とっても、おもしろかった。なんか、示唆も受けた。これは、お勧めします。

 シェップ・ゴードンという人物を扱ったもので、監督をしているのは「ウェインズ・ワールド」や「オースティン・パワーズ」などで知られるカナダ出身のコメディアン/脚本家のマイク・マイヤーズ。2013年米国映画で、現在は音楽だけでなくITや映画を大々的に扱っているテキサス州の“サウス・バイ・サウス・ウェスト”でまず披露された作品であるという。渋谷・ショーゲート試写室、9月下旬からロードショー公開される。

 寡聞にして、かなり音楽界に大きな足跡を残しているシェップ・ゴードン(1946年、NYクイーンズ生まれ)のことは知らなかった。だが、アリス・クーパーのマネージャーにつき、ありったけの偽悪主義で突っ走らせ、彼をスターダムに上げて(1970年代上半期、クーパーの黄金期のアルバム群は目を惹く特殊仕様がなされていたが、それを画策したのはゴードンだ)以降、アン・マレーやブロンディ他も扱い音楽界での絶対的な力を保持。実は個人的に好きなのはスウィート・ソウルであったそうで、ゴードンはテディ・ペンダグラスやルーサー・ヴァンドロスのマネージャーも務めた。彼が面倒を見ることで、ペンダーグラスたちはチリトン・サーキット(黒人ショービズの世界。アーティストは不遇な扱いを受ける傾向にあった)から脱し白人ロッカー並みの待遇を得るようになったという。

 が、彼がスーパーなメンチ(偉人)と言われるのは、音楽の世界にとどまらず、音楽ビジネスの率直さでもって他の分野にも進出し、多大な実績を得たことだろう。映画プロデューサーとしても成功を収め(1970年代後期にはアイランド・レコードのクリス・ブラックウェルと一緒に映画会社を立ち上げいろんな作品も送り出した)、また食べ物には全く興味がなかったが(「パスタはケチャップがかけてあればいいと思っていた」というような発言もあり)、レストラン業運営でも多大な成功を収め、一流のシェフたちと交流を持ちカリスマ・シェフ・ブームを作り上げた御仁でもあるという。

 本人が存命であり、彼と親しいマイヤーズが監督しただけに、シェップ本人の撮り下ろし映像が多種使われるし、アララな写真や映像もいろいろ。証言者はマイケル・ダグラス、シルヴェスター・スタローン、アーノルド・シュワルツネイガー、アリス・クーパー、アン・マレー、サミー・ヘイガー、ウィリー・ネルソン、スティーヴン・タイラー、アリス・クーパーらを手がけたプロデューサーのボブ・エズリン他で、それらの材料を効果的につなぐというのは人物ドキュメンタリーの常道だが、編集がとってもテンポ良く、お茶目。マイヤーズ、才能あるナ。ま、それは取りも直さず、シェップの人間性や内に抱えるテンポから来たものかもしないが。

 シェップのドラッグ&セックスもおおらかに語られる。が、本来はうだつのあがらないけっこう真面目な学生で、社会学だかを専攻した東海岸の大学を出た後はLA郊外の少年施設に職を得たもののガキどもからボコられ、施設をやめちゃう。それが、1968年のこと。そして、退職後にたまたまハリウッドのモーテルに泊まったらそこにはジャニス・ジョプリンやジミ・ヘンドリックスが投宿していて(ジャニスが『パール』録音中に亡くなったのはそのモーテルであったという)一緒にヤクを決め、その流れでまだ無名だったアリス・クーパーのマネージャーをすることになったのが、すべての発端。てな感じの”事実は小説よりも奇なり”な事実は次々と出てくるわけで、そりゃ面白くないはずがない。

 その成功を導いたのは、本人の真面目なんだか不埒なんだかよくわからない豊かな発想や好奇心の持ち方や人間関係の取り方であったろうが、人間の人生なんかどうなるか分からない、やっぱ好き勝手にGOでしょと語りかけるところが本映画の心地よいところであるか。あと、それほどゴードンが成金っぽい振る舞いをしていないところは精神衛生上よろしい。そういえば、コメディアンのグルーチョ・マルクスの場合は無料でマネージメントをしたという。

 が、一方では人生に迷いもあったのだろう、ユタヤ系である彼は仏教にはまってダライ・ラマとけっこうな親交を持ったり、ハーフ・リタイヤしてマウイ島の豪邸で外来友人もてなしの日々を送っていたり(アリス・クーパーのマネージャーだけは今も務めているよう。ま、クーパー自体、活発な活動をしてはいない)、かつて仲良しだった女性の3人の子供達の経済的な面倒をみたり。結局、シャロン・ストーンをはじめ綺麗な女性たちとはあまり長続きせず、望んだ子宝にも恵まれなかったという事実も語られ、成功とはなんなのか、幸せとはなんなのかということも照らし出すような部分もこの映画にはある。で、人生なんてそんなもの、やっぱり好きに行くっきゃないよね〜と思わされるのだ。

<今日の、災難>
 18時からの試写会のあと、恵比寿に行く。駅前で毎年、盆踊りをやっているというので。駅に降りたら、ターミナルにどっかんと櫓が作られ、提灯が無数に下げられている。浴衣姿の人もたくさん。外国人を連れて行くにはとっても手軽なアトラクションだあ、とすぐに思う。飲み物や食べ物は地元のお店が運営しているのだろう、フェス価格よりはだいぶ安い。お酒類は350円、焼鳥は一本100円、かき氷も100円で販売していたようだ。まあ、側にお店やコンビニはたくさんあるわけだしね。流れる音楽はあれれ、ぼくがイメージする盆踊り曲よりテンポが速く、和ではあるがそれほど民謡(?)ぽくはないものがかかったりもしていた。それ、知人が言うには、恵比寿盆踊りのオリジナル・ソングなのだとか。「東京音頭」などもかけられていたが、それにしても流れる音楽の音質が度を越してひどい。無理に音量を上げ音が潰れまくっていて、ぼくはすぐに気分が悪くなった。こんなにまで酷い音を聞くのは、これが人生最後であってほしいと願わずにはいられず。まるで、拷問盆踊り大会、ナリ。知人が言うには過去はそれほどひどくなく、こんなのは初めてと言っていたが。早々に、飲み屋に流れました。あ、それを狙っての、あの音か? それともべらぼうな人出を裁くため、早く観覧者が入れ替わるようにあのしょうもない音を流しているとか。

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