スターたちの表現を影で支えた女性サポート歌手たちにスポットを当てた『バックコーラスの歌姫たち(原題:20 Feet from Stardom)』という2013年米国映画があるが、その男性版があるとしたらキャスティングされてもおかしくいような男性シンガーがお亡くなりになった。たとえば1980年代の売れっ子のアフリカ系男性セッション・シンガーというと、ぼくはフォンジー・ソーントンやカーティス・キングといったニューヨークをベースにしていた人たちをまず思い浮かべるが、ジェラードは西海岸に拠点を置いていたことはポイントだ。

 カナダ生まれ、ヴァンクーヴァーで結成されたスカイラークに加入。同バンドはのちにプロデューサーとして大成するデイヴィッド・フォスター(2011年10月19日、2018年11月29日)が中心となったバンドで白人と黒人、男性と女性(女性シンガーのB.J.クックはフォスターと結婚。B.J.クック・フォスターとしてクレジットされた2作目ではカヴァー写真には載せられていない)が混在するソウル味も抱えるポップ・ロック・バンドだった。1972年と1974年には米キャピトルからアルバムをリリース、録音もそうだし、そのころ面々は米国に住んでいたかもしれない。ヴォーカル・ワークに力を入れるバンドで、その総体は曲のいくつかは自前で作れる(フォスターが多くの曲を書いていたわけではない)スリー・ドッグ・ナイトなるものという戦略がキャピトルにはあったか。

 スカイラーク解散後、彼はセッション・ワークをしながらシンガー活動を始める。1975年にエルトン・ジョンの『キャプテン・ファンタスティック』(DJM)に参加した縁だろうか、エルトン・ジョンが仲間たちと作ったレーベルのロケットからシングルをリリースしたよう。翌年には、LAのディスコ系インディであるグリーディからセルフ・タイトルのリーダー作をロビー・ブキャナンの制作で発表。そこには品のいいディスコ調曲から訥々と歌うザ・ビートルズ「ザ・ロング・アンド・ワインディング・ロード」のカヴァーまでが収録された。また、彼は2000年にバラードものでまとめる『The Romantic 』を自己レーベルのフリクエンシーからも出しており、おそらく彼自身のアルバムはその2作品だけと思われる。

 それらを聞くと、いかようにもあわせられますという感じの、癖のないジェントルな持ち味を抱えた歌い手で、あちらにはスムース・ソウル・シンガーという記載があるのにも納得できよう。その感触はどこかバラードを歌う際のライオネル・リーチーとも重なると思えたりするが、彼は実際にリッチーが抜けたザ・コモドアーズから誘われたことがあっという。1970年代中期からスタジオ界で活躍。ドノヴァン、ベット・ミドラー、エリック・カルメン、イヴォンヌ・エリマン、リタ・クーリッジ、B.B.キング(2007年2月3日)、アーロン・ネヴィル(2004 年9月18日、2012年5月14日)、ニール・ダイアモンド、スティーヴ・ウッズ、ピンク・フロイド、ブレンダ・ラッセル、ザ・カルト、ボブ・シーガー、リンダ・ロンシュタット、ヴァン・ダイク・パークス(2013年1月29日)など参加したアルバムは様々。そして、彼は2010年近くになると大御所メイヴィス・ステイプルズから気に入られ彼女アルバムにいろいろ参加、ライヴ盤にも入っているのでツアーにも帯同していたと思われる。また、彼はTVコマーシャルの歌入れとか、周辺の需要にも事欠かなかった。

 死因は癌。カナダの自宅で家族に見守られなくなったという記事がある(ホスピスで、というものもある)ので、晩年は自国に帰っていたようだ。

▶︎過去の、デイヴィッド・フォスター
http://43142.diarynote.jp/201111141208525234/
https://43142.diarynote.jp/201811301120319508/
▶過去の、”ブルース・ボーイ”キング
http://43142.diarynote.jp/200702112125550000/
▶過去の、アーロン・ネヴィル
http://43142.diarynote.jp/200410121001170000/
http://43142.diarynote.jp/201205221056242128/
▶過去の、ヴァン・ダイク・パークス
http://43142.diarynote.jp/201301311032072367/

<今日の、マル>
 冬季オリンピックが始まったよう。とはいえ、モニターをアンテナ端子に結線しておらずフツーのTV放送が映らないぼくにとっては、関係のないことであるのだが。前に夏のオリンピックのチケット抽選を申し込んだ際のアドレスが生きているよう〜とっとと消してほしい〜で、国際オリンピック委員会というところからまたマメに日本語メールが送られることになったが、それらはなぜか迷惑メールにされて入ってくる。それについては精神衛生上よろしい。なんか、今のぼくにとってIOCのイメージって鬼のように悪い。……って、それはサッカーのFIFAだって同様なのだろうけど。

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