら、少し怒りに満ちた声を上げる。ホント、そいつ何しに来ているんだろうね。そりゃ、スクリーンを見る視界に携帯の光る画面が入ったらイヤだろうなあ。クラシックのコンサートのように、映画館でマナーを巡って殴り合いの喧嘩が起きるということはあったりするのだろうか。
 サロゲート・トリオの実演は1部で失礼し、外せないお座敷へ。夜の大飲み、絶賛継続中。さあ、明日でオフィシャルな飲み会はおしまい、なはず。

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