この日はブラジル音楽とつながる、二つのライヴを見る。

 まず、4度目の来日となるシンガーの娘とピアニストの母を中央に置く、ジャズ・カルトット(2013年9月7日、2014年9月27日、2015年9月22日)を南青山・ブルーノート東京で見る。ベーシストもドラマーも過去と同様、ライヴの持って行き方は過去と重なるが、シンガーのデボラってこんなに前に出ていたっけ。もう、スキャットかましまくり。母ダニのピアノ・ソロの量は減じていたはずだ。誇張して書けば、歌いっぱなし。難しいライン取りの連続は音程の不安定さ導き、歌唱パートが長い今回はさすがそれについては少し気になった。

 4度目となると新鮮さはさすがに薄れるものの、ブラジルの天衣無縫さとジャズの自由闊達さをこんなに胸ときめく形で交錯させることができる存在もそうはいないだろうとはやはり思う。そんな彼女たちは時に有名ポップ曲カヴァーもやるが、そのアレンジにもいたく感激しちゃう。今回はスティーヴィー・ワンダー(2005年11月3日、2010年8月8日、2012年3月5日)の「サー・デューク」とニルヴァーナの「スメルズ・ライク・ティーン・スピリット」を披露。特に前者は惚れ惚れしちゃう聞き味で、ワンダー本人も聞いたら、ジャズもブラジル音楽も好きな彼でもあるし、目茶気にいるだろうと確信する。

 デボラは旦那のドラマーのチアゴ・ハベーロとの間に娘を授かっていて、まだ1歳未満と思われる娘のヒタを同行させていた。本編の締めの曲はその娘を題材にした「サンバ・プラ・ヒタ」。最後は無伴奏のもと4人で歌い、そのままステージから楽屋に引っ込む。と、書くとどうってことないが、それもとても良かった。

▶過去の、ダニ&デボラ・グルジェル・クアルテート
http://43142.diarynote.jp/201309161507226186/
http://43142.diarynote.jp/201409291720019557/
http://43142.diarynote.jp/201509231115245724/
▶過去の、スティーヴィー・ワンダー
http://43142.diarynote.jp/200511130015240000/
http://43142.diarynote.jp/201008261618276388/
http://43142.diarynote.jp/201203062006429595/

 その後は、渋谷・JZ Bratでブラジル音楽の機微をしなやかに取り入れるヴォーカリストのTOYONO (1999年6月3日、2007年8月23日、2008年1月31日、2009年6月12日、2009年9月26日、2009年12月18日、2010年2月23日、2010年12月22日、2014年7月23日、2015年1月10日、2015年6月17日)、ギターの竹中俊二(2007年8月23日、2008年1月31日、2009年6月12日、2009年9月26日、2009年12月18日、2010年2月23日、2010年12月22日、2014年7月23日、2015年1月10日、2015年6月17日)のライヴをセカンド・ショウから見る。

 彼女のキャリアをくくるような新作『黒髪のサンバ』(ビクター)リリースをフォロウするもの。鍵盤の渡辺剛、ベースの岡雄三、ドラムの宮川剛、ヴァイオリンのクラッシャー木村、チェロの柏木広樹、リードのグスタヴォ・アナクレート、チェロの柏木広樹(2015年6月17日)、パーカッションの石川智という面々がサポートした。

 ポル語歌詞と日本語歌詞曲を違和感なく、自分の歌としてとして披露。楽曲アレンジも技あり、ヴァイオリン、チェロ、ソプラノ・サックスという3つのアンサンブルって結構いい感じなのだな。ブラジルや日本の有名曲カヴァーもオリジナルも、いろんなリズム設定も、悠々時にお茶目でもある、声の伸びの余白を持つヴォーカルは生気あり。ブラジル、日本、コンテンポラリー・ポップ感覚という3極の中で自在に舞う彼女のようなシンガーに触れると、日本人による大人のヴォーカル表現も裾野が広いとも思わせられる。

▶過去の、TOYONO
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/livejune.htm エスピリト
http://43142.diarynote.jp/200708270314500000/
http://43142.diarynote.jp/200802051630130000/
http://43142.diarynote.jp/200906160733018341/
http://43142.diarynote.jp/200909291504366263/
http://43142.diarynote.jp/201001051624161036/
http://43142.diarynote.jp/201002280940361567/
http://43142.diarynote.jp/201012241100592422/
http://43142.diarynote.jp/?day=20140723
http://43142.diarynote.jp/201501131341317551/
http://43142.diarynote.jp/201506181125125625/
▶過去の、竹中俊二
http://43142.diarynote.jp/200708270314500000/
http://43142.diarynote.jp/200802051630130000/
http://43142.diarynote.jp/200906160733018341/
http://43142.diarynote.jp/200909291504366263/
http://43142.diarynote.jp/201001051624161036/
http://43142.diarynote.jp/201002280940361567/
http://43142.diarynote.jp/201012241100592422/
http://43142.diarynote.jp/?day=20140723
http://43142.diarynote.jp/201501131341317551/
http://43142.diarynote.jp/201506181125125625/

<先週の、土曜日>
 二つのライヴに触れ、ふと“ぼくのなかのブラジル”という項目の引き出しを開けてみる。前にもここで書いたことがあるが、小学生のときには、人工都市ブラジリアへの興味が俄然あった。少年マガジンかなんかの漫画週刊誌のカラー・グラビアで紹介されていて、サンダーバード大好き小僧だったぼくは萌えた。中学生になってサッカー部に入ると、サッカー雑誌なども見るようになり、望まなくてもブラジルという国名やペレらブラジル人名選手の名前には触れ、もう少し身近なものになる。その頃から洋楽にも異常に執着するようになるが、ブラジル音楽に着目するのははるか後。高校時代にたまたま聞いたザ・LA4の曲でやたら気に入ったのがあったのだが、それがボサノヴァをやっていると知ったのはずっと後のこと。20代の一時期は熱心なF1ファンでありネルソン・ピケやアイルトン・セナら名レーサーを生むブラジルは魔法の国だと感じていたが、その思いが音楽とつながることはなかった。ちゃんと聞くようになり、その音楽的な魅力も認識するようになったのは、30代もだいぶ回ってからではないか。ステップ・バイ・ステップで広がる興味、それは今後も大切にしたいナ。
 そういえば先週、晴天の土曜日に駒沢競技場(横では、ラーメン・フェスみたいなのをやっていた)に、J3のFC東京U23とAC長野パルセイロの試合を見に行った。元バルセロナFCにいた15歳の久保くんがJ初出場した試合。たまたまサッカー好きの友達に会場に行くのも楽だからと誘われてのもので、久保事項は偶然だ。メイン・スタンド中央の自由席で2200円、なり。バック・スタンドは閉鎖されていたが、7000人強の入りはJ3ではすごいし、彼への取材陣も山ほど。ぼくとしてはまず、東京の中村忠、長野の三浦文丈という、Jリーグ創世記にいた選手がそれぞれの監督であるのに驚く。長野には元日本代表のミッドフィールダーの橋本英郎もいて、先発で出ていた。
 前できっちりトラップにはいっている長野の選手を後ろから押したりとか、東京がくだらない反則をあっさりやっていたのには閉口。子供たち、たくさん見ているよ。監督の中村は現役時代にダーティな選手でなかったと記憶するが、ああいうのをを許容しているの? 後半から出てきた久保くんは思ったよりは小さく見えなかったが、細い。そして、長野の選手がマン・マークでついていたわけではないが、それほど見せ場は作れなかった。結構、味方の選手にここに球を出してという要求は手で指示していたが、ほとんど入らず。彼の中ではパスが通るコースなのだろうが、他の東京の選手には出せない位置であったのか。そういうのを見ると、レヴェルが違っていてかわいそうとは感じる。とにかく、これまでのサッカー天才少年の中でも華々しい経歴を持つプレイヤー、なんとか大成して欲しいが。

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