初台・東京オペラシティのリサイタルホール。いちおう駅直結の地下1階にあるが、かなり奥の方にあり分かりづらい。だいぶ前にここの楽屋でピアニストの加古隆にインタヴューしたことがあって、なんとなく勘が働きすんなり行けたが、着くまでこれでいいんだっけと疑心暗鬼であった。

 すごいものものしい公演名が付けられているが、ようはソロ・ピアノよる公演だ。桑原あい(2013年9月8日、2016年12月7日、2017年7月8日、2017年9月29日、2018年12月21日、2019年1月21日、2019年4月26日、2019年4月27日、2019年4月28日)の4月に出る『Opera』(ユニバーサル)はソロ・ピアノ作で、その音はぐうぜん今日の昼間にデーターが届いた。自作曲は一つで、あとは他人曲を演奏する。クラシック素養を出すなどアートな志向も持つそこで忌野清志郎(2004年10月19日、2005年7月29日)の「デイドリーム・ビリーヴァー」(好きな曲なんだそうだ)をクローザーとして置いており、録音は昨年11月にこの会場で、ここにあるスタンウェイ&サンズのピアノを使い録音されたのだという。

 ある種の覚悟(と、書くと大げさになってしまうが)のもと、指を動かす。新作は仕事場で流れるものを、居間で別作業をしながらぼんやり1度聞いたが、選曲をはじめアルバムの内容とそれほど重ならない方向だとぼくは聞いた。それは、即興音楽演奏家として正しい。MCで、取材で好きなピアニストはと問われるとミシェル・ペトルチアーニとアート・テイタムとリチャード・ティーの3人の名を挙げると言う。何度か彼女にはインタヴューしているが、それは知らなかった。そういう質問を、ぼくはあまりしないからな。似たスタンスの人はという問いはするものの。新作には入っていない彼女のグルーヴィな自作曲「Somehow It’s Been a Rough Day」も演奏しその際は左手が大胆に効いていて、なるほどティー好きの片鱗を感じたか。

 ジャズ・ピアニストにとって、ピアノ・ソロによるアルバムを作るというのは覚悟のいることだろう。2018年にECMに移籍したシャイ・マエストロ(2012年3月12日、2016年1月4日、2016年6月11日、2016年6月11日、2017年9月3日、2017年9月6日、2018年11月12日)も一瞬移籍作はピアノ・ソロ作にしようかとも思ったが、もう少し機が熟すまでとトリオで録音することにした、というようなことを言っていた。上の大学には進まず音楽高校を出て現場で勝負とピアニスト活動を始めた桑原にとって新作は10作目となり、20代最後のアルバムになるようだが、どんな心持ちのもとピアノ・ソロ作を出すことにしたのだろう。

 ところで、ステージに現れた桑原は、「こんな時期にコンサートをやっていいのか迷った」というようなことをまず話す。すると、大きな拍手が湧き、彼女は涙ぐむ。……。ああ、昨年夏季のようにまたコンサートがとっても貴重なものになるんだなあと思わずにはいられなかった。

▶︎過去の、桑原あい
http://43142.diarynote.jp/?day=20130908
http://43142.diarynote.jp/201612100926461885/
http://43142.diarynote.jp/201707101243147840/
https://43142.diarynote.jp/201710011917499392/
https://43142.diarynote.jp/201812220840383594/
https://43142.diarynote.jp/201901231045028294/
https://43142.diarynote.jp/201904271153238361/
https://43142.diarynote.jp/201904281151232549/
https://43142.diarynote.jp/201904291825347224/
▶過去の、忌野清志郎
http://43142.diarynote.jp/200410240628530000/
http://43142.diarynote.jp/200508042335560000/
https://43142.diarynote.jp/200905101005501321/ 訃報に接し、、
▶︎過去の、ミシェル・ペトルチアーニ関連
https://43142.diarynote.jp/201208091509447159/ 映画
https://43142.diarynote.jp/201604190912403018/  パリでの追悼公演
▶︎過去の、シャイ・マエストロ
http://43142.diarynote.jp/201203131840477844/
http://43142.diarynote.jp/201601050914043127/
http://43142.diarynote.jp/201606121230202174/
https://43142.diarynote.jp/201702021523283237/
http://43142.diarynote.jp/201709101639096076/
https://43142.diarynote.jp/201709110842026988/
https://43142.diarynote.jp/201811141355524842/

<今年の、始まり>
 新型コロナ・ウィルス感染者、東京で1500人越え。昨年4〜5月にビビりながらこもっていた時期(マスクも消毒液も購入しづらかったしなー)だって感染者200人を超えた日はほぼなかったはずで、うううむ。この6日はいくつか興味深い公演があり、どれかには行こうと思っていたのだが、さすがこの人数だと少し躊躇するところはある。12月中旬に濃厚感染者もどきになり、保健所の指導でPCR検査を受け〜https://43142.diarynote.jp/202012241152462589/〜、本当にどこで接触者になる分からないということを身を以て体験している者としては。とはいえ、明日には首都圏には緊急事態宣言が発令されるというので、そうすると去年の3月下旬のときのようにライヴは軒並みキャンセルになってしまうわけで、今日は注意を払いつつ行っておくべきと判断した。本日から始まる昨年から続く上原ひろみのブルーノート東京公演は今日から中止になったという。知り合いのバーは午後2時〜午後8時という枠で営業するようになるようだ。
 ということもあり、一番密になりそうにない天井が高く、広い会場のライヴを選ぶ。家からは片道5キロ、さすが寒空のなか歩く根性はなく(風邪をひいたら本末転倒だ)、今年初めて電車に乗る。一応すいてそうなルートを選んだら、行きも帰りも座ることができた。それは同じ私鉄を乗り継ぐので値段も安い。会場入場時は装置に手をかざして、体温が計られる。35.7度。やはり非接触型のそれは、体温が低めに出るよなー。ま、自分なりに誠実に、わがままに行きます。

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