ジャズ・トランペッターのキーヨン・ハロルド(2014年1月10日、2015年8月18日、2016年1月25日、2017年6月5日)の久しぶりに出したアルバム『ミュジシャン』(レガシー/ソニー)はスケールの大きな傑作だ。2017年リリース盤のなかでトップ級にできのいいジャズと繋がった総花型な内容をものにしていると思う。ピアノと電気ピアノのシェドリック・ミッチェル(2015年11月17日)、ギターのニア・フェルダー、ベースのバーニス・トラヴィス(2013年2月8日、2013年3月19日、2014年5月11日、2014年8月20日、2015年6月4日、2015年6月8日)、ドラムのチャールズ・ヘインズという陣容でことにあたる。多くはアルバム録音参加者だ。丸ノ内・コットンクラブ、ファースト・ショウ。

 最初にハロルド以外の演奏陣が出てきて音を出しはじめ、そのなか千両役者登場という感じで、見栄を切るように本人が登場。少し、笑えた。パっと見た目はただのおっさん然としていて、もう少し格好に気を使って欲しかった。

 あたまの20分ぐらいは、復帰後の(つまり、輝きを失った)マイルス・デイヴィスと少し近いサウンドを開く。ただし、大きく異なるのは、ヘインズのドラミングの存在。これは、今のうねりを持つものであり、彼の演奏を核に表現総体が動いていく感じもある。ヘインズさん、そんなに知られる人ではないが、いいドラマー。また、ロバート・グラスパー(2007年10月3日、2009年4月13日、2009年12月19日2010年12月16日、2012年6月12日、2013年1月25日、2014年8月20日、2015年6月8日、2016年12月20日、2017年6月5日)・エキスペリメントの電気ベーシストであるバーニス・トラヴィスも過去見た中で一番グツグツした演奏を送り出し、大きく頷く。

 ピアノを中心に弾くシェドリック・ミッチェルは今のヒップホップ/R&B系録音セッションを中心にケニー・ギャレット(2001年6月14日、2003年8月19日、2015年4月10日)やロン・マイルズ(2005年6月9日)などジャズ・セッションに名前が見られる御仁だが、なるほどジャズも現代R&Bも無理なく享受できている世代であることを示す演奏を見せる。そして、それは他の奏者もまったくもってそうであるのだが。唯一の白人であるニア・フェルダーが一番フツーな演奏者に思えたが、ハロルドは気に入っているようだ。

 ハロルドは朝顔につけたピックアップで音を拾い、けっこうソロを披露する。やっぱり、ちゃんとソロを取れなきゃね。かと思えば、2曲においては歌も歌い(それほど上手ではない)、バンド表現の間口を広げようとする。終盤の2曲はトラヴィスがダブル・ベースを手にし(ヘインズも4ビートを普通に叩く)、その総体はよりジャズ色を増すが、アコースティック・ジャズ←→ソウル・ジャズの無理ない行き来は現在の働き盛りのジャズ系奏者の美点を指し示す。とともに、やはりジャズをちゃんと知っている奏者は何をやろうと強いと皮膚感覚で知らせるものだった。アンコールで、ザ・ビートルズの「シーズ・リーヴィング・ホーム」の結構変えたカヴァーも聞かせた。

▶過去の、キーヨン・ハロルド
http://43142.diarynote.jp/201401161534392423/
http://43142.diarynote.jp/201508200741137207/
http://43142.diarynote.jp/201601260728484520/
http://43142.diarynote.jp/201701051022179600/ 映画
▶︎過去の、シェドリック・ミッチェル
http://43142.diarynote.jp/201511181203116234/ リズ・ライト
▶︎過去の、ケニー・ギャレット
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2001-6.htm マーカス・ミラー
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2003-8.htm マーカス・ミラー
http://43142.diarynote.jp/201504131108504171/
▶︎過去の、ロン・マイルズ
http://43142.diarynote.jp/200506120644360000/
▶過去の、ロバート・グラスパー
http://43142.diarynote.jp/200710121727100000/
http://43142.diarynote.jp/200904150840164356/
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http://43142.diarynote.jp/201012171104366095/
http://43142.diarynote.jp/201206141342549869/
http://43142.diarynote.jp/201301270742196778/
http://43142.diarynote.jp/201408210931581467/
http://43142.diarynote.jp/201506070919133558/
http://43142.diarynote.jp/201506091124003170/
http://43142.diarynote.jp/201612211059578863/
http://43142.diarynote.jp/201706061756141899/
http://43142.diarynote.jp/201801042046591963/
▶過去の、バーニス・トラヴィス
http://43142.diarynote.jp/201302091341485664/
http://43142.diarynote.jp/201303221327416224/
http://43142.diarynote.jp/201405121521477969/
http://43142.diarynote.jp/201301270742196778/
http://43142.diarynote.jp/201506070919133558/
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http://43142.diarynote.jp/201706061756141899/

<昨日の、R.I.P.>
 昨年も来日し勇姿を見せてくれたデニス・エドワーズ(2009年11月8日、2013年8月18日、2017年3月20日)が、1日にシカゴの病院で髄膜炎の合併症でお亡くなりになった。74歳、昨年5月に発症したという。若々しいルックスを持ち続けた魅惑のテンダー・ヴォイスの持ち主でした。
▶︎過去の、デニス・エドワーズ/ザ・テンプテーションズ・レヴュー
http://43142.diarynote.jp/200911101136006646/
http://43142.diarynote.jp/201308191407221107/
http://43142.diarynote.jp/201703211232135720/
 それから、1月に来日したばかりのオールラウンドなドラマーのリオン・ンドゥグ・チャンスラー(2018年1月5日)が、65歳でお亡くなりになったという報も届けられた。死因や亡くなった日時などは明らかにされていないが、MJ「ビリー・ジーン」のドラマーという形容はおおくの報道に共通している。「安らかに。僕に道を示してくてありがとう」とトゥイートしたのは、後進のジャスティン・ブラウン(2012年2月22日、2013年3月19日、2017年4月27日)だ。簡素なほうが思いはつたわるかも。
▶︎過去の、リオン・ンドゥグ・チャンスラー
http://43142.diarynote.jp/201801061716036258/
▶︎過去の、ジャスティン・ブラウン
http://43142.diarynote.jp/?day=20120222
http://43142.diarynote.jp/?day=20130319
http://43142.diarynote.jp/201704280745098662/

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