代官山・ユニットで、フランスと米国と英国の、それぞれ女性が入ったバンドを見る。<ダムダムパーティ2015>というイヴェント、なり。

 まず、パブロ・パドヴァーニという26歳の青年(彼は、メロディーズ・エコー・チェンバーというユニットでギターを弾いていた)が率いるムードイド。バンド名はふわふわして形のないものといった意味合いの造語で、それはバンドの捉えどころのない音楽性から来る。簡潔に言えば、サイケかつ幻想的なロックを標榜し、それがなんとも暖簾に腕おし的な風情で多様に繰り広げられる。パドヴァーニは映像を作る仕事に最初ついたそうで、自分たちのヴィデオ・クリップは自ら作っている。

 12弦と9弦のエレクトリック・ギターを弾きながらリード・ヴォーカルをとるパドヴァーニに加え、キーボード、ベース、ドラムは女性。女性の奏者を見つけるのは大変だったそうだが、なるほど腕はちゃんとしている。ドラム音はしっかりしていて、CDよりバンド音は線が太く聞こえるゾ。また、ときに入る女性声も魅力的。4人は皆、デイヴィッド・ボウイ『アラジン・セイン』を思い出させるようなラメのメイクを顔にしている。それと似たものは、ヴィデオ・クリップでも確認できますね。妙にクセになる聞き味を持つデビュー作『Le Monde Moo』は、仏ソニーからのリリース。テンプルズ(2014年5月12日)の横に置いてもいいのかなという感じもあるが、彼らはテンプルズとは何度も一緒にショウをやっているという。

▶過去の、テンプルズ
http://43142.diarynote.jp/201405131310541050/

 次は、ラ・セラ。ブルックリン拠点のガールズ・バンドであったヴィヴィアン・ガールズのケイティ・グッドマンがバンド在籍中から持っていたソロ・プロジェクト。ベースを単純に弾きながら歌うグッドマン嬢に加え、男性のギター(少し、響く系の弾き方)とドラム(平板なビートしか叩かない)が付いてのパフォーマンス。彼女、後から見るぶんには可愛い感じで、キャット・パワー(2003年1月9日、2010年1月17日)を想起させる? 曲は、ぼくにとっては興味ひくものではなかった。

▶過去の、キャット・パワー
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2003-1.htm
http://43142.diarynote.jp/201001181042244374/

 そして、その後に出て来たのは、ザ・スリッツとともに英国ニュー・ウェイヴの自由なスタンスや閃きを体現したガールズ・バンドであるザ・レインコーツ。ステージには、太目の、くだけた雰囲気たっぷりの、若い時分にはそれなりにモテたろうとも思わすおあばさんが3人。で、リード・ヴォーカルや楽器を3人のなかで代えたりもするのだが、基本はギター、ベース、フィドルという編成で、ドラムレス。『The Kitchen Tapes』(Roir、1983年)のジャケで仲良しそうに写っている3人と、今日のもろなおばさんたちは同じなのかな。あのアルバムでも、フィドル音は入っていたしにゃ(男性によるドラム音も入っていた)。なんにせよ、3人はわきあいあいと、とても脱力感のあるストレンジ・ポップ・ロック曲を、ときに杜撰さを伴いつつ開いていく。

 コレデイイノダ観、満載。気負わず、偉そぶらず(もう一つの公演の会場は、下北沢のシェルター)。私たちが良しとすることを自分たちなりにやればいい、という気持ちが横溢。で、そこからは我が道を行く感覚、野放し感覚、自分を無邪気に出すことの素敵が表われる。基本の曲がいろんな示唆に富むことも大きいのだそうが、いいなー、おばさんたち。20年後もこのメンバーでしょぼしょぼやっていそうなところもいいい。こういうポップ・ミュージックがあってもいいと、深く頷かされました。

<今日の、好青年>
 ムードイドのパブロ君には、ライヴ前にインタヴューしたのだが、ステージの化粧や格好、クリップでの変てこさとは距離を置く、物静かな好青年。彼の父親、ジャン・マーク・パヴァドーニははみだす方向も知っているジャズ・サックス奏者。実はデビュー作にはイケているサックス音がいっぱい入っていると思っていたのだが、それは父親に吹いてもらったのだそう(デビューCDはデザインと色の使い方で、クレジットが読めなかった)。おお、素晴らしい親子協調だあ。ゆえに、当人もジャズはいろいろ聞いていたそうで、好きな人はと聞けば、「エリック・ドルフィー、チャールズ・ミンガス、オーネット・コールマン。(今月11日の)コールマンの死去の報を聞いて、ヘコんだ」とのお答え。お父さんは民俗音楽の方にも興味を持つ活動もしており、バブロもいろんな民俗音楽にも親しんで来ているそう。アルバムには東南アジアっぽいと思わせる部分もある。

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