1970年代サザン・ソウルの、(ここのところはとんと話を聞くことがなかった)大実力者の来日公演が持たれようとは。六本木・ビルボードライブ東京、セカンド・ショウ。ハイ・サウンドのシンガー/ソング・ライター、彼の奥さんは同スターのアン・ピープルズですね。

 バック・バンドであるブラザーズ・ブラウンという4人組バンドが出て来て、まずパフォーマンス。ギター/ヴォーカル、キーボード(金ピカ気味。とっても古いロッカー風体)、ベース、ドラムという内訳で、彼らのオリジナルだろうルーツぽいと言えなくもない曲を5つほどやる。曲がけっこうつまらなく、歌もあまりうまくなく、少し聞くのがイヤだった。でも、ぬわんとベーシストはあのリトル・フィート(2000年12月8日、2012年5月22日)のケニー・グラッドニーではないか! 彼、フィートの前にはディレイニー&ボニーに関与していた。

 そして、その後に、ブライアント御大が歌いながら出てくるが、どひゃー。こりゃ、歌える。と、すぐに大感激。声質、ちょいとしたシャウトの流儀、どれもココロが潤み、発汗する。声量も十分だし、体形も太ってもおらず、動きや振りもお茶目で、とても元気。これは70代半ばという年齢よりも、若く見える。……つまりは、1日に1時間半のショウを2つやれと言われれば、彼は無理なくこなしたのではないか。ただ、今回バック・バンドを自分が出てくる前にフィーチャーしたのは、サポートをしてくれる白人たちに対する感謝の念からでは? そう思えるほど、彼からは“いい人”臭もただよう。

 なんか、良い老後を持っていそう。格好もいわゆるR&B系担い手然としたものではなく、サファリ・ルックにあいそうな帽子と『サージェント・ペッパーズ〜』のジャケでザ・ビートルズの面々が着ていたようなジャケット(ブライアントの場合は黒色)を彼は身につけている。で、それが別におかしくなく、なんかトっぽいブライアントにあっている。そして、そんな彼が変わらぬ天下一品のソウル歌唱をするのだから、これはうれしさがこみ上げてきちゃうし、万全と言えないバンドの前座パフォーマンスも完全にチャラ、ないものにしちゃえるとぼくは感じた。イエイ。

 バンドもバッキングに回ったときのほうが、うまく感じられて何より。演目はわりとテンション高めの快活曲が多く、比較的スロウ系の苦手なぼくはそれにもにんまり。JB(2000年8月5日)の「トライ・ミー」。もやったか。そして、アンコールはリトル・フィートの一番有名な曲「ディキシー・チキン」。このとき、歌の1番と2番はギタリストとドラマーが順にリード・ヴォーカルを取り、ブライアントはハモりのヴォーカルを入れる。わあ。もしかして、この曲はブライアントが言いだしてやるようにしたのではないかと思わせるほどに、彼はうれしそう。その後は彼がリードを取った。ショウでブライアントが歌ったのは正味40分ぐらいか。そりゃ、もっと歌うことにこしたことはないが、それでもぼくは大満足。まさに、黄金のR&Bヴォーカルの開示があり、尊い人間の歌に浸れることができ、なんの不満があろうか。絶対に、また来てほしいっ。

▶過去の、JB
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2000-8.htm サマーソニック初日
http://43142.diarynote.jp/201503041619591535/ 映画

<今日の、ケニーさん>
 ブライアントは妻の大ヒット曲「アイ・キャント・スタンド・ザ・レイン」も歌う。これ、ブライアントも曲作りに関わっている。実はこの曲を、リトル・フィートの故ロウエル・ジョージも1979年ソロ『Thanks I’ll Eat It Here』(Warner Bros.)でカヴァーしていた。「ディキシー・チキン」にはメンフィスという地名も出てくるが、ブライアントは今も生まれたメンフィスに住んでいるという。そんなに老けた感じもないケニー・グラッドニーはとってもデッドな音(弦を2年間かえていないんじゃないかと思えるほど)を黙々と出していた。彼、何気にスティーヴ・ガッド(2004年1月27日、2010年12月1日、2012年11月26日、2013年9 月3日、2004年1月27日、2010年12月1日、2012年11月26日、2013年9 月3日、2016年2月19日)と似ている。一緒にリズム・セクションを組んだら、笑えると思った。
▶過去の、リトル・フィート
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2000-12.htm
http://43142.diarynote.jp/201205301327209613/
▶過去の、スティーヴ・ガッド
http://43142.diarynote.jp/200402051855170000/
http://43142.diarynote.jp/201012051903113851/
http://43142.diarynote.jp/201212101904379741/
http://43142.diarynote.jp/201312171510083393/
http://43142.diarynote.jp/201410220711345595/
http://43142.diarynote.jp/?day=20160219

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