いかにもUK今様ダンス・フロアと繋がったジャジー・グループという感じの、エズラ・コレクティヴのキーボード奏者の単独公演。2018年発表の初フル・アルバム『Starting Today』はジャイルズ・ピーターソン(1999年5月21日、2002年11月7日、2004年1月16日、2008年9月18日、2012年9月13日、2013年11月1日、2016年10月8日)のブラウンズウッドから出ている。六本木・ビルボードライブ東京、ファースト・ショウ。ジョーンズさん、やっぱり確かな手腕をもっているのだなと頷く。

 いい音を出してたフェンダー・ローズ、そしてノード・エレクトロを扱う当人に加えて、テナー・サックス2(うち一人は女性)、エレクトリック・ベース、ドラムという布陣でことに当たる。ジョーンズ以外は皆カリブ系かアフリカ系かラテン系で、ブレイズ頭の人が多かった。

 ちょいグリッサンドを使いすぎ(やっぱチャラいというか、下品になるよなあ)だとは思うが、ジョーンズの演奏は確か。告知情報にはサポート奏者の陣容や名前が出されていなかったが、同行した奏者たちはまっとう。5弦のフレットレス(たぶん)を弾いていたベース奏者は終始ピック弾きしていて、この手の音楽をやる奏者としては異例。また、ドラマーはスネア音のチューニングが絶妙(ぼくが座っていた位置からはよく見えなかったのだが、パッドは使っていないよな?)で金物のズレを作り出す叩き方と合間ってプログラム・ビート時代のそれをちゃんと作り出していた。また、彼の音には適時エフェクトもかけられていた。リーダー作ではトランペット奏者も使う場合もあったが、菅セクション音はやはりテナー2本でことにあたっていたので、それはジョーンズの好みだろう。太さは出るよな。女性奏者のソロは堂々いい感じだった。

 また80分ほどのショウのオープナーとクローザーには、身長の高いシンガー(ラス・アシェバー?)が加わるが、その彼がなかなか。懐深いよく通る歌声を持ち、語りもとてもお上手。彼が肉声を加えさえすれば、その曲はどれもスピリアル・ジャズになっちゃうじゃん。とかなんとか、今英国のジャズ傾向にある若手(今日の出演者は、年長でいっていても30歳半ばか)、いろいろ充実しているんだなとも思えた。

▶過去の、ジャイルズ・ピーターソン
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live2.htm 1999年5月21日
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2002-11.htm
http://43142.diarynote.jp/200401160000000000/
http://43142.diarynote.jp/200809191051472579/
http://43142.diarynote.jp/201209191239346073/
http://43142.diarynote.jp/201311021703148497/
http://43142.diarynote.jp/201610140945007657/

 その後、青山・CAYに行き、長年フランスに住むアルト・サックス(時々、メタル・クラリネットも)奏者の仲野麻紀(2018年7月7日、2018年10月21日)とフランス人ギター/ウード(←そのエレクトリック・ウードが格好いい。隣に座っていた知人と、アレほしいねと話す)奏者のヤン・ピタール(2018年7月7日、2018年10月21日)のデュオ演奏を聞く。入店して、しばらくするとセカンド・ステージが始まる。オール着席にて、会場盛況。この日は「旅するごはんとおいしいサックス」と題された出し物で、世界中の音楽家から教えてもらったレシピを綴る連載(https://keisobiblio.com/author/nakanomaki)を持つ仲野がそこで紹介している料理(メニューには8種類ぐらい載っていたか。なんでも、スーツケース2つ分の食材を携え帰国したよう)もサーヴしますよという設定を持つ。

 ぼくが着いた際、来場者の各テーブルにはいろんな皿やお酒のグラスが並んでいた。さぞや、お店の売り上げ良好であったろう。食べなよとおすそ分けを複数の知人がしてくれてありがたやー。なるほど、それらは異国に誘うもの。蛇足だが、やっぱりこの会場は本来こういう、お客はみんな座って飲み食いしながら音楽を楽しみましょうという使い方をされるべきと思う。スタンディング公演だとステージ高がないので、ライヴの模様があまり見えなくなってしまうから。

 ジャズに根ざすフロンティア精神のもと、サティやアラブから演歌(演歌のセクション奏者をするのが夢、みたいなMCをしていたな)までをお茶目に横切る。いい音で鳴っていたし、所々に正統なジャズ奏者としての流儀が混じるのも美味しい。そして、その総体からは彼女の人間的な面白さが顕れるわけで、そこに着目して彼女のファンになる人も多いんじゃないかな。時々日本語を挟みつつも終始寡黙に渋—く演奏しているピタールは、翌日中野で日本のその手の奏者とインプロ系のライヴを持つようだ。

▶︎過去の、仲野麻紀 と ヤン・ピタール
http://43142.diarynote.jp/201807080932266789/
https://43142.diarynote.jp/201810221139492314/

<先日の、へえ>
 先週会ったお父さんがぼくより1歳下のフランス外資の会社に勤める知人が、会社の創設パーティを(5月に)ビルボード東京でやったんですよーと言っていた。30周年とかで、2日間貸し切ったとのこと。「誰がライヴをやったの?」と問うと、「会社に軽音楽部みたいなのがあって、そこに所属する人たちがいろいろやりました」。プロのゲストは、スチャダラパー(2005年8月13日、2013年8月11日)だったそう。
 一方、CAYにおいて長テーブルと椅子がステージに向かって縦にずらっ〜と並べられる光景に、大昔のNYボトムラインの店内を思い出した。あっちのほうが少し汚めでずっと大きいが。なくなって、だいぶたつよなあ。
▶︎過去の、スチャダラパー
https://43142.diarynote.jp/200508152007550000/
https://43142.diarynote.jp/201308130851402454/

コメント