六本木・ビルボードライブ東京で、ニューオーリンズのブラック・インディアンのチーフ筋のトランペッターのクリスチャン・スコット(2008年7月23日、2008年9月10日、2009年1月31日、2009年9月15日、2010年9月3日、2011年12月17日、2015年10月8日、2016年11月1日、2017年10月31日)のカルテットを見る。長いMCを介し、自分はいかに新しいサウンドを求めているかを力説。また、メンバー紹介も実に丁寧に長くそれぞれを紹介。そういう人だったけか?

 アルト・サックスのローガン・リチャードソン(2016年2月3日、2017年6月7日、2017年10月31日)、ピアノのローレンス・フィールズ(2009年6月15日、2010年7月24日、2015年10月8日、2016年11月1日)、ポーランド人ダブル・ベース奏者のマックス・ミュシャ、ドラムのコーリー・フォンヴィル(2016年11月1日、2017年10月31日)という陣容で、かつてと違いやはりギターレスのクインテットでことに当たる。それ、ベーシスト以外は2019年新作『Ancestral Recall』(Stretch)の参加者ですね。同作にはポエトリー・リーディングの有名パフォーマーであるソウル・ウィリアムス(1999年12月13日)が4曲参加して、スコットの物言いを求めんとする表現を広げていて来日同行を期待したかったが、それは叶わず。スコットはかつての米国型ヤンキー調ファンションから一転、黒い基調の意味ありげな不思議な格好し、翔んだ髪型をしている。それは、リチャードソンも同様だ。

 その管奏者の足元にはエフェクター・ボードが置かれ、スコットはマイクを使い分ける場合もあったが、2曲を除いてはわりと素直な音色使いを見せた。それは、リチャードソンも同じ。1曲目だけプリセット音が併用されたが、何にせよその総体からは、ジャズという様式と繋がった今のトライヴ・ミュージックを送り出したいという意思が浮き上がる。アルバムがそうであったようにパーカッション奏者がそこにいれば、もっとその意図は鮮やかに浮きあがったに違いない。

▶過去の、クリスチャン・スコット
http://43142.diarynote.jp/200807241546500000/
http://43142.diarynote.jp/?day=20080910
http://43142.diarynote.jp/200902030206339619/
http://43142.diarynote.jp/?day=20100903
http://43142.diarynote.jp/?day=20100903
http://43142.diarynote.jp/201112201159168538/
http://43142.diarynote.jp/201510091112494150/
http://43142.diarynote.jp/201611030803017474/
https://43142.diarynote.jp/201711020709222163/
▶過去の、ローガン・リチャードソン
http://43142.diarynote.jp/?day=20160203
http://43142.diarynote.jp/?day=20170607
https://43142.diarynote.jp/?day=20171031
▶︎過去の、コリー・フォンヴィル
http://43142.diarynote.jp/201611030803017474/
https://43142.diarynote.jp/?day=20171031
▶︎過去の、ソウル・ウィリアムズ
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/december1999live.htm

 その後は、丸の内・コットンクラブで、在米サンパウロ人二人と米国人の3人がゆったり重なる公演を見る。ヴォーカルとパーカッションのルシアナ・ソウザ(2012年12月5日)、フル・アコースティックの電気ギターを弾くシコ・ピニェイロ (2012年6月21日、2018年10月5日)、コントラバスの スコット・コーリー(2012年3月15日、2012年6月4日、2015年9月27日、2018年12月11日)という陣容。その顔わせは、彼女の2018年新作『The Book Of Longing』(Sunnyside。渡米後なんだかんだ順調にリーダー作を出していて、通算15作目ぐらいになるか)のレコーディング・メンバーと同じですね。ラリー・クライン制作のそこではレナード・コーエン曲を4つも取り上げていたが、つきるところ同作が目指すものはブラジルならではの綾を介した透明感のあるシンガー・ソングライター的世界といったものであると思う。

 3人が適切に重なるパフィーマンスは、まさに墨絵の如し。もちろん、新作で手にしていた味わいは出すのだが、そこはよりほんのりとブラジル味が出てくる。実はマデリン・ペルー(2005年5月10日、2006年8月24日、2009年5月18日、2015年9月15日、2019年3月19日)の新作に打楽器で参加していたりもする彼女は、歌いながら終始スネアやシンバルをブラシで優しく叩き、さらにパンデイロやトライアングルやカリンバを手にしながら歌う曲もあった。もちろん、スキャットを入れる場合もありますね。全然下手ではないが歌だけだと超絶とは言い難い彼女だが、その打楽器を含めたあり様はとてもミュージシャン度数が高く、いいと思わせる。本編最後に歌ったトム・ジョビンの「3月の雨」は英語詞で歌っていた。

▶︎過去の、ルシアナ・ソウザ
https://43142.diarynote.jp/201212131141531884/
▶︎過去の、シコ・ピニェイロ
http://43142.diarynote.jp/201207031311348277/
https://43142.diarynote.jp/201810090956533250/
▶過去の、スコット・コリー
http://43142.diarynote.jp/201203161146266803/
http://43142.diarynote.jp/201206110916017268/
https://43142.diarynote.jp/201510021129591335/

<今日の、あれえ>
 名前を名乗ったあと、「音楽ジャーナリストですが、あなたの大ファンです」と言い、その後に「ワズ(ノット・ワズ)以来から」と付け足すと、すんごく嬉しそうな顔をした。なんだかんだ、彼が世に出たワズ(ノット・ワズ)には思い入れ持っているんだな。
 ブルーノート・レコード社長のドン・ワズ(2013年2月15日、2019年6月12日
)に取材で会った。とってもピースフルで、これで生き馬の目を抜く業界の企業のトップが務まるのかなと感じさせちゃう人。見てくれはイミグレーションで足止めを食らいそうな御仁であり(普段は濃い黒のサングラスをしているが、サングラスをはずしたときがあって、とても人懐こい目つきをしていた)、ジャケットにはグレイトフル・デッドのバッジをつけていたりもする彼は、ある意味人たらしの才能があるかもしれぬ←それ、優れたプロデューサーの必要条件ね。彼、社長業をこなしつつ(こんなに長続きしちゃうなんて、ぼくは想像もつかなかった)、一方では他社所属のアーティストのプロデュースをしたり、サントラ作ったり、ベーシストとしてツアーに出たりもしているわけだが、そこら辺どういう契約になっているのか。帰り際、別の人と話していたら、ドン・ワズがさっと寄ってきて名刺を出してくる。おお、如才ない会社員? あとでそれをちゃんと見たら、メール・アドレスはユニヴァーサル・ミュージックのもの(ブルーノートはユニヴァーサル傘下にある)だったが、キャピトル・ミュージック・グループと書かれたロゴもでっかく入っていて、住所はハリウッドだった。え、今彼ってNYじゃなくてLAに住んでいるの?

▶︎過去の、ドン・ワズ
http://43142.diarynote.jp/201302181044151204/
https://43142.diarynote.jp/201906151230594715/

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