ブラックスプロイテーションを代表する、往往にして音楽も担当する辣腕アフリカ系映画監督のメルヴィン・ヴァン・ピープルズの訃報が届いた。死因は不明、マンハッタンの自宅で亡くなったという。大学を出たあとに空軍に3年半入り、その後小説を書いたり短編映画を作ったりするようになる。中米や欧州で暮らしもしたりもしたようだが、その事実はサバけた生活観を映し出すか。一方、それは才を発揮しようとするアフリカ系が邪魔される米国の環境が導いたものでもあったようだ。
長編監督作「The Story of a Three-Day Pass」(1967年)は、自身のフランス語で書いた小説「La Permission」を元に起き、フランスで撮影されている。主演もしている1971年作「スウィート・スウィートバック 原題:Sweet Sweetback’s Baadasssss Song」は当時のブラック映画の金字塔的な作品とされている。のちに、それは自身の手によりステージ化もされた。それ以降は監督するものより、俳優として出演した映画のほうが多い。また、『Brer Soul』(A&M、1969年)を皮切りにサウンドラック主体ながら10作近い、質の高いR&B/ジャズ俯瞰統合型アルバムをリリース。E.W.&.Fがレコーディングに参加した先の「スウィート・スウィートバック」のサントラはスタックスから送り出された。多才な人で、通貨オプション・トレイダーをしたこともあったよう。
1990年代だと思うが、ぼくは俳優と映画監督をしている息子のマリオ・ヴァン・ピープルズにインタヴューしたことがあつた。媒体、なんだったけなあ? 彼は1957年、メキシコ生まれ。彼は長身かつ精悍で、なかなか格好よかった。
もう一つ訃報があり、懐かしいバンドを思い出してしまった。1980年前後のポスト・パンク/ニュー・ウェイヴ期にいかにもな、あっけらかん&風通しの良いビート・ミュージックを送り出した男女混合バンド(女性3人男性2人、2ギター、2ベース、ドラムという編成)であるデルタ5のシンガー/ギター奏者のジュルツ・セイルが亡くなったという。リーズで結成され、ラフ・トレイドから数枚のシングルと、クリサリス傘下レーベルから1枚のアルバムをリリース。それらは、今聞いてもウキウキしつつ、甘酸っぱい気持ちになれる。ドライなファンキー感覚も少し抱えた、いい意味での素人感も持つ彼女たちの表現はこの時期UK発ならではのもの。同じラフ・トレイドのザ・レインコーツなんかとともに愛好したなあ。そんな彼らは“ロック・アゲイント・レイシズム”に賛同するグループでもあった。彼女の生年月日、死亡日、死因などは発表されておらず、すぐに音楽からも離れたとも推測されるが、それもポスト・パンク期の一瞬の輝きという感じがして、違和感はない。享年60ぐらいだったのではないだろうか。大学の頃、そのスッコーンと抜けた表現に触れて得たサムシングは、今のぼくのどこかに生き続けていると思う。
夜は、普段ニューヨークに住む、ピアニスト/作編曲科の加藤真亜沙 ( 2021年9月19日)の実演を見る。丸ノ内・コットンクラブ、1日1回打ちのショウ。面白かった。なかなか、才能あるな。
奨学金を得て2009年に渡米しニュー・スクール大で学び、ケヴィン・ヘイズ(2016年12月6日、2017年2月7日、2018年9月6日、2019年12月16日)やアーロン・ゴールドバーグ(2011年7月4日、2012年6月8日、2013年4月1日、2014年5月15日、2015年2月4日、2017年11月30日)らに師事。その後、ジュリアード音楽院の修士過程にも進み、ケニー・バロン(2001年11月20日、2009年1月7日、2003年10月10日、2014年9月7日、2016年9月4日、2016年11月15日)にもついたという。公演表題に持ってきた『アンモーンの木』とは、彼女が2016年作のアルバム名(Somethin’ Cool発)で、同作はダグ・ワイス(2011年10月6日 )とダニエル・ドー(2014年1月21日、2015年5月14日、2019年9月13日)のリズム・セクションに、4管とギターと自分のピアノや歌(一部、アディッショナル歌手も入れる)を載せた内容だった。
この晩は、フリューゲル・ホーンやトランペットの広瀬未来 (彼が一部合図を出しているところがあり、まとめ役をしていたのか)、ソプラノ・サックス/フルート/アルト・サックスの吉本章紘 (2020年8月16日、2021年7月9日、2021年7月30日)、テナー・サックスの西口明宏(2016年7月21日、2019年1月21日、2021年7月3日、2021年9月19日)、トロンボーンの和田充弘 (2017年6月15日、2018年7月4日、2019年11月16日)、ダブル・ベース/エレクトリック・ベースの中林薫平、ドラムの小田桐和寛 (2021年3月29日)という、3リズム+4管にてショウは進められる。
披露したのはすべて加藤の曲だろうが、曲趣を引き立てるアレンジ方策にまず耳が向く。アルバムで示されるように4つの管楽器の絡みがいい感じ。なんか風の感覚を持つというか、はんなりしているのに流動的な感覚を孕むというか。なんか、弦楽四重奏の秀でたテイストを管4つで繰り広げているという説明の仕方もありか。かなり先鋭的であることをしていると思わせるのに、その総体はギスギスしないまろやかさのようなものを抱えているのは大きなポイントだ。トランペット以上にフリューゲル・ホーンが活躍する時間が長かったのも、その説明に沿うだろう。
へえそうなのと思ったのは、多くの曲のテーマ部で加藤はスキャット歌唱を加え、彩りを与えていたこと。それは差別化を測れるもので、絶対にあり。そして、彼女は自らのソロ(一部は右手のみで、シンセサイザーでソロを取る箇所もあった)や構成員のソロを思慮ありで組み込む。趣味良い。ソロを組み込まなくても、彼女なら即興の窓や秀でたジャズ機微を存分に感じさせるアンサンブルを出せるはずともぼくは頷いた。
旧作の表題を掲げつつ、演目は来月ニューヨークでするという新作レコーディングのための曲もいくつか演奏する。そういえば、ショウの後半は立ちの感覚と今っぽいバラけ感覚を持つドラム演奏が目立ったりもして、それは見事に今っぽいニューヨークのジャズ感覚と重なると思わせた。
▶︎過去の、加藤真亜沙
https://43142.diarynote.jp/202109200901226322/
▶︎過去の、ケヴィン・ヘイズ
http://43142.diarynote.jp/201612091513593556/
http://43142.diarynote.jp/201702090925559534/
https://43142.diarynote.jp/201809081804431343/
https://43142.diarynote.jp/201912170840218127/
▶過去の、アーロン・ゴールドバーグ
http://43142.diarynote.jp/?day=20110704
http://43142.diarynote.jp/?day=20120608
http://43142.diarynote.jp/201304031026406106/
http://43142.diarynote.jp/201405171309186867/
https://43142.diarynote.jp/201502051100298160/
▶過去の、ケニー・バロン
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/LIVE-2001-11.htm
http://43142.diarynote.jp/200901080850146753/
http://43142.diarynote.jp/?day=20090607
http://43142.diarynote.jp/201409100930206205/
http://43142.diarynote.jp/201609201052518160/
https://43142.diarynote.jp/201712011129041106/
▶︎過去の、ダグ・ワイス
https://43142.diarynote.jp/201110091258307349/
▶︎過去の、ダニエル・ドー
http://43142.diarynote.jp/201401221432209419/
https://43142.diarynote.jp/201505150911423384/
https://43142.diarynote.jp/201909141701525366/
▶︎過去の、西口明宏
https://43142.diarynote.jp/201607221000152412/
https://43142.diarynote.jp/201901231045028294/
https://43142.diarynote.jp/202107041453546495/
https://43142.diarynote.jp/202109200901226322/
▶︎過去の、和田充弘
http://43142.diarynote.jp/201706190920527378/
https://43142.diarynote.jp/201807050952089343/
https://43142.diarynote.jp/201911181002427435/
▶︎過去の、小田桐和寛
https://43142.diarynote.jp/202103300808386569/
<今日の、サーヴィス>
3度目の正直……。今年の1月に予定されていたのが延期、また5月に再予定されたものがまた延期になっての、本日の公演であるという。入場者には、本人一部手書きのカードを入場時に配る。そこには、1曲聞けるコードも載せられていた。近くあるレコーディングが首尾よく進みますように。とっても、出来が楽しみだ。
長編監督作「The Story of a Three-Day Pass」(1967年)は、自身のフランス語で書いた小説「La Permission」を元に起き、フランスで撮影されている。主演もしている1971年作「スウィート・スウィートバック 原題:Sweet Sweetback’s Baadasssss Song」は当時のブラック映画の金字塔的な作品とされている。のちに、それは自身の手によりステージ化もされた。それ以降は監督するものより、俳優として出演した映画のほうが多い。また、『Brer Soul』(A&M、1969年)を皮切りにサウンドラック主体ながら10作近い、質の高いR&B/ジャズ俯瞰統合型アルバムをリリース。E.W.&.Fがレコーディングに参加した先の「スウィート・スウィートバック」のサントラはスタックスから送り出された。多才な人で、通貨オプション・トレイダーをしたこともあったよう。
1990年代だと思うが、ぼくは俳優と映画監督をしている息子のマリオ・ヴァン・ピープルズにインタヴューしたことがあつた。媒体、なんだったけなあ? 彼は1957年、メキシコ生まれ。彼は長身かつ精悍で、なかなか格好よかった。
もう一つ訃報があり、懐かしいバンドを思い出してしまった。1980年前後のポスト・パンク/ニュー・ウェイヴ期にいかにもな、あっけらかん&風通しの良いビート・ミュージックを送り出した男女混合バンド(女性3人男性2人、2ギター、2ベース、ドラムという編成)であるデルタ5のシンガー/ギター奏者のジュルツ・セイルが亡くなったという。リーズで結成され、ラフ・トレイドから数枚のシングルと、クリサリス傘下レーベルから1枚のアルバムをリリース。それらは、今聞いてもウキウキしつつ、甘酸っぱい気持ちになれる。ドライなファンキー感覚も少し抱えた、いい意味での素人感も持つ彼女たちの表現はこの時期UK発ならではのもの。同じラフ・トレイドのザ・レインコーツなんかとともに愛好したなあ。そんな彼らは“ロック・アゲイント・レイシズム”に賛同するグループでもあった。彼女の生年月日、死亡日、死因などは発表されておらず、すぐに音楽からも離れたとも推測されるが、それもポスト・パンク期の一瞬の輝きという感じがして、違和感はない。享年60ぐらいだったのではないだろうか。大学の頃、そのスッコーンと抜けた表現に触れて得たサムシングは、今のぼくのどこかに生き続けていると思う。
夜は、普段ニューヨークに住む、ピアニスト/作編曲科の加藤真亜沙 ( 2021年9月19日)の実演を見る。丸ノ内・コットンクラブ、1日1回打ちのショウ。面白かった。なかなか、才能あるな。
奨学金を得て2009年に渡米しニュー・スクール大で学び、ケヴィン・ヘイズ(2016年12月6日、2017年2月7日、2018年9月6日、2019年12月16日)やアーロン・ゴールドバーグ(2011年7月4日、2012年6月8日、2013年4月1日、2014年5月15日、2015年2月4日、2017年11月30日)らに師事。その後、ジュリアード音楽院の修士過程にも進み、ケニー・バロン(2001年11月20日、2009年1月7日、2003年10月10日、2014年9月7日、2016年9月4日、2016年11月15日)にもついたという。公演表題に持ってきた『アンモーンの木』とは、彼女が2016年作のアルバム名(Somethin’ Cool発)で、同作はダグ・ワイス(2011年10月6日 )とダニエル・ドー(2014年1月21日、2015年5月14日、2019年9月13日)のリズム・セクションに、4管とギターと自分のピアノや歌(一部、アディッショナル歌手も入れる)を載せた内容だった。
この晩は、フリューゲル・ホーンやトランペットの広瀬未来 (彼が一部合図を出しているところがあり、まとめ役をしていたのか)、ソプラノ・サックス/フルート/アルト・サックスの吉本章紘 (2020年8月16日、2021年7月9日、2021年7月30日)、テナー・サックスの西口明宏(2016年7月21日、2019年1月21日、2021年7月3日、2021年9月19日)、トロンボーンの和田充弘 (2017年6月15日、2018年7月4日、2019年11月16日)、ダブル・ベース/エレクトリック・ベースの中林薫平、ドラムの小田桐和寛 (2021年3月29日)という、3リズム+4管にてショウは進められる。
披露したのはすべて加藤の曲だろうが、曲趣を引き立てるアレンジ方策にまず耳が向く。アルバムで示されるように4つの管楽器の絡みがいい感じ。なんか風の感覚を持つというか、はんなりしているのに流動的な感覚を孕むというか。なんか、弦楽四重奏の秀でたテイストを管4つで繰り広げているという説明の仕方もありか。かなり先鋭的であることをしていると思わせるのに、その総体はギスギスしないまろやかさのようなものを抱えているのは大きなポイントだ。トランペット以上にフリューゲル・ホーンが活躍する時間が長かったのも、その説明に沿うだろう。
へえそうなのと思ったのは、多くの曲のテーマ部で加藤はスキャット歌唱を加え、彩りを与えていたこと。それは差別化を測れるもので、絶対にあり。そして、彼女は自らのソロ(一部は右手のみで、シンセサイザーでソロを取る箇所もあった)や構成員のソロを思慮ありで組み込む。趣味良い。ソロを組み込まなくても、彼女なら即興の窓や秀でたジャズ機微を存分に感じさせるアンサンブルを出せるはずともぼくは頷いた。
旧作の表題を掲げつつ、演目は来月ニューヨークでするという新作レコーディングのための曲もいくつか演奏する。そういえば、ショウの後半は立ちの感覚と今っぽいバラけ感覚を持つドラム演奏が目立ったりもして、それは見事に今っぽいニューヨークのジャズ感覚と重なると思わせた。
▶︎過去の、加藤真亜沙
https://43142.diarynote.jp/202109200901226322/
▶︎過去の、ケヴィン・ヘイズ
http://43142.diarynote.jp/201612091513593556/
http://43142.diarynote.jp/201702090925559534/
https://43142.diarynote.jp/201809081804431343/
https://43142.diarynote.jp/201912170840218127/
▶過去の、アーロン・ゴールドバーグ
http://43142.diarynote.jp/?day=20110704
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https://43142.diarynote.jp/201502051100298160/
▶過去の、ケニー・バロン
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/LIVE-2001-11.htm
http://43142.diarynote.jp/200901080850146753/
http://43142.diarynote.jp/?day=20090607
http://43142.diarynote.jp/201409100930206205/
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▶︎過去の、ダグ・ワイス
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▶︎過去の、ダニエル・ドー
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▶︎過去の、西口明宏
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https://43142.diarynote.jp/201901231045028294/
https://43142.diarynote.jp/202107041453546495/
https://43142.diarynote.jp/202109200901226322/
▶︎過去の、和田充弘
http://43142.diarynote.jp/201706190920527378/
https://43142.diarynote.jp/201807050952089343/
https://43142.diarynote.jp/201911181002427435/
▶︎過去の、小田桐和寛
https://43142.diarynote.jp/202103300808386569/
<今日の、サーヴィス>
3度目の正直……。今年の1月に予定されていたのが延期、また5月に再予定されたものがまた延期になっての、本日の公演であるという。入場者には、本人一部手書きのカードを入場時に配る。そこには、1曲聞けるコードも載せられていた。近くあるレコーディングが首尾よく進みますように。とっても、出来が楽しみだ。
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