オーレ・ブールード。DJプレミア
2015年1月30日 音楽 いやあ、今日見たアーティスト2組は両方とも想像しえなかった内容の実演を見せてくれるとともに、けっこう笑わせてくれたよなー。
まず、丸の内・コットンクラブ(ファースト・ショウ)で、オーレ・ブールードという、ノルウェー人シンガー/ギタリストを見る。もともとエクストルというバンドで変種ヘヴィ・メタルをやっていたらしい貧相な外見の彼は、鍵盤、ギター、ベース、ドラムという平均的編成を持つバンドを伴ってパフォーマンスをした。
昨年に続く来日のようだが、ぼくはノー・マーク。ゆえに、38歳の彼のCD(全部で5作、個人リーダー作を出しているよう)を聞いたことはない。でも、ソウル・ミュージックを良質に昇華していそうな気がし、<北の国の、淡〜い、でも確かなソウル・ミュージックへの思慕>の様を確認したくて、ぼくは足を運んだ。そしたら、あららら……。乱暴に言ったら、この人、ノルウェーのエヂ・モッタ(2003年3月30日、2013年10月17日)と言いたくなるじゃん。だって、この日披露した曲の7割は、スティーリー・ダン大好きというノリが横溢、その簡素版という感じだったんだもの。
それが、よく出来ている。甲高い声も、彼のギターの演奏も、バンド各人の演奏もなかなかにいい感じで収まっている。結果、クククっと笑みがこみ上げてしょうがなかった。どれも本家の過剰さや執拗さを薄めたことをやっているのだが、気楽に、ちょいワザのある曲〜雰囲気を楽しむには十分と思ってしまった。そういえば、昔、フラ・リッポ・リッピというノルウェーのグループがいて、その1987年作はスティーリー・ダン〜西海岸大人ポップに接近しようとして、スティーリー・ダンの1/2であるウォルター・ベッカーに制作を委ねたことがあったが、彼らよりなんぼか作曲能力、巧みな咀嚼能力を、ブールードは持つと思う。ショウのオープナーとクローザーはわりとビートの強いロッキッシュな曲でそれだと少し“産業ロック臭”が出るが、サイドマンも米国西海岸奏者へ憧憬を滲ませるし、所謂AORと呼ばれる表現が好きな人は見て損はないはず。いかにもスカンジナヴィアン的な人の良さそうなところも好ましいし。
MCによれば、ブールードは1980年前後に3枚のアルバムを出した、AOR愛好者からはかなり崇められる西海岸ユニットのペイジズのファンでそのカヴァーもやったようだが、ぼくはペイジズをちゃんと聞いたことがないので、そこからの影響についてはよく分らない。でも、彼が1980年前後のアメリカ産AOR系表現に精通しているのは疑いがない。そして、この晩のショウに接するに、その手の愛好リスナーがちゃんとついているようだ。
▶過去の、エヂ・モッタ
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2003-3.htm
http://43142.diarynote.jp/201310181020496675/
一方、六本木・ビルボードライヴ東京(セカンド・ショウ)に出演した、1990年代ヒップホップ界の最たる敏腕DJ/トラック・メイカーであるDJプレミアもこんな人でこんなことやるのという、感じでワ〜。場内、満杯。ギリの時間に会場に着いたのだが、チェックイン窓口でかなりな列になっていて、ここでそういう光景に接するのは初めてか。
バンドを伴ってのもの。トランペットの黒田卓也(2012年2月18日、2012年9月13日、2013年2月15日、2014年5月25日)とトロンボーンのコーリー・キング(2013年2月15日、2013年6月4日、2014年5月25日、2014年8月7日)という、ホセ・ジェイムズ(2008年9月18日、2010年11月11日、2011年1月12日、2012年2月18日、2012年9月13日、2013年2月15日、2014年7月27日)がらみの二管とともに、白人ベーシストと黒人ドラマーを擁するカタチでパフォーマンス。このリズム隊、なんか見た目が格好いい。管の2人は共にキーボードも前に置き、時に弾いた。通称プリモさんはおおらかに巨漢、なり。力持ちに見える彼は、ターンテーブルとPCを前に置く。
DJプレミアの出した音を下敷きにプレイヤーたちは生音を加えるのだが、ぼくが事前に想像していたものとは違う。ジャジーな音選びという項目もあった彼だけに、生奏者と彼のDJイングとの丁々発止が楽しめるかと思ったら、それはなし。というのも、リズム音の上に楽器音が投げ出される局面もあった(ときに二管はソロのパートを与えられる場合も)が、基本はラップ付きトラック(それ、ギャング・スター曲をはじめ、どれも彼が制作関与したブツなのだろうか)が流され、それを補強する伴奏音として生音は付けられたから。
笑えたのは、プリモは時々キュルキュルやりつつ、のべつまくなし掛け声や扇情的な肉声を出し続けたこと。これが、野太く、デカい。傍若無人と言い方もあり? ずんずん、彼は平然とそれを続ける。結構こまかい音作りを志向するDJというイメージをなんとなく持っていたので、その様は、ぼくの意表をついた。そして、汚い言葉がいっぱい。あるときは、いいかぁマサー・ファッカーというのはいい言葉なんだァ、そらマザー・フッカー→マザー・ファッカー→マザー・ファッカー。てな感じで、客とコール&レスポンス。はは、笑いころげるしかないぢゃん。DJプレミアは俺様な、好漢でした。あ、それから、故グールーとのギャング・スターにはとっても深い思いを持っているのを直截に出していた。
本編最後の20分強はサポート奏者が引っ込んで、彼一人でパフォーマンス。で、自ら出すビートと野太い肉声の拮抗をがんがん噛ます。それだけでも、1時間ぐらいは持たせられそうとも思ったが、そうはしなかったあたりは、クールな人である表れか。そして、アンコールはまた5人でゴー! 全部で95分ぐらいやったかな。
▶過去の、黒田卓也
http://43142.diarynote.jp/201202200901013744/
http://43142.diarynote.jp/201209191239346073/
http://43142.diarynote.jp/201302181044151204/
http://43142.diarynote.jp/201405271755563079/
▶過去の、コリー・キング
http://43142.diarynote.jp/201302181044151204/
http://43142.diarynote.jp/201306060730086224
http://43142.diarynote.jp/201405271755563079/
http://43142.diarynote.jp/201408091058201133/
▶過去の、ホセ・ジェイムズ
http://43142.diarynote.jp/200809191051472579/
http://43142.diarynote.jp/201011140051119042/
http://43142.diarynote.jp/201101131336421886/
http://43142.diarynote.jp/201202200901013744/
http://43142.diarynote.jp/201209191239346073/
http://43142.diarynote.jp/201302181044151204/
http://43142.diarynote.jp/201408051020111821/
<今日の、”ドント・ストップ・ザ・ワールド“>
朝起きたら、天気予報どおり雪が降っていて、少し積もってもいる。じきに雨にはなったが終日寒い。先週あたりから、それなりに寒さを感じざるをえない日がけっこうあって、この冬が暖冬という話はどうなったんじゃーと言いたくなるよなあ。ところで、深夜の飲みの場で興味深い話が出た。それは、外気と室内の温度は差異がないほうが風邪をひきにくい、というもの。それ、本当か? そのとき、一緒に飲んでいた一人が、北海道では室内はがんがん暖房をいれるじゃないと言うと、発言者は、それと風邪を引くことは無縁なことで、北海道ぐらい寒いと暖房をいれないと室内でも死に至る危険性があるからであり、そうは氷点下にならない東京においては厚着していれば室内暖房なしでもなんら問題はないと力強くのたまう。うーむ。うがいの際、うがい薬は使わない方がいいというのは真実らしい(なので、帰宅時はずっとうがい薬を用いて喉をすすいていたが、昨年の12月からそれをやめている)し、間違った認識、習慣はいろいろあるからなー。それで、ちゃんとノー暖房を実践しているのかと発言者に問えば、リタイアした寒がりの父親と小さな子供と月並みな嫁がいるため、正しい方策の実行の達成にはあまりに障害が多すぎて……とのこと。そして、眼鏡をかけた彼は悲しい表情をして両手で顔を挟んだ。その顔つきは、デフ・スクールの『Don’t Stop the World』(Warner Bros.、1977年)のジャケット・カヴァーみたいだった。あのアルバム、ぼくの英国ロックのベスト10に入るかもしれない。
まず、丸の内・コットンクラブ(ファースト・ショウ)で、オーレ・ブールードという、ノルウェー人シンガー/ギタリストを見る。もともとエクストルというバンドで変種ヘヴィ・メタルをやっていたらしい貧相な外見の彼は、鍵盤、ギター、ベース、ドラムという平均的編成を持つバンドを伴ってパフォーマンスをした。
昨年に続く来日のようだが、ぼくはノー・マーク。ゆえに、38歳の彼のCD(全部で5作、個人リーダー作を出しているよう)を聞いたことはない。でも、ソウル・ミュージックを良質に昇華していそうな気がし、<北の国の、淡〜い、でも確かなソウル・ミュージックへの思慕>の様を確認したくて、ぼくは足を運んだ。そしたら、あららら……。乱暴に言ったら、この人、ノルウェーのエヂ・モッタ(2003年3月30日、2013年10月17日)と言いたくなるじゃん。だって、この日披露した曲の7割は、スティーリー・ダン大好きというノリが横溢、その簡素版という感じだったんだもの。
それが、よく出来ている。甲高い声も、彼のギターの演奏も、バンド各人の演奏もなかなかにいい感じで収まっている。結果、クククっと笑みがこみ上げてしょうがなかった。どれも本家の過剰さや執拗さを薄めたことをやっているのだが、気楽に、ちょいワザのある曲〜雰囲気を楽しむには十分と思ってしまった。そういえば、昔、フラ・リッポ・リッピというノルウェーのグループがいて、その1987年作はスティーリー・ダン〜西海岸大人ポップに接近しようとして、スティーリー・ダンの1/2であるウォルター・ベッカーに制作を委ねたことがあったが、彼らよりなんぼか作曲能力、巧みな咀嚼能力を、ブールードは持つと思う。ショウのオープナーとクローザーはわりとビートの強いロッキッシュな曲でそれだと少し“産業ロック臭”が出るが、サイドマンも米国西海岸奏者へ憧憬を滲ませるし、所謂AORと呼ばれる表現が好きな人は見て損はないはず。いかにもスカンジナヴィアン的な人の良さそうなところも好ましいし。
MCによれば、ブールードは1980年前後に3枚のアルバムを出した、AOR愛好者からはかなり崇められる西海岸ユニットのペイジズのファンでそのカヴァーもやったようだが、ぼくはペイジズをちゃんと聞いたことがないので、そこからの影響についてはよく分らない。でも、彼が1980年前後のアメリカ産AOR系表現に精通しているのは疑いがない。そして、この晩のショウに接するに、その手の愛好リスナーがちゃんとついているようだ。
▶過去の、エヂ・モッタ
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2003-3.htm
http://43142.diarynote.jp/201310181020496675/
一方、六本木・ビルボードライヴ東京(セカンド・ショウ)に出演した、1990年代ヒップホップ界の最たる敏腕DJ/トラック・メイカーであるDJプレミアもこんな人でこんなことやるのという、感じでワ〜。場内、満杯。ギリの時間に会場に着いたのだが、チェックイン窓口でかなりな列になっていて、ここでそういう光景に接するのは初めてか。
バンドを伴ってのもの。トランペットの黒田卓也(2012年2月18日、2012年9月13日、2013年2月15日、2014年5月25日)とトロンボーンのコーリー・キング(2013年2月15日、2013年6月4日、2014年5月25日、2014年8月7日)という、ホセ・ジェイムズ(2008年9月18日、2010年11月11日、2011年1月12日、2012年2月18日、2012年9月13日、2013年2月15日、2014年7月27日)がらみの二管とともに、白人ベーシストと黒人ドラマーを擁するカタチでパフォーマンス。このリズム隊、なんか見た目が格好いい。管の2人は共にキーボードも前に置き、時に弾いた。通称プリモさんはおおらかに巨漢、なり。力持ちに見える彼は、ターンテーブルとPCを前に置く。
DJプレミアの出した音を下敷きにプレイヤーたちは生音を加えるのだが、ぼくが事前に想像していたものとは違う。ジャジーな音選びという項目もあった彼だけに、生奏者と彼のDJイングとの丁々発止が楽しめるかと思ったら、それはなし。というのも、リズム音の上に楽器音が投げ出される局面もあった(ときに二管はソロのパートを与えられる場合も)が、基本はラップ付きトラック(それ、ギャング・スター曲をはじめ、どれも彼が制作関与したブツなのだろうか)が流され、それを補強する伴奏音として生音は付けられたから。
笑えたのは、プリモは時々キュルキュルやりつつ、のべつまくなし掛け声や扇情的な肉声を出し続けたこと。これが、野太く、デカい。傍若無人と言い方もあり? ずんずん、彼は平然とそれを続ける。結構こまかい音作りを志向するDJというイメージをなんとなく持っていたので、その様は、ぼくの意表をついた。そして、汚い言葉がいっぱい。あるときは、いいかぁマサー・ファッカーというのはいい言葉なんだァ、そらマザー・フッカー→マザー・ファッカー→マザー・ファッカー。てな感じで、客とコール&レスポンス。はは、笑いころげるしかないぢゃん。DJプレミアは俺様な、好漢でした。あ、それから、故グールーとのギャング・スターにはとっても深い思いを持っているのを直截に出していた。
本編最後の20分強はサポート奏者が引っ込んで、彼一人でパフォーマンス。で、自ら出すビートと野太い肉声の拮抗をがんがん噛ます。それだけでも、1時間ぐらいは持たせられそうとも思ったが、そうはしなかったあたりは、クールな人である表れか。そして、アンコールはまた5人でゴー! 全部で95分ぐらいやったかな。
▶過去の、黒田卓也
http://43142.diarynote.jp/201202200901013744/
http://43142.diarynote.jp/201209191239346073/
http://43142.diarynote.jp/201302181044151204/
http://43142.diarynote.jp/201405271755563079/
▶過去の、コリー・キング
http://43142.diarynote.jp/201302181044151204/
http://43142.diarynote.jp/201306060730086224
http://43142.diarynote.jp/201405271755563079/
http://43142.diarynote.jp/201408091058201133/
▶過去の、ホセ・ジェイムズ
http://43142.diarynote.jp/200809191051472579/
http://43142.diarynote.jp/201011140051119042/
http://43142.diarynote.jp/201101131336421886/
http://43142.diarynote.jp/201202200901013744/
http://43142.diarynote.jp/201209191239346073/
http://43142.diarynote.jp/201302181044151204/
http://43142.diarynote.jp/201408051020111821/
<今日の、”ドント・ストップ・ザ・ワールド“>
朝起きたら、天気予報どおり雪が降っていて、少し積もってもいる。じきに雨にはなったが終日寒い。先週あたりから、それなりに寒さを感じざるをえない日がけっこうあって、この冬が暖冬という話はどうなったんじゃーと言いたくなるよなあ。ところで、深夜の飲みの場で興味深い話が出た。それは、外気と室内の温度は差異がないほうが風邪をひきにくい、というもの。それ、本当か? そのとき、一緒に飲んでいた一人が、北海道では室内はがんがん暖房をいれるじゃないと言うと、発言者は、それと風邪を引くことは無縁なことで、北海道ぐらい寒いと暖房をいれないと室内でも死に至る危険性があるからであり、そうは氷点下にならない東京においては厚着していれば室内暖房なしでもなんら問題はないと力強くのたまう。うーむ。うがいの際、うがい薬は使わない方がいいというのは真実らしい(なので、帰宅時はずっとうがい薬を用いて喉をすすいていたが、昨年の12月からそれをやめている)し、間違った認識、習慣はいろいろあるからなー。それで、ちゃんとノー暖房を実践しているのかと発言者に問えば、リタイアした寒がりの父親と小さな子供と月並みな嫁がいるため、正しい方策の実行の達成にはあまりに障害が多すぎて……とのこと。そして、眼鏡をかけた彼は悲しい表情をして両手で顔を挟んだ。その顔つきは、デフ・スクールの『Don’t Stop the World』(Warner Bros.、1977年)のジャケット・カヴァーみたいだった。あのアルバム、ぼくの英国ロックのベスト10に入るかもしれない。
コメント