映画「ワイルドライフ」。映画「アイアン・スカイ 第3帝国の逆襲」。ターリ
2019年5月15日 音楽 午後、まず映画の試写を二つ見る。六本木・キノフィルムズ試写室と東銀座・松竹試写室。ともに、7月上旬から公開される。
ポール・ダナという34歳の伸び盛り俳優について細かい知識は何も持ち合わせていないが、真摯な映画大好き野郎なんだなあと大きく頷いた。この2018年米国映画「ワイルドライフ」は彼の初監督、脚本、制作作品となる。彼のパートナーの、女優ゾーイ・カザンが共同脚本と制作を務める。これをとおして二人は絆を強めたんじゃないか。逆に別れたら別れたで、そんな極限へと導いしまった渾身の一作という言い方も可能だろう。←外野は、無責任なことを書きますねー。
原作があって、1944年生まれの著名作家であるリチャード・フォードのちょい貧し気味の家族の崩壊と再生の兆しを描く1990年の同名作がそれ。舞台はカナダに近いモンタナ州の田舎街で、時代は1960年ごろ(当時、ヤンキースの大スターであるミッキー・マントルの名前がセリフにでてくる)で、登場人物は100%白人だ。パっと見た感じは、自動車や調度品なんかをのぞけば、今の地方都市を扱った映画としても納得しちゃうかもしれない。
と、これは否定的な物言いに見えるかもしれないが(それは、作り手にとっては意図的ではないと思う。そうだとしたら、それはそれですごいが)、米国絶頂時(それは、徴兵制もしっかりあった時代ですね)の白人家庭の人間関係を丁寧に描いていくこの映画は、ぼくにとってはそれなりにヘヴィーで、いろんなことを考えさせる力を持っていた。それ、ぼくが子供のころ、一時両親の仲が良くなかったことも影響しているかもしれない。映画作りの主導は30代のようだが、こんなはったりゼロの生理的に高潔な映画を作ることができる人がいるということを明白に知らせるだけでも、この映画は価値があると思う。
ラジオやレコード・プレイヤーからはいくつものオールディーズが流れる。とともに、劇中音楽を担当しているのは学究派でいろんなことをやってきているデイヴィッド・ラング。ここでは淡い、シンセ系音使用のと管楽器使用の断片の二つが柱。後者の方が良い。
その後は、月に逃げその裏側に秘密基地を作り生きながらえたナチスが地球をアタックするという荒唐無稽なストーリーの2012年作「アイアン・スカイ」がけっこう話題となった映画の続編を見る。前作は2018年設定で、今回は2047年が舞台。初作がクラウド・ファウンデーションを介して制作されたの同様、今作も全体の制作費の10パーセント以下のようだがそれを通す。
前回と同じく、1979年生まれフィンランド人のティモ・ヴオレンシア。役者は多国籍だが、ばかばかしくもヘンテコなアイデアを生真面目(?)に綴っていく様に触れつつ、著名人アキ・カウリスマキをはじめ、フィランド人不思議すぎと思わずにはいられず。独特の諧謔もまたしかりで、ビン・ラディン、マーガレット・サッッチャー、スティヴ・ジョブズらの悪意あるパロディ的引用もある。音楽は前作に続き、英ミュート・レコードの諸作が知られる、旧ユーゴスラビアの変調バンドのライバッハが担当している。
最後は、六本木・ビルボードライブ東京(ファースト・ショウ)で、女性シンガーのターリ(2018年11月1日 )を見る。昨年のホセ・ジェイムズ(2008年9月18日、2010年11月11日、2011年1月12日、2012年2月18日、2012年9月13日、2013年2月15日、2014年7月27日、2015年2月15日、2016年2月16日、2017年2月15日、2018年2月21日、2018年11月1日 )の公演に同行し、ジェイムズ登場前にちらり一人でパフォーマンスしたシンガー/鍵盤奏者で、ジェイムズの彼女だか嫁だかと聞いたことあるような。たしかに、彼女はタリア・ビリグという名前でジェイムズと曲を共作している。
そんな彼女の2019年デジタル・リリース作『HERE I AM HERE』は、ジャイムズが作った新レーベル“レインボウ・ブロンド”からのもので、それはオリジナルを本人が作ったトラック作りをした曲を歌うというシンプルな内容で、愛し合う二人のデュエット曲はあるのの、プロデューサーは別な人を立てている。
小鍵盤とPCを扱いながら歌う彼女を、シンセサイザー奏者とドラマーがサポート。ニューヨーカーの彼女はジューイッシュ3世で、曲によってはそちらのノリがほんのり出ることもあり。アンコールで歌ったフォーク曲というのはたぶんヘブライ語であったのではないか。1曲ピアノ弾き語りを見せた局面もあり、彼女の根にあるのはしなやかな米国人ピアノ弾き語り基調の担い手ではないのか。それが今を呼吸せんとするなかでシンセ基調表現に昇華されているのがよく分かるパフォーマンスだった。
意外だったのは、もう絵に描いたようなキャピキャピしたノリを無防備なほど露わにしていたこと。そんな社交的とも言える彼女はかつてオーチャード・セッションズというのを個人的に開いていて、ジェイムズはそれで彼女のことを知り、ヤラれてしまったとか。彼女はジェイムズと同じザ・ニュー・スクール大学でジャズ・ヴォーカルを学んだようだが、自身の表現にジャズ色は皆無。世代は違い、オーチャード・セッションズが両者の初めての出会いの場であったようだ。途中と最後に、計3曲でジェイムズはステージに出てきて悠々と歌う。ビル・ウィザース憧憬モード風体にある彼は、今一番見た目が格好いいのではないか。
▶︎過去の、ターリ
https://43142.diarynote.jp/201811021046075049/
▶過去の、ホセ・ジェイムズ
http://43142.diarynote.jp/200809191051472579/
http://43142.diarynote.jp/201011140051119042/
http://43142.diarynote.jp/201101131336421886/
http://43142.diarynote.jp/201202200901013744/
http://43142.diarynote.jp/201209191239346073/
http://43142.diarynote.jp/201302181044151204/
http://43142.diarynote.jp/201408051020111821/
http://43142.diarynote.jp/201502170939564537/
http://43142.diarynote.jp/201602181207326029/
http://43142.diarynote.jp/201702201427067352/
http://43142.diarynote.jp/201802221538438234/
https://43142.diarynote.jp/201811021046075049/
<今日の、博識くん>
二つ目の試写場に行くと、同業知り合い先輩に似た人が座っている。あれ? でも、試写会では会ったことがないし、イメージより少し小汚いような。隣には、“三つ子の魂〜”的な感じでディスク・ユニオンのレコード袋がおいてあるし、やっぱそうだろうなと声をかけるとやはりそう。「あれ、めずらしいよね。試写会で会うとは」と言うと、普段は行かないという。彼、SF小説好きだったって、前に言っていたことがあったっけ。終映後にいろいろ話したが、彼はガンを患ったお母様を長年にわたりケアをし、より良い治療を受けさせることができるよう主治医と完璧にやりとりするために、そうとうにそっち方面の知識を得ようとしたらしい。近年は会った際、コドモの話が多かったからなあ。親孝行、たっぷりしたのだなー。仕事しながらよく勉強したよねえと、まんざらでもなさそう。かつて原発通として名をはせた彼は、今ガン通であったのか。ガンのことなら、聞いてくれ。だそうで、万が一のときはききますねー。
ポール・ダナという34歳の伸び盛り俳優について細かい知識は何も持ち合わせていないが、真摯な映画大好き野郎なんだなあと大きく頷いた。この2018年米国映画「ワイルドライフ」は彼の初監督、脚本、制作作品となる。彼のパートナーの、女優ゾーイ・カザンが共同脚本と制作を務める。これをとおして二人は絆を強めたんじゃないか。逆に別れたら別れたで、そんな極限へと導いしまった渾身の一作という言い方も可能だろう。←外野は、無責任なことを書きますねー。
原作があって、1944年生まれの著名作家であるリチャード・フォードのちょい貧し気味の家族の崩壊と再生の兆しを描く1990年の同名作がそれ。舞台はカナダに近いモンタナ州の田舎街で、時代は1960年ごろ(当時、ヤンキースの大スターであるミッキー・マントルの名前がセリフにでてくる)で、登場人物は100%白人だ。パっと見た感じは、自動車や調度品なんかをのぞけば、今の地方都市を扱った映画としても納得しちゃうかもしれない。
と、これは否定的な物言いに見えるかもしれないが(それは、作り手にとっては意図的ではないと思う。そうだとしたら、それはそれですごいが)、米国絶頂時(それは、徴兵制もしっかりあった時代ですね)の白人家庭の人間関係を丁寧に描いていくこの映画は、ぼくにとってはそれなりにヘヴィーで、いろんなことを考えさせる力を持っていた。それ、ぼくが子供のころ、一時両親の仲が良くなかったことも影響しているかもしれない。映画作りの主導は30代のようだが、こんなはったりゼロの生理的に高潔な映画を作ることができる人がいるということを明白に知らせるだけでも、この映画は価値があると思う。
ラジオやレコード・プレイヤーからはいくつものオールディーズが流れる。とともに、劇中音楽を担当しているのは学究派でいろんなことをやってきているデイヴィッド・ラング。ここでは淡い、シンセ系音使用のと管楽器使用の断片の二つが柱。後者の方が良い。
その後は、月に逃げその裏側に秘密基地を作り生きながらえたナチスが地球をアタックするという荒唐無稽なストーリーの2012年作「アイアン・スカイ」がけっこう話題となった映画の続編を見る。前作は2018年設定で、今回は2047年が舞台。初作がクラウド・ファウンデーションを介して制作されたの同様、今作も全体の制作費の10パーセント以下のようだがそれを通す。
前回と同じく、1979年生まれフィンランド人のティモ・ヴオレンシア。役者は多国籍だが、ばかばかしくもヘンテコなアイデアを生真面目(?)に綴っていく様に触れつつ、著名人アキ・カウリスマキをはじめ、フィランド人不思議すぎと思わずにはいられず。独特の諧謔もまたしかりで、ビン・ラディン、マーガレット・サッッチャー、スティヴ・ジョブズらの悪意あるパロディ的引用もある。音楽は前作に続き、英ミュート・レコードの諸作が知られる、旧ユーゴスラビアの変調バンドのライバッハが担当している。
最後は、六本木・ビルボードライブ東京(ファースト・ショウ)で、女性シンガーのターリ(2018年11月1日 )を見る。昨年のホセ・ジェイムズ(2008年9月18日、2010年11月11日、2011年1月12日、2012年2月18日、2012年9月13日、2013年2月15日、2014年7月27日、2015年2月15日、2016年2月16日、2017年2月15日、2018年2月21日、2018年11月1日 )の公演に同行し、ジェイムズ登場前にちらり一人でパフォーマンスしたシンガー/鍵盤奏者で、ジェイムズの彼女だか嫁だかと聞いたことあるような。たしかに、彼女はタリア・ビリグという名前でジェイムズと曲を共作している。
そんな彼女の2019年デジタル・リリース作『HERE I AM HERE』は、ジャイムズが作った新レーベル“レインボウ・ブロンド”からのもので、それはオリジナルを本人が作ったトラック作りをした曲を歌うというシンプルな内容で、愛し合う二人のデュエット曲はあるのの、プロデューサーは別な人を立てている。
小鍵盤とPCを扱いながら歌う彼女を、シンセサイザー奏者とドラマーがサポート。ニューヨーカーの彼女はジューイッシュ3世で、曲によってはそちらのノリがほんのり出ることもあり。アンコールで歌ったフォーク曲というのはたぶんヘブライ語であったのではないか。1曲ピアノ弾き語りを見せた局面もあり、彼女の根にあるのはしなやかな米国人ピアノ弾き語り基調の担い手ではないのか。それが今を呼吸せんとするなかでシンセ基調表現に昇華されているのがよく分かるパフォーマンスだった。
意外だったのは、もう絵に描いたようなキャピキャピしたノリを無防備なほど露わにしていたこと。そんな社交的とも言える彼女はかつてオーチャード・セッションズというのを個人的に開いていて、ジェイムズはそれで彼女のことを知り、ヤラれてしまったとか。彼女はジェイムズと同じザ・ニュー・スクール大学でジャズ・ヴォーカルを学んだようだが、自身の表現にジャズ色は皆無。世代は違い、オーチャード・セッションズが両者の初めての出会いの場であったようだ。途中と最後に、計3曲でジェイムズはステージに出てきて悠々と歌う。ビル・ウィザース憧憬モード風体にある彼は、今一番見た目が格好いいのではないか。
▶︎過去の、ターリ
https://43142.diarynote.jp/201811021046075049/
▶過去の、ホセ・ジェイムズ
http://43142.diarynote.jp/200809191051472579/
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http://43142.diarynote.jp/201602181207326029/
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https://43142.diarynote.jp/201811021046075049/
<今日の、博識くん>
二つ目の試写場に行くと、同業知り合い先輩に似た人が座っている。あれ? でも、試写会では会ったことがないし、イメージより少し小汚いような。隣には、“三つ子の魂〜”的な感じでディスク・ユニオンのレコード袋がおいてあるし、やっぱそうだろうなと声をかけるとやはりそう。「あれ、めずらしいよね。試写会で会うとは」と言うと、普段は行かないという。彼、SF小説好きだったって、前に言っていたことがあったっけ。終映後にいろいろ話したが、彼はガンを患ったお母様を長年にわたりケアをし、より良い治療を受けさせることができるよう主治医と完璧にやりとりするために、そうとうにそっち方面の知識を得ようとしたらしい。近年は会った際、コドモの話が多かったからなあ。親孝行、たっぷりしたのだなー。仕事しながらよく勉強したよねえと、まんざらでもなさそう。かつて原発通として名をはせた彼は、今ガン通であったのか。ガンのことなら、聞いてくれ。だそうで、万が一のときはききますねー。
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