米国でもこの7月初旬に劇場/Hulu で同時公開されたばかり、日本では8月27 日から公開される2021年アメリカ映画『サマー・オブ・ソウル(あるいは、革命がテレビ放映されなかった時)』をネット配信試写で見る。原題は、「Summer Of Soul (Or, When The Revolution Will Not Be Televised) 」。その副題は、ギル・スコット・ヘロンの第2作『Pieces of a Man』(Flying Dutchman、1971年)のオープナー「The Revolution Will Not Be Televised」から取られた。邦題、ちゃんとそれを出していて偉い。

 マテリアルは、著名ロック・フェスのウッドストックが開かれた同じ年である1969年夏場、NYハーレムのマウント・モリス公園(今は、マーカス・ガーヴェイ公園となっている)で開かれた“ハーレム・カルチャル・フェスティヴァル”というフリー・コンサート群。2年前から企業の支援やNYCの援助で催され、3回目(この年で終わったという話もある)となる1969年は大規模に6月末から8月にかけての日曜日の昼間(うち、1日はちょうどアポロ11号の月面着陸の日と重なった)に6度持たれた。うち、作品化を目指して5回分の映像がしっかりと撮影されたが、うまく商品化の話は成就せず、50年間眠っていたという。奥には小山もある公園にはぎっしりと人、人、人。もちろん彼らはほぼ黒人で、5万人入っていたという。

 出演者の興味深さやパフォーマンスの確かさ、そして映像や音も悪くなく、いろんな掘り起こし音楽映画が出されてきたなか、よくもまあずっと眠ってきたなと思ってしまう人は多いはず。ゴスペル、ソウル、ジャズ、ラテン、アフリカ……、ブラック・カルチャー〜持たざる者の創造性や意識高揚を指し示す出演者たちは、スティーヴィー・ワンダー、B.B.キング、ザ・フィフス・ディメンション、ステイプル・シンガーズ、ザ・エドウィン・ホウキンス・シンガーズ、マヘリア・ジャクソン(気張って歌い、11年前の『真夏の夜のジャズ』出演時と全然違う。ある意味、フェスのノリに合わせていてプロだな)、ハービー・マン、ロイ・エアーズ、ソニー・シャーロック(実はエアーズとシャーロックは、ハービー・マン・グループで出演している)、デイヴ ィッド・ラフィン、グラディス・ナイト&ザ・ピップス、スライ&ザ・ファミリー・ストーン、モンゴ・サンタマリア、レイ・バレット、マックス・ローチ、アビー・リンカーン、ヒュー・マセケラ、ニーナ・シモーンなどなど。特にスライやニーナ・シモーンは鳥肌ものだな。もう、僕は身体を揺らし、掛け声あげまくりで、これは外の試写会では不可能なことであった。

 ジェシー・ジャクソン牧師(公民権運動家の彼は1980年代に2度、民主党の大統領候補指名の予備選に出ている)も出てきて、颯爽と観衆に語りかける。このハーレム文化祭はその前年に殺されたキング牧師の追悼も兼ねていて、ジャクソン牧師はその悲劇に際に一緒に食事をとっていたようだ。進行役はこのハーレム文化祭の企画者で、クラブ・シンガーやプロモーター(NYCともパイプを持っていたよう)であったトニー・ローレンス。彼は回によっていろいろ見栄えのする衣服を着て、けっこうアフリカンとしての自負を促す煽りを入れる。このときのニューヨーク市長は、共和党所属で白人ハンサム中年のジョン・リンゼイ。ステージでも紹介される彼は、アフリカンやラティーノの存在にも配慮する人物として紹介される。だが、当初NYPDはフェスの警備を拒否したため、それをブラック・パンサー党が担ったという。

 さて、この貴重なフェスの掘り起こし映画の監督として白羽の屋が立てられたのが、ザ・ルーツのアミール・“クエストラブ”・トンプソン(2002年12月29日、 2003年12月2日、 2004年9月19日、2007年1月15日、2013年12月19日)。映像の分野には明るくなく、当初は躊躇したらしいが、映像のプロのサポートを得ての映像使い/編集は賞賛に値する。なんでも、フェスの記録半分、その時代の黒人を取り巻く状況を伝えることが半分、という指針を立てたようだが、その目論見は大成功。それが1969年の出来事を、今に持ってくる意義を存分に出している。

 とにもかくにも痛感させられ、感心せざるを得ないのは、クエストラヴがヒップホップの秀でた音楽家/クリエイター/ドラマーであるということ。リズムの扱いに自覚的で、編集もテンポよし。出演者は時系列には従わず、恣意的に配置されるが、それも適切で、幅広い出演者は違和感なく並び、皆横並びのブラック・ミュージックという真実も浮かび上がる。あの時期の状況を示す映像や写真(よく集めている)、当時の出演者をはじめとする生きている関係者(出演者の子息も出てくる)の証言などの入れ方もほぼパーフェクト。それ、エンド・ロールにおいて膨大な名前の中に出てくるスパイク・リーよりかうまいんじゃない? また、昔このフェスに行った一般の人々の証言映像も随時効果的に使い、その指針もお見事。それは、本当にハーレムに住む人たちための市井のフェスであったことを伝える。とかなんとか、秀でたDJ感覚に則ったクエストラヴの映像/音楽構成は冴えまくり、音楽はつながったものであり、それは過去のものではなく今も生き続けるものであり、また当時の持たざる者を取り巻く問題は今も変わりがないということを伝えるのだ。再び言うが、クエストラヴすごいっ! そんな本映画、配給はディズニーだ。

▶︎過去の、クエストラヴ/ザ・ルーツ
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2002-12.htm
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2003-12.htm
http://43142.diarynote.jp/?day=20040919
http://43142.diarynote.jp/200701201415300000/
http://43142.diarynote.jp/201312200917503345/

<今週、前半のダメダメ>
 いやー、まいった。日曜日正午に2度目のワクチン注射を受けたが、今回は翌日に見事に副反応が出た。接種当日は開放感もあり飲みて〜という気持ちを律するなど、フツーだったのにな。解熱剤のカロナールを用意しており飲んだのに、38度近くまで熱が出た。また、両肩にものすごい重量がかかったようになるなど徒労感ハンパない。月曜日は完全に寝たきりにすることにしちゃったよー。水曜ぐらいまで、微熱は続いた。これで、抗体が体内にできていると思うことにする。何かを犠牲にすることで利は得られる、とオトナの考え方をするナリ〜。

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