神楽坂・The GLEEで、フランスの現代ジャズ・クインテットの公演を見る。リーダーのアレクサンドル・エレール(キーボード。普段はフェンダー・ローズ一択らしいが、この晩はいろいろエフェクターを並べつつノードを弾く。グランド・ピアノを常備するハコであったが、そちらは一切弾かず)は、MCでプログ・ジャズ・バンドと言っていた。そんな彼に加え、ジュリエン・ポンヴィアーヌ(テナー・サックス) 、オリヴィエー・レーネー(トランペット)、オリバー・デガブリエレ(電気ベース。ピック弾きをする曲もあり)、ジュリエン・シャムラ(ドラム)という面々が演奏する。

 鍵盤(場を整える効用を持つ演奏で、そんなにジャズ的なソロは取らない)とベースがエレクトリックを弾くが、フロントの2管はアコースティック。ビートは変拍子も用い、とくに1部でのドラマーのスネア音とどこかつんのめったその感触にビル・ブラフォードを思い出す。そんな彼が叩くことで、インダストリアルっぽいと言いたくなる曲もあったか。テナーとトランペットはテーマ部においてユニゾンで音を重ねてベールのような効果を得ている曲がいくつもあって、印象に残りもした。その二人、ソロを取るとちゃんとした奏者であるのが分かる。一部、“エレクトリックなネフェルティティ”と称したくもなり、注目すべき面を持つジャズ・コンボであるのは間違いない。

<今日の、レーベル>
 オクシードのアルバムを出している、ONE HEURES ONZEというレーベル/音楽プロダクション/音楽出版会社のプロダクション・マネージャーのステファニーさんも同行していて、挨拶を受ける。2010年パリで設立された同社は、即興からロックまでを扱っているよう。そして、鍵盤のアレクサンドル・エレールが絡んだ3枚のCDを手渡される。それは、以下の3種。
*OXYD『The Lost Animals』(2019年) 
 オクシードの新作で、通算5作目になるよう。ライヴよりアブストラクトでジャジーで、曲調も幅広い。響きに対しても周到、エレクロニカ・ジャズと言いたくなる曲もある。作曲と編曲クレジットはグループ名義で、ドラマーは来日した人とは別の奏者が叩いている。
*ALEXANDRE HERER『Nunataq』(2019年)
 エレールのソロで、トリオでの録音。リズム隊はオクシードとは別の奏者たちだが、ここでもエレクトリック・ベースを採用。一部はリズムや響きがアップデイトしたザ・リターン・フォーエヴァーという感じのものも。グリーランド〜環境問題を扱う1作とか。
*AUM『You’ve Never Listened To The Wind』(2017年)
 すべての曲を書きクラリネットとテナーを吹くジュリアン・ポントゥヴィアンのラージ・アンサンブル。構成員はクラリネット/アルト、クラリネット/テープ、ピアノ、フェンダー・ローズ、エレクロニクス(その担当者が、エレール)、ギター、ヴァイブラフォン、パーカッション2、ダブル・ベース2、女性ヴォーカル(完全クラシック)、指揮者なり。これに、一番耳惹かれる。アナログ音にせよ、電気的音にせよ、響きの帯というものを作り出し、鋭敏なアンビエント空間を創出。もうフランス式侘び寂びが横溢している。

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