ジェシー・ハリス(2002年12 月21日、2005年9月7日、2006年1月23日、2006年4月22日、2007年3月11日、2009年3月31日、2010年10月10日、2011年8月6日、2012年7月16日、2013年5月26日、2016年4月27日、2016年9月8日、2017年6月10日)の2018年公演は、南青山・ブルーノート東京にて。ファースト・ショウ。

 ギターとコーラスのウィル・グレーフェ、エレクトリック・ベースのリカルド・ディアス・ゴメス、ドラマーのジェレミー・ガスティン(2016年9月8日、2017年6月10日)が同行者。彼の新作『アクアレル』はポルトガルのリスボン録音作で、その基本バンドがそのまま同行した。

実は、ウィル・グレーフェは知る人ぞ知る綻びた情感が魅力すぎの在NYのシンガー・ソングライター/ギタリストで、この晩もエレクトリック・ギター一本でいろんなフレイズを出していて、何気に目が行ってしまう。一方、リカルド・ディアス・ゴメスはカエターノ・ヴェローゾ(2005年5月23日、2016年10月9日)の数作に入っているブラジル人で、とっても堅実な演奏を続ける。1部彼は小さなキーボードで、効果音を担当するときもあった。そして、近年のハリス・バンドのレギュラーであるジェレミー・ガスティン(2016年9月8日、2017年6月10日)はこれまでで一番はっちゃけた演奏を披露。ときに棘の感覚も抱えるウィル・グレーフェの演奏と相まって、今回はロック度が高いと思わされた。

 新作からの曲を中心に、20曲強。インストも2曲やり、どの曲も演奏部に留意されているが、やりたいことの像はくっきり見えていると言わんばかりに、尺はコンパクトにまとめられる。ハリス、好調ですね。中盤にはギター弾き語りのパートももうけ、4曲披露。そこでは、「ドント・ノウ・ホワイ」もしっとり歌う。この曲、恋人とやり直せたかもしれないのになぜかそうしなかったという後悔を詩的に綴った失恋歌であるが、今聞くと健全なアメリカが去ってしまったのを止めることができなかったことに対する懺悔の歌のようにも聞こえる。とか、一聴マイルド気味ながら、視野の広さや感覚の鋭敏さを持つ“賢者”たる彼の歌は、受ける者の解釈をいろいろと引き出す。この公演は日経新聞の電子版(ゆえに、1600字ぐらいは平気でOKだ)に書くことになっているが、いろいろ書きたくなることがあるなあと思いつつ、ぼくはうんうん頷きながら実演を見ていた。

▶過去の、ジェシー・ハリス
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2002-12.htm
http://43142.diarynote.jp/200509130315380000/
http://43142.diarynote.jp/200601271859050000/
http://43142.diarynote.jp/200604251252010000/
http://43142.diarynote.jp/200703130418360000/
http://43142.diarynote.jp/200904040640421651/
http://43142.diarynote.jp/201010111257003810/
http://43142.diarynote.jp/201108101632022013/
http://43142.diarynote.jp/201207180824136323/
http://43142.diarynote.jp/201305280925006733/
http://43142.diarynote.jp/201605141103337291/
http://43142.diarynote.jp/?day=20160908
https://43142.diarynote.jp/201706111121479426/
▶︎過去の、カエターノ・ヴェローゾ
http://43142.diarynote.jp/200506021846130000/
http://43142.diarynote.jp/?day=20161009
▶︎過去の、ジェレミー・ガスティン
https://43142.diarynote.jp/201605141103337291/
https://43142.diarynote.jp/201706111121479426/

 その後、渋谷・クラブクアトロに移動。オーサカ=モノレール主導のもと、ワシントンDCのファンク・レジェンドを見る。英国のフェスでオーサカ=モノレールはサー・ジョー・クォーターマンと出会い、2014年に招聘。今回が2度目になる。

 会場に入ると、御大は一度ステージから下がっていて、THE BAWDIES(2014年3月17日)のROYが前に出て客を湧かせている。ああ、ザ・たこさん(2016年10月13日)の安藤八主博のパートには間に合わなかったか。ROYはなるほど好青年的に格好良いね。オーサカ=モノレールのフロント・マンの中田亮と豪快な掛け合いをみせたりもした。中田は電気ピアノを弾いたり、鳴り物を手にしたりもし、ホスト役を十全に勤めていた。

 その後、熱い空気が渦巻く中、(再び)サー・ジョー・クォーターマンが出てくる。73歳になって間もないそうだが、太ってもおらず禿げてもおらず、お元気そう。彼は若く見えるタイプの人ですね。円満な感じで、紳士的な人であるとも、ぼくは一瞥しただけで感じた。普段はそんなに歌っていないようで完全な喉力を示すわけではないが、もう日本人たちとつながりながら歌っていくだけで、うれしいわあとなっちゃう。スタックス・ナンバー「ノック・オン・ウッド」から、JB調応用の1973年あたり曲「(アイ・ガット・)ソー・マッチ・トラブル・イン・マイ・マインド」までを悠々と披露。彼はピカピカのトランペットを一吹きする場面も二箇所。どってことないが、その所作もOK。最後は安藤八主博とROYも出てきて、歌声を重ねた。

▶︎過去の、THE BAWDIES
https://43142.diarynote.jp/201403181811432414/
▶︎過去の、ザ・たこさん
https://43142.diarynote.jp/201610141749551400/

<今日の、そうなんですか>
 南青山の港区の児童施設建設が理解不能な住民エゴでもめている件、オレそこ近隣の住人だったら恥ずかしくて引っ越したくなるよな。あの辺に居住している知人が3人いるが、彼らも同様の心持ちであると思いたい。ときに表参道駅からブルーノート東京に向かう途中にとても広い空き地があるのだが、それが施設の建設予定地であることを今日知った。ぼくの前を歩いていたおじさんたちが、ここがあの場所なんだと話しておりました。
 サー・ジョー・クォーターマンのあと、馴染みのソウル・バーに流る。ここも今はYouTubeを使い、店内音楽としている。味気ないっちゃそうなのだが、でもだからこその発見もある。一番おっとなったのは、TV「ソウル・トレイン」出演時のスライ&ザ・ファミリー・ストーン(2008年8月31日、2008年9月2日、2010年1月20日、2015年5月18日)の映像。曲は「サンキュー」だった(よな? もう記憶がはっきしない)が、陣容は1974年『フレシュ』時のもの。「ソウル・トレイン」というと口パク、テープを流して演奏しているフリというイメージがあるが、なんとこれはジャムっぽく実際に演奏しているように見えるじゃあないか。スライはサム・ピッキング主体でギターを弾き、ベースのラスティ・アレンはアフロ・ヘアもっこり、ドラムのビル・ロードンはレギュラー・グリップで叩き、フィドルのシド・ペイジはヤク中のような顔つきをしていた。
▶過去の、スライ・ストーン
http://43142.diarynote.jp/200809011923060000/
http://43142.diarynote.jp/200809071428140000/
http://43142.diarynote.jp/201001211346277187/
https://43142.diarynote.jp/201505201630381899/ 映画

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