水道橋・Ftarriで、バリトン・サックスの本藤美咲とアルト・サックスの山田光 (2014年7月22日、2021年3月1日)、エレクトリック・ギターの細井徳太郎(2021年11月6日) のギグを見る。初顔合わせ、お店の人が組んだ顔合わせのよう。

 行き当たりばったりの長尺の演奏を、1部と2部で一つづつ開いた。皆、PCは置かず。だが、通常の楽器音から離れるものをそれぞれ出すかという指針はあったか。その端々にアナログ、人間の所作という感覚はあり。総体としてキーはあるがコード感は希薄なノリで音が重ねられる。1部では管楽器奏者はゆったりと楽器音を流すことから始まり、それは棘のあるアンビエント調と言いいたくなるものだった。

 本藤美咲の前のテーブルと足元には、それなりの装置が置かれていた。使わなかったが、カセット・テープと小さなレコーダーもあった。そういうこともするのか。普段はバリトン生音1本で行っているそうだが、家にあるものをとりあえず持ってきて並べ、使える場合は使おうとしたようだ。バリトン音に効果をかける場合もあったが、サンプラーに入ったノイズをミキサーを介して出す場合もあり。尖った方向に出てもどこか柔らかさがあるような。それは美徳ですね。

 2部は山田が断続的に出すビート音を基調に異音が重ねられることから始まる。山田は2部では自分の出し音を拾い、それをいじったりもした。ここではインプロヴァイザーとしての姿をきっぱり出す彼だが、自分のプロダクツとなると打ち込みによるコンテンポラリーで浮遊性あるポップネスも出すクリエイターであるんだよなー。どーにでも、こーにでも。生音でバリトンとアルト音が重なる場合、こういう設定だと美が出る。

 シンガー・ソングライター的(がっつりと書くなら)なアルバムも出している細井はピックを使わず弾いていた。それはギグの内容によるようで、7割はピック弾きしているそう。足元に並べたボードを靴を脱いだ足で扱い、彼は終始異音を出していた。2部ではプリペアド・ピアノならぬ、プリペアド・ギターとい言いたくなる奏法を見せたり、膝の上にスタラトキャスターを置いて音を出す場合もあり。引き出し、いろいろ。グッジョブ。

▶︎過去の、本藤美咲
https://43142.diarynote.jp/202103011157184014/ 欄外
▶︎過去の、山田光
https://43142.diarynote.jp/201407231341189225/
https://43142.diarynote.jp/202103031127296987/
▶︎過去の、細井徳太郎
https://43142.diarynote.jp/202111071551287545/

<今日の、もろもろ>
 年末の慌しさから一転して、新年ののんびりさ加減が好きだ。だから、新年会も好き。でも、天邪鬼なので今年はうんたらとか、年頭にあたって目標や願いを掲げるということはあまりしない。まあ、何時だろうと、そう思ったらそうなるといいなと感じたりはするものの。でもって、罰当たりなもんで、年賀状は一切出さないし、お参りもしない。逆にそういう殊勝なことをすると、よくないことが訪れそうな気がする。タバコ、待たされること、格闘技の3つが一番嫌いなことというのは今年も不変だな。
 即興/実験音楽に特化したCDショップであるFtarriの存在は耳にしていたが、初めて行く。CDをリリースしたり、大友良英らが出るフェスを企画していたりもするよな。お店は都営地下鉄水道橋駅からわりと近いビルの地下一階にあり、思っていたよりも広く、アップライト・ピアノも置いていた。そして、知らないCD(少しだけ、12インチや7インチのアナログやカセットもあり)がいっぱい。冨樫、山下、坂田といった定番大御所のCDも置いてあったが、基本知らない人、インディー発のものだらけ。素敵だな。結構、2000円以下のアイテムが多い。ものによっては細かいQ数の文字で丁寧な内容説明がなされている。
 夕方の販売時間の後にライヴ・パフォーマンスの場を提供しているようだが、入り口はスタジオのようにがっちりしめる設定で、これはドラムが入るライヴも可能なのかな。このおりなためか10人限定、とのこと。そして、時節柄<福袋付き新春コンサート>と謳い、商品がたくさん入った袋を入場時にいただく。2000円のギグであるのにわーいいんですかという感じ。お年玉もらったキブン? 帰宅して開けてみたら、CD11(うち特殊ジャケット2)、7インチ・シングル1、カセット1、という内訳。中には、セルジュ・ゲンズブールのラテン集という日本フォノグラム盤の『コーヒー・カラー』も入っていた。どれも未開封ですね。そのなかの一つは、Ftarri編集の3枚のCDを封入した書籍サイズの『Improvised Music from Japan 2009 』で、それは読み物/資料も充実。今は、都市のフィールドワーク音のサンプリングとノイズを絡めたようなアンビエント調音の『Dispositif:Canal Saint-Martin』(Xing-Wu 、2007年)を聞きながらこれを書いている。エマニュエル・ミエヴィルとエリック・コルディエという在フランスの二人が、2005年5月27日にパリ市庁舎でやったギグを録ったもののようだ。

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