2つの会場で、ピアニスト/キーボーディスト、三者を見る。
まず、丸の内・コットンクラブ(ファースト・ショウ)で、ベルギー人ピアニスト(1977年生まれ)であるジェフ・ニーヴ(2010年11月11日、2014年3月11日)のソロ・パフォーマンス。彼の新作『One』(Universal Belgium、2014年)は英国アビー・ロード・スタジオ録音主体のソロ・ピアノ作で、今回のパフォーマンスはそれに準ずる。クラシック流れの高尚さとジャズ経験で磨いただろう閃きや揺れが共存……。その幅あるピアノ作は好き嫌いは別としても(クラシック流れの指裁きは気取りや衒学を聞き手に与える部分はあるかもしれない)、個を求める達者なピアニストがいるとは了解させられるだろう。
かなり情緒が改変されたとも書ける、ビリー・ストレイホーン「ラッシュ・ライフ」(新作にも収録)がオープナー。近年ピアノ・コンチェルト作も出すなどクラシックのほうにも進んでいる彼だが、やはり弾き口はクラシック素養をいかんなく出す。実は彼、そんなに手のひらが大きな人ではなく、すらすらと弾く様の奥には相当な研鑽があったと思わされる。その一方で、彼は新作には入っていないセロニアス・モンク曲(「ストレイト、ノー・チェイサー」だったかな)を披露したりもしたのだが、モンクは自分にとってとても重要なジャズ・ピアニトだか作曲者みたいな発言もあり。そういえば、彼はMC/曲説明を丁寧に行う御仁であるのだが、ジョニ・ミッチェル「ア・クロース・オブ・ユー」を演奏するさいは得々とその歌詞を空で言ってみせたりもする。前日に彼にインタヴューしたとき、ジョニ・ミッチェルはまず歌詞が大好きなんだと言っていたが、なるほど事前に歌詞を延々と説かれると、この曲は歌詞を本当に丁寧に追っていると思わせられるな。
ジャズ・ピアニストとしていずれは出したくはあったが、「ピアノ・ソロ作を録音するのは本当に清水から飛び降りる思い」(もちろん、意訳ですね)であったそう。裸になる気持ちもあったそうで、『One』の裏ジャケにはニーヴの横に裸の男性が立っている。ペダルも多用する彼だが、ショウが終わると、すぐに調律師が出て来てセカンド・ショウに向けて作業を始めた。
▶過去の、ジェフ・ニーヴ
http://43142.diarynote.jp/201011140051119042/
http://43142.diarynote.jp/201403131302543532/
そして、南青山・ブルーノート東京に行く。LAとNY、それぞれをベースとするアフリカ系鍵盤奏者のそれぞれのトリオが実演をシェアするという内容のショウ。マネージメントが同じだったりして、この変則的な興行が組まれたのかな? 電気ベース奏者は両トリオとも、ラシャーン・カーター(2014年5月25日。前見たときほど、今回はグツグツ無骨には弾かず。いい奏者であるのは間違いないが)が務める。
ダニエル・クロウフォードはけっこうアーバン(R&B〜ヒップホップ)系セッション参加が多い奏者で、ネットでファレル・ウィリアムスやデイヴィッド・ボウイ他の有名曲のヴォーカル・トラックを抜き出したものに自らのエレクトリック・ピアノ音が活きたトラックをさしかえたものを発表していたりもする。この晩は、レッド・ツェッペリン「カシミール」やプリンス「アンダー・ザ・チェリー・ムーン」のカヴァーもあり。
まず、ドラマーのステイシー・ラモント・シドナーの演奏に驚く。ボンゴやコンガなどラテン・パーカッションをドラム・キットのなかに組み込んでいて、ときに左手のほうはそれらパーカッションを手で叩いて、まさにドラマーとパーカッション奏者が2人いるような音を出す。おお。主役はコルグの同機種二段重ねで、下はエレピ音限定。だったら、もっと鍵数を持つキーボードを使えばいいのに(リクエストを出せば、いくらでも応じてもらえるはず)、彼はそれでことを成す。両手でジャカジャカ複音を面ねていくような奏法は演奏の幅が広いと言えないが、現代マナーとしてはあり。ヴォコーダー使用曲もあったりして、やはりロバート・グラスパーぽいと思わせ、またグラスパーのファンにすすめるに足るとも思わせる。
40分ほどやって、マーク・キャリー(2008年8月6日)のエレクトリック・ピアノ(フェンダー・ローズ)のトリオと交代。ほう、対比的にこちらのほうが奏者間のインタープレイが密で成熟していると思わされる。とともに、キャリーはやはりジャズの人、指さばきが流麗達者。なるほどこのトリオはピアノ・トリオの方法論を柱に置きつつ、音色やビートを非純ジャズのほうに持ってこようとする指針を持つグループなのだと納得させられる。キャリーは部分的に単音系シンセサイザーも弾く。自作曲にまじえ、ジャッキー・マクリーン「マイナー・マーチ」とカーティス・メイフィールド「ステアー・アンド・ステアー」を弾いたりもしたが、そこらあたりの選曲にも彼の奥にあるものは透けて見えるか。そういえば、彼の2013年作は、なんとアビー・リンカーン曲集(! そんなの作った人を、ぼくは他に知らない)なんだよな。
▶過去の、ラシャーン・カーター
http://43142.diarynote.jp/201405271755563079
▶過去の、マーク・キャリー
http://43142.diarynote.jp/200808090220540000/
<今日の、はじめて>
ジェフ・ニーヴは、ある欧州ブランドから衣服の提供を受けていて、生地と仕立てのよいシャツ、ベスト、ジャケット、パンツをいつもきちっと身につけている。で、それは色男のマネージャーも同様。オフにインタヴューを受けるときも同じような格好をしていて、こんなにステージとオフの出で立ちが変わらない人も珍しい。思わず、いつもこういう格好をしているの?と彼に聞いてしまった。飛行機から降りて来たときもまた同様の決め具合であると、お付きの日本人が言っていたナ。ぼくはかつてニーヴのピアノ表現の響きの奥にレディオヘッドを見ると書いたことがあるが。『One』にはレディオヘッド(2001年10月4日、2004年4月18日、2008年10月4日)曲リフから触発され書いた曲もあるそう。それ、4曲目デス。
▶過去の、レディオヘッド
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2001-10.htm
http://43142.diarynote.jp/200404180058130000/
http://43142.diarynote.jp/200810061856366600/
まず、丸の内・コットンクラブ(ファースト・ショウ)で、ベルギー人ピアニスト(1977年生まれ)であるジェフ・ニーヴ(2010年11月11日、2014年3月11日)のソロ・パフォーマンス。彼の新作『One』(Universal Belgium、2014年)は英国アビー・ロード・スタジオ録音主体のソロ・ピアノ作で、今回のパフォーマンスはそれに準ずる。クラシック流れの高尚さとジャズ経験で磨いただろう閃きや揺れが共存……。その幅あるピアノ作は好き嫌いは別としても(クラシック流れの指裁きは気取りや衒学を聞き手に与える部分はあるかもしれない)、個を求める達者なピアニストがいるとは了解させられるだろう。
かなり情緒が改変されたとも書ける、ビリー・ストレイホーン「ラッシュ・ライフ」(新作にも収録)がオープナー。近年ピアノ・コンチェルト作も出すなどクラシックのほうにも進んでいる彼だが、やはり弾き口はクラシック素養をいかんなく出す。実は彼、そんなに手のひらが大きな人ではなく、すらすらと弾く様の奥には相当な研鑽があったと思わされる。その一方で、彼は新作には入っていないセロニアス・モンク曲(「ストレイト、ノー・チェイサー」だったかな)を披露したりもしたのだが、モンクは自分にとってとても重要なジャズ・ピアニトだか作曲者みたいな発言もあり。そういえば、彼はMC/曲説明を丁寧に行う御仁であるのだが、ジョニ・ミッチェル「ア・クロース・オブ・ユー」を演奏するさいは得々とその歌詞を空で言ってみせたりもする。前日に彼にインタヴューしたとき、ジョニ・ミッチェルはまず歌詞が大好きなんだと言っていたが、なるほど事前に歌詞を延々と説かれると、この曲は歌詞を本当に丁寧に追っていると思わせられるな。
ジャズ・ピアニストとしていずれは出したくはあったが、「ピアノ・ソロ作を録音するのは本当に清水から飛び降りる思い」(もちろん、意訳ですね)であったそう。裸になる気持ちもあったそうで、『One』の裏ジャケにはニーヴの横に裸の男性が立っている。ペダルも多用する彼だが、ショウが終わると、すぐに調律師が出て来てセカンド・ショウに向けて作業を始めた。
▶過去の、ジェフ・ニーヴ
http://43142.diarynote.jp/201011140051119042/
http://43142.diarynote.jp/201403131302543532/
そして、南青山・ブルーノート東京に行く。LAとNY、それぞれをベースとするアフリカ系鍵盤奏者のそれぞれのトリオが実演をシェアするという内容のショウ。マネージメントが同じだったりして、この変則的な興行が組まれたのかな? 電気ベース奏者は両トリオとも、ラシャーン・カーター(2014年5月25日。前見たときほど、今回はグツグツ無骨には弾かず。いい奏者であるのは間違いないが)が務める。
ダニエル・クロウフォードはけっこうアーバン(R&B〜ヒップホップ)系セッション参加が多い奏者で、ネットでファレル・ウィリアムスやデイヴィッド・ボウイ他の有名曲のヴォーカル・トラックを抜き出したものに自らのエレクトリック・ピアノ音が活きたトラックをさしかえたものを発表していたりもする。この晩は、レッド・ツェッペリン「カシミール」やプリンス「アンダー・ザ・チェリー・ムーン」のカヴァーもあり。
まず、ドラマーのステイシー・ラモント・シドナーの演奏に驚く。ボンゴやコンガなどラテン・パーカッションをドラム・キットのなかに組み込んでいて、ときに左手のほうはそれらパーカッションを手で叩いて、まさにドラマーとパーカッション奏者が2人いるような音を出す。おお。主役はコルグの同機種二段重ねで、下はエレピ音限定。だったら、もっと鍵数を持つキーボードを使えばいいのに(リクエストを出せば、いくらでも応じてもらえるはず)、彼はそれでことを成す。両手でジャカジャカ複音を面ねていくような奏法は演奏の幅が広いと言えないが、現代マナーとしてはあり。ヴォコーダー使用曲もあったりして、やはりロバート・グラスパーぽいと思わせ、またグラスパーのファンにすすめるに足るとも思わせる。
40分ほどやって、マーク・キャリー(2008年8月6日)のエレクトリック・ピアノ(フェンダー・ローズ)のトリオと交代。ほう、対比的にこちらのほうが奏者間のインタープレイが密で成熟していると思わされる。とともに、キャリーはやはりジャズの人、指さばきが流麗達者。なるほどこのトリオはピアノ・トリオの方法論を柱に置きつつ、音色やビートを非純ジャズのほうに持ってこようとする指針を持つグループなのだと納得させられる。キャリーは部分的に単音系シンセサイザーも弾く。自作曲にまじえ、ジャッキー・マクリーン「マイナー・マーチ」とカーティス・メイフィールド「ステアー・アンド・ステアー」を弾いたりもしたが、そこらあたりの選曲にも彼の奥にあるものは透けて見えるか。そういえば、彼の2013年作は、なんとアビー・リンカーン曲集(! そんなの作った人を、ぼくは他に知らない)なんだよな。
▶過去の、ラシャーン・カーター
http://43142.diarynote.jp/201405271755563079
▶過去の、マーク・キャリー
http://43142.diarynote.jp/200808090220540000/
<今日の、はじめて>
ジェフ・ニーヴは、ある欧州ブランドから衣服の提供を受けていて、生地と仕立てのよいシャツ、ベスト、ジャケット、パンツをいつもきちっと身につけている。で、それは色男のマネージャーも同様。オフにインタヴューを受けるときも同じような格好をしていて、こんなにステージとオフの出で立ちが変わらない人も珍しい。思わず、いつもこういう格好をしているの?と彼に聞いてしまった。飛行機から降りて来たときもまた同様の決め具合であると、お付きの日本人が言っていたナ。ぼくはかつてニーヴのピアノ表現の響きの奥にレディオヘッドを見ると書いたことがあるが。『One』にはレディオヘッド(2001年10月4日、2004年4月18日、2008年10月4日)曲リフから触発され書いた曲もあるそう。それ、4曲目デス。
▶過去の、レディオヘッド
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2001-10.htm
http://43142.diarynote.jp/200404180058130000/
http://43142.diarynote.jp/200810061856366600/
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