ブルーノート東京、セカンド・ショウ。ええええ〜、と思わせる公演であったかな。かなりポップ・シンガー然とした行き方を、この現代的にして多彩さもいろいろ抱えたジャズ歌手(2008年9月18日、2010年11月11日、2011年1月12日、2012年2月18日、2012年9月13日、2013年2月15日)は今回見せた。まあ、“回線”ですべてやりとりしたらしい椎名林檎との協調曲もボーナス曲として入っている新作『ホワイル・ユー・アー・スリーピング』(ブルーノート)もまたそういう傾向にあると言えるが、実演ではそこにあった“オルタナ性”をあまり出さない方向〜より凝らない素直なポップ・ソング的アプローチを取っているような感じがして、ぼくのなかではけっこう驚きのライヴ・パフォーマンスであったのだ。

 ジェイムズが生ギターを持って歌う曲もいくつもあり。より、非ジャジー度数があがる。そうした今回の行き方を鑑みてのことだろう、過去同行させていた側近トランペット奏者の黒田卓也(2012年2月18日、2012年9月13日、2013年2月15日、2014年5月25日)はバンドから外れ、かわりに新作にも入っていたギターのブラッド・アレン・ウィリアムズが入っていた。また、バックグラウンド・シンガーのタリア・ビッリグという女性もステージにいたが、印象の薄い人。いなくても、たいして変わらなかったんじゃないかな。

 実は、今回のジェイムズの実演でまず注視したいと思った事項が、キーボードのクリス・バワーズ(2013年2月15日)とドラマーのリチャード・スペイヴン(2012年2月18日、2013年2月15日)の演奏。だって、その両者は今年に入って<ポップ←→ジャズ>回路にあるあまりに秀逸なリーダー作をそれぞれに出しているんだもの。それは、しょうがない。が、彼らの演奏はまさしく伴奏という感じで、彼らが今回のバンド・メンバーである必然性はあまり出ない。新加入ギタリストのウィリアムズだけは短めながらそこそこソロのパートを与えられていたが、ぼくはそれにあまり惹かれなかった。それから、近年やはりジェイムズ・バンドに入っている電気ベース奏者のソロモン・ドーシーが一部歌う場面があったのだが、なかなか訴求力があった。声量とソウル度はジェイムズより勝っていたかにゃ。

 そうした実演に接していて、売れっ子ジャズ・ドラマーのブライアン・ブレイド(2000年12月6日、2001年8月3日、2002年8月25日、2004年2月9日、2012年1月16日、2012年3月15日、2014年2月12日、2014年4月14日)のワーキング・グループの通常ショウたる“フェロウシップ公演”(2008年9月4日、2011年5月12日、2012年5月22日)と、彼がギターを弾きながら歌うフォーキー歌ものプロジェクト“ママ・ローザ公演”(2009年7月20日)の大きな違いを、思い出した……?

 ラスト3曲の「トラブル」から、広がりを持たせる方向に出る。バワーズもどんどんソロ・スペースを与えられる。やっぱり、ぼくはこっちのほうが楽しめるな。しかし、全体的にポップっぽく進めつつも、ジェイムズは100分ぐらいはパフォーマンスしたのではないか。チャーミングに、生真面目に。あらあら、満腹感はけっこうありました。

▶過去の、黒田
http://43142.diarynote.jp/201202200901013744/
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▶過去の、ジェイムズとパワーズら
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▶過去の、ブレイド
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2000-12.htm
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http://www.myagent.ne.jp/~newswave/framepagelive.htm
http://43142.diarynote.jp/200402091738240000/
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<今日の、分析>
 パワーズには何日か前にインタヴューして、かなり感心。すごい明晰な人で、“世代の音”というのをとても意識している。とともに、メッセージの出し方にも自覚的な人。共感を持てる人としてジェイムズ・ブレイク(2011年10月12日、2013年6月4日)他を挙げつつ、「いろんな音楽に対してオープンでもあることにも共感を覚えるが、伝えるメッセージについてすごく意識的であるのがいい。それが僕と同じだと思う。小さなことよりも、長い目で俯瞰する感じで、大きな問題を音楽で伝えていこうとするアーティストを、ぼくは好きなんだ」。まあ、そんなこんなでとっても演奏陣に注視しちゃったせいもあり、今回途中でよりありゃりゃという心持ちになったのだろーな。
▶過去の、ブレイク
http://43142.diarynote.jp/201110161924242614/
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