まず、六本木・アスミック試写室で、2019年日本映画「ゴーストマスター」を見る。試写が始まる前に監督のヤング・ポール(米国人と日本人のミックスで、ヤングが苗字。おお、往年の英国ブルー・アイド・ソウルのスター歌手と同じ名前じゃないか)が挨拶。とっても、誠実そうな人だな。

 <ツタヤ・クリエイターズ・プログラム>という新人映画企画コンペチションの2016年準グランプリとなったものが草案となる映画で、他愛なく書いてしまえば、ホラー映画だ。だが、そこはいろんな要素や捻りやクスっとなれる要素も盛り込まれ、もう一つの見え方や感興が出てくる……。というのは、少し好意的な書き方。ホラーにまったく興味が持てないぼくには、少し御都合主義なところも感じるし、ほぼほぼ真価は分からないという感想を持った。ホラー映画項目に対するオマージュもいろいろ盛り込まれているようだが、それも一切ぼくは分からず。だが、共同脚本もかねるヤング監督は1985年生まれ。おやじとは、ぜんぜん違うところ見ているかもなあ。

 音楽を担当しているのは、渡辺琢磨(2003年12月4日、2005年10月21日、2006年4月18日、2011年4月6日、2011年5月22日)。洗練された作風を持つと思っていたが、ここではかなりベタな(チープな音色でもある)音楽を随所につけていて驚く。とともに、その音楽の音量がデカいのにもまた驚く。音楽の音量がデカいと生理として思ってしまった映画の、これはぼくのNo.1だった。

▶︎過去の、渡辺琢磨/コンボピアノ
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2003-12.htm
https://43142.diarynote.jp/200510230301330000/
https://43142.diarynote.jp/200604210538510000/
https://43142.diarynote.jp/201104091623415118/
https://43142.diarynote.jp/201105230926029205/

 その後、品川区・スクエア荏原ひらつかホールに行って、現代アルゼンチンのネオ・フォルクローレの白眉と言いたくなる、ピアニストのセバスティアン・マッキのトリオを見る。なんとサイド・マンにカルロス・アギーレ(2010年10月16日)が入り、打楽器奏者のゴンサーロ・ディアスもマーメリ傘下にいる奏者だ。それ、マッキのトリオ名義の2019年新作『アグアシラバス』と同じ顔ぶれのものですね。

 すべて、ヴォーカル曲。基本のフォーメイションは、マッキはグランド・ピアノを弾きながら歌い、アギーレはフレットレスの電気ベースを弾き、ディアスは変則的なキット(遠目に見た所感)を思うまま叩く。もう1曲目からそうこれこれという広がりや誘いが舞いだし、夢心地。そして、それは一部ブラジルの揺らぎとも重なる。メッキのヴォーカルはうまいとは言えないものだが、それで、この音楽性の場合はOK。ブラジルの洒脱ポップとともに、歌のうまさが必要要件にならない不思議なヴォーカル・ミュージックであるとも思う。でも、考えてみたら、それってとてもすごいこと。歌、メロディ、サウンドの緊密な何かがモノを言うのかもしれない。

 しかし、アギーレの電気ベースの演奏は初めて触れるが、浮いた情緒を与えるその伴奏には脱帽。ピアノやギターよりも良いと、ぼくには思えた? コーラスもいい感じでつける彼のヴォーカルがフィーチャーされる曲もあり、その際に彼はギターやピアノを弾き歌ったりもした。そんな二人にテンションをしなやかに与えるディアスもかなりの実力者であり個性派。どちらかというと、パーカッション的な叩き方をすると言えるのかもしれないが、その演奏は十全に歌う感覚を持ってもいた。

 彼らとアルゼンチンで共演もしている、女性シンガー・ソングライターのコトリンゴが出てきて、2曲一緒にやったりもした。その際、彼女はピアノを弾きながら歌い、メッキはキーボードや生ギターを抑えたりも。うち、一つはアギーレが主ヴォーカルだった。

 メッキはスペイン語でMC。その際、黒子として通訳していたのは、アルゼンチン大使館勤務の知人だった。まあ、なくてもいいかなとも思えたが、曲の背景を伝えた時もあり、来ている人たちに自分たちの喜びと感謝をちゃんと伝えたいという思いからそうしているのは、面々の笑顔や物腰をみていればすぐにわかる。タイトロープを渡るような高度と言えることをやりつつゆったりと流れていく、ストレスとは無縁の聞き味は、まさしく名人芸。現代のもっとも洗練されたポップネスと普遍的な人間的な気持ちが見事に共存する公演、この後は名古屋、大阪、岡山と回る。

▶︎過去の、カルロス・アギーレ
https://43142.diarynote.jp/201010191403189326/

<今日の、パトロール>
 六本木駅中ビルにある試写場から次の場まで一本で行ける南北線麻布十番駅まで、雨も降っていなかったし、時間に余裕があったので歩く。まず、テレ朝方向に下る芋洗坂。あら、スイートベイジル139があったところが大きめのホテルになっている。その一階には、立派なステーキハウスが入っていた。街は確実に書き換えられている。また、途中には越境生徒が多いらしい六本木中学校があり、立派な校舎で驚く。昔、その旧校の2分1となる中学校に通っていたという奴がいたなあ。そして、途中からは麻布十番商店街を歩く。かつての麻布十番温泉〜同業のKTさんは結婚披露パーティをそこの大広間を貸し切ってやったことがあった。昨日は(そのときの奥様とは別れた後の奧さんとの)子供づれで来ていた。ピアノにすごい才を発揮していると自慢していたが、今は野球とサッカーに夢中らしい〜があった場所には一階にセブンイレブンが入ったビルになっていた。ぼくがこのあたりの飲食店に出入りしていたのは麻布十番駅がまだなかった1990年代だが、つまらない通りになっていると思わずにはいられず。本屋がちゃんとあったのは偉いけど。前は下町的店舗と訳あり(?)飲食店が共存していたような気がする……。でも、ぼくのなかでのこの通りはもっと狭かったと思えるので、いい加減な記憶かもしれないが。
 次の会場となる区の施設の最寄駅である武蔵小山に降りることができたのはうれしい。初、武蔵小山。ぼくのなかでは、安い飲み屋がたくさんあるというイメージがあるから。そしたら、ドバーって商店街アーケードがあってびっくり。この長さ、すごいな。並んでいる店自体はフツーという感じではあったけど。途中のハードオフ←ブックオフがそういうのをやっているのは知っていたが、ぼくは今回初めて入る〜の店内のメインのアイテムは楽器で、それには驚く。今、手頃なショート・スケールの電気ベースが欲しいんだよなー。会場は、そのアーケード出口の近くにあった。残念ながら、いい感じの飲み屋は発見できず。反対側の出口のほうにあるのかな。

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