まず、渋谷・クラブクアトロ。フジ・ロックに出演した2組が出て、<“フジ・ロック”アフター・パーティ>ともうたわれている。最初に出てきたNYを拠点とするというザ・ウェスタン・キャラヴァンは、はあアメリカ白人は呑気だねえ、なぞという感想を持たせた。シンガー、二人のフィドル、ペダル・スティール、ギター、ベース、ドラムという編成のおじいちゃんが入った人たちが中心となる7人組で、ロカビリーとカントリーが重なったことを実演ではやる。格好ともども、waspが集うバー・バンドという趣が大ありだった。

 その後に、リアム・オメンリー(1999年9月23日、2000年10月3日、2001年7月28日、2009年5月20日、2011年12月6日、2011年12月7日、2011年12月10日、2011年12月12日、2014年12月4日、2014年12月6日)率いるホットハウス・フラワーズが出てくる。ギターのフィアクナ・オブレナン、ブズーキのピーター・オトゥール、ダブル・ベースのマーティン・ブランスデン、ドラムのデイヴ・クラークという陣容による。

 まずは、オメンリーのピアノ弾き語りから始まったのだが、もうそれだけでぼくは持っていかれる。澄んでいるのに力みなぎり、スピリチュアルな気がすぐに会場を満たす。なんか、歌声の塩辛い気味の出し方はどこかフラメンコのそれと繋がる部分も感じたか。そして、バンド音が自然にうねりまくる(バンド員の実直なコーラスもまたいいんだ!)2曲目でぼくは完全に降参。なんて素晴らしいライヴなんだあ、こりゃ今年のベスト1クラスの逸ショウではないかという手応えを得つつ、泣きそうになる。ちょい涙腺が刺激されるような感覚を得たのは、マジ久しぶり。オメンリーの凄さは十分に認知していたはずだが、アイリッシュ音楽とソウル音楽を綱引きさせる熟成ロック・バンドたる今回の味わいはちょい別格。え〜ん。

 だが、翌日締め切りの毎日新聞ライヴ評を書くことになっているシェウン・クティ公演を見なくてはならず、すぱっと30分で絶世の好ライヴを見るのを切り上げる。ギリまで見ていたら、引き込まれ席を立てなくなるのを恐れてしまった。でも、ちょい見だけでも、その多大な感興はぼくのなかに宿り続けた。

▶過去の、リアム・オメンリー
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/september1999live.htm
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2000-10.htm
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2001-7.htm(フジ・ロック28日、ホット・ハウス・フラワーズ)
http://43142.diarynote.jp/?month=200905
http://43142.diarynote.jp/201112171632304826/
http://43142.diarynote.jp/201112171633334584/
http://43142.diarynote.jp/?day=20111210
http://43142.diarynote.jp/201112191500441741/
http://43142.diarynote.jp/201412151250144917/
http://43142.diarynote.jp/201412221527313725/

 そして、南青山・ブルーノート東京で、シェウン・クティ(2007年10月25日、2009年7月26日、2012年7月27日)を見る。ヴォーカル、アルト・サックス、キーボードを担当するリーダーに加え、アディドイン・アディフォラリン(トランペット)、オラディメジ・アキネリ(トランペット)、アデボワレ・オスンニブ(バリトン・サックス)、オジョ・サミュエル・デイヴィッド(テナー・サックス)、デイヴィッド・オバニエド(ギター)、オルワグベミガ・アレイド(ギター)、カンレ・ジャスティス(ベース。小柄で根暗な感じなのに、派手なボディのベースを弾く様はモノニオン〜2017年9月1日、2018年3月22日、2018年7月19日〜を思い出させる)、シーナ・ニラン・アビオドゥン(ドラムス)、コーラ・オナサンヤ(コンガ)、ウェイル・トリオラ(パーカッション。アフロ・ビートの要となるアクセント音を終始送り出す)、オーコン・イヤンバ(シェケレ)、ジョイ・オパラ(ダンス、ヴォーカル)、イヤボ・アデニラン(ダンス、ヴォーカル)という陣容で実演は持たれた。この時期の、大型ミュージシャンの東京公演というと、フジ・ロック流れと思ってしまうが、彼らの場合はそうではあらず。ここのみの演奏のため来日した。本当は、出るつもりで大まかな予定を立ていたら、選から漏れてしまったのか? 良くわからないが、ちゃんとした編成の実演を見ることができてうれしい。

 コンガ奏者まず一人で出てきて、一人づつ奏者や女性ダンサーをステージに呼び込む。彼らも、ちゃんとした大きな編成できていますよという事実を示したかったのか。面々は30代奏者が大半であるように見受けられたが、その見た目だけでつかみはOKとなっちゃう。2曲目からシェウン・クティは登場する。父親フェラ・クティの流儀を受け継ぐシェウン一座の公演は、父親曲「パンサ・パンサ」を除いては、2作続投のロバート・グラスパー(2007年10月3日、2009年4月13日、2009年12月19日2010年12月16日、2012年6月12日、2013年1月25日、2014年8月20日、2015年6月8日、2016年12月20日、2017年6月5日)関与の2018年作『ブラック・タイムズ』からの曲をやった。そして、それらを披露するパフォーマンスまさに“太陽”と“北風”を併せ持つと書けるもの。意外だったのは、クティが親日であることをMC でアピールしていたこと。この晩のオレは“アフロ・サムライ”だ、とも言っていたな。何気に気さく、ブルーノート東京は毎度出演者に合わせたスペシャル・カクテルを公演ごとに提供しているが、この晩シェウンはそのカクテルを頼んだ客から差し出されるものを何杯も口をつけもした。

▶過去の、シェウン・クティ
http://43142.diarynote.jp/200711121022550000/
http://43142.diarynote.jp/?day=20090726
http://43142.diarynote.jp/?day=20120727
▶︎過去の、モノニオン
http://43142.diarynote.jp/201709071307037021/
http://43142.diarynote.jp/201803231446465272/
http://43142.diarynote.jp/201807210953487881/
▶過去の、ロバート・グラスパー
http://43142.diarynote.jp/200710121727100000/
http://43142.diarynote.jp/200904150840164356/
http://43142.diarynote.jp/201001051625155901/
http://43142.diarynote.jp/201012171104366095/
http://43142.diarynote.jp/201206141342549869/
http://43142.diarynote.jp/201301270742196778/
http://43142.diarynote.jp/201408210931581467/
http://43142.diarynote.jp/201506070919133558/
http://43142.diarynote.jp/201506091124003170/
http://43142.diarynote.jp/201612211059578863/
http://43142.diarynote.jp/201706061756141899/
http://43142.diarynote.jp/201801042046591963/

<今日は、カリスマの日>
 二人とも、カリスマを持つ。オメンリーは無精髭かつ髪の毛ボサボサ、しかも着ている不思議な服のせいで、尊師みたいと一瞬思った。ごめんよ〜。クティは例により、終盤上半身ハダカになる。相変わらず、引き締まっている。前者は福島慰問に同行し一緒の宿に泊まったり(いろんな意味で、彼は自然体の超人ナリ)、後者は最初の来日となったフジ・ロック会場でしっかりとインタヴューできたりして(おぼっちゃんぽいおおらかさを感じたな)、改めて彼らの素晴らしい実演に触れると、身に余る僥倖であったと思うことしきり。クティは2008年のデビュー作の日本盤解説を書いていたりもするんだよなあ。
 ところで、この晩は火星が15年ぶりに大接近すると報じられていた日。シェウン・クティを見た後、夜空をながめなきゃと思っていたのだが、スッコーンと忘れる。珍しく涼しかったので、渋谷まで歩いて飲み屋に流れたのにも関わらず……。

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