最初、六本木・ビルボードライブ東京で、新進ラッパーのトパーズ・ジョーンズを見る。サマーソニック出演に先駆けてのもので、ファースト・ショウ。

 長身で長髪のブレイズ、別にたいした格好はしていないのだが、なかなか格好いい。彼のお父さんはオハイオ・ファンクの系譜にきっちりと位置をしめるスレイヴやオウラのギタリスト/シンガーのカート・ジョーンズ(彼もブレイズ頭をしている)だそうだが、トパーズのPV を見るとそれなりに楽器ができそうな感じもあるがどうなんだろう? あと、なんかおぼっちゃまくんぽい感じはかなりある。

 日本人と思しき女性DJ(彼女は20分ほど冒頭で、単独で音を流す)の音出しのもと、ステージを縦横に動きながら、彼はパフォーマンス。ほんのちょい歌ったりもするが、なんにせよ地声はデカそう。とともに、すげえMCが早口なんだが、ときにラップでもそう。そんな彼のポイントはヤサグレた感じがなく、なんかと健やかなムードを受け手に与えること。これでギャングスタなネタを扱っていたら大笑いだが(←ちゃんと、チェックしろというハナシですね)、その総体に暗さやヤバさはなし。そういう人がいてもいいだろうし、もっとオレ様乗りは出してほしと思わなくもないが、本当に善人そうな感じで観客に接しつつ、彼はエンターテインメント性の高いショウを繰り広げていた。ファースト作を出したのが2016年なので、新曲も披露した。

 その後は、南青山・ブルーノート東京に回る。いろんなことをやってきているが、ぼくのなかではマーカス・ギルモア(2007年11月21日、2010年7月24日、2010年8月22日、2014年5月15日、2014年6月19日、2014年6月20日、2015年4月7日、2016年9月16日、2017年4月18日)他を擁するあまりにストロングで研ぎ澄まされた現代ジャズ・クインテット表現の作り手という像があまりにデカい、キューバ出身で在NYのピアニスト(2005年3月16日、2007年11月21日、2010年8月22日、2014年1月10日、2014年1月12日、2015年4月7日)のキューバン・ラテンのプロジェクトが、今回の出し物。彼、サルサ歌手のイサック・デルガードとは米国に渡った時期が同じでとても仲良し、プロデュースから客演まで数枚のイサックのアルバムに関与している。

 そんな彼の相手役シンガーはルバルカバとは後輩ながら同じ学校区で育ったという、亡命後はマイアミに居住し、芯の強いリーダー作群(一部、ルバルカバが参加したアルバムもあり)を出しているアイメー・ヌビオラ。おお、その場にいるだけで、立った好ましい個をアピールする人で大きく頷く。そのヌビオラ姐さんは、すごいアフロ・ヘアー。そして、キンキラのドレス。うひょー。でも、それがまったく本人のキャラクターと合い、その存在感ある歌唱と相まって、美味しい華を出す。一方のルバルバカの格好も真っ白のスーツに真っ赤なネクタイ、彼も普段のジャズのパフォーマンスとは離れたことをすることをそれできっぱり示す。

 実はゴンサロとヌビオラがステージを共にするのは初めてで、この“風と天気”というプロジェクトは今回が世界初お披露目となるらしい。他の構成員は、クリストバル・ベルデシア(ベース)、レイニエル・ゲーラ(ドラムス)、ホセ “マヒート” アギレラ(パーカッション)、ルルデス・ヌビオラ(バックグラウンド・ヴォーカル)、アルフレド・ルーゴ(バックグラウンド・ヴォーカル)、そして日本から参加のソプラノ・サックスとアルト・サックスの近藤和彦(2011年3月28日、2011年8月6日 、2014年9月7日、2015年9月27日、2016年1月7日、2016年10月28日、2017年11月8日、2017年12月5日、2018年6月8日、2018年9月2日、2019年1月7日)。セリア・クルーズの遺作などこのなかで一番レコーディング参加の多いホセ “マヒート” アギレラはベネズエラ出身と紹介され、あとはキューバ出身者だろう。近藤は問題なく合いの手を入れ、ときにソロを取る。かつて熱帯ジャズ楽団にいたことがあったが(それで、インタヴューしたことがあって、そしたらしばらくして彼は脱退した)、どういう経緯で実力者の彼に声がかかったのだろう。

 コーラスが二人いることを見ても分かるように、これは歌ものプロジェクト。もう、キューバの蓄積が生む歌心が、進歩的なところも持つ絶妙の重なりを持つサウンドに乗って溢れ出る様にぼくは降参。もちろん、リズムのかみ合いをはじめサウンドも耳を弾き、ときにとんでもない技術と審美眼を下敷きにするルバルカバのちょっとした指さばきにもおおぅ。キューバ出身のジャズ・ピアニストは少なくないが、(かつては道をあやまったアルバムを出したこともあった)彼がその頂点にいるということも、ぼくは再確認した。

 ともあれ、今年有数の歌力にあふれていたショウであったのは疑いがない。また来てほしいし、ルバルカバの別プロジェクトにもいろいろ触れたい。

▶過去の、マーカス・ギルモア
http://43142.diarynote.jp/200711290930350000/
http://43142.diarynote.jp/201007261045442770/
http://43142.diarynote.jp/201008261620103318/
http://43142.diarynote.jp/201405171309186867/
http://43142.diarynote.jp/201406201008164250/
http://43142.diarynote.jp/201406210910441716/
http://43142.diarynote.jp/201504081451142675/
http://43142.diarynote.jp/201609201820427313/
https://43142.diarynote.jp/201704200801169451/
▶過去の、ゴンサロ・ルバルカバ
http://43142.diarynote.jp/200503240453290000/
http://43142.diarynote.jp/200711290930350000/
http://43142.diarynote.jp/201008261620103318/
http://43142.diarynote.jp/201401161534392423/
http://43142.diarynote.jp/201401171004104264/
http://43142.diarynote.jp/201504081451142675/
▶︎過去の、近藤和彦
http://43142.diarynote.jp/201104041100266528/
http://43142.diarynote.jp/201108101632022013/ ノー・ネーム・ホーセズ
http://43142.diarynote.jp/201409100930206205/ ノー・ネーム・ホーセズ
http://43142.diarynote.jp/201501131019359012/
http://43142.diarynote.jp/201510021129591335/
http://43142.diarynote.jp/201601090750252990/
https://43142.diarynote.jp/201610311054183284/
http://43142.diarynote.jp/201711091333526195/ マシュー・ハーバーツ・ビッグ・バンド
https://43142.diarynote.jp/201712061006171627/
https://43142.diarynote.jp/201806130948515941/
https://43142.diarynote.jp/201809071509481583
https://43142.diarynote.jp/201901090933013218/

<今日の、認知>
 お盆中、禁酒している。ピロリ菌撲滅(発見されてしもうた)のための薬を飲んでいるため。ゆえに、今日の二つのライヴ会場ではスパークリング・ウォーターとミネラル・ウォーターをそれぞれにオーダー。飲まなくても、なんとかなるものなのだな。アフターも含め、飲まないと安上がり。ところで、朝夕に分けて1日10 粒服用を1週間続けなけらばならないのだが、処方されるときけっこう副作用が出やすい由を医者から告げられた。だが、まったくなんともねえ。さすがアレルギー0、花粉症なしのオトコ。とっても疲れやすい、ヘタレだけど……。

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