四谷三丁目・茶会記で、女性2人による、インプロなお手合わせ演奏を見る。マチネー公演、なり。

 出演者は、大きなマリンバを操る山田あずさ(2013年5月19日、2014年6月13日、2014年6月15日、2014年10月19日、2014年11月21日、2015年4月17日、2015年5月2日)と、古いコントラバスを奏でるパール・アレキサンダー(2014年10月11日)。もちろん両者は面識を得ていたものの、ちゃんと2人でやるのは初めてのことらしい。

 休憩を挟み、切れ目のない演奏がひとつづつ披露される。まずは山田のマリンバのソロから始まったが、それオーネット・コールマン(2006年3月27日)の「ロンリー・ウーマン」(をおおきく改変したもの)。わー、いろんな「ロンリー・ウーマン」を聞いてきているはずだが、ぜんぜん分らなかった。そのまま、アレキサンダーが太い存在感ある弦音を差し込んで行き(その最初に重なる部分のみ、山田は譜面を書いたよう)、2人はいろいろと流れて行く。

 当日、ちょい音を出し合っただけで、成り行きまかせでGO! それぞれ相手の音に呼応し合っても、音の総体が完全にアウトすることはせず、風情ある佇まいとともに部屋のいろんな場所で像を描くような気がしたのは、両者の秀でた感性ゆえか。また、2人ともちゃんとしたクラジック教育を受けた先に、今の意気揚々とした音楽活動があることを伝えもするだろう。そして、それと繋がってか、全即興の演奏であっても、フリー・ジャズというよりは現代音楽という手触りを、ぼくは覚えもした。

 ぼくはマリンバの音がもう少し響いたほうがいいかなとも思えたが、楽器の大きさ(改めて、マリンバは、象と犀が合わさったようなバカでかい楽器だと思った)が異なる楽器の“さし”の重なりの場合は、このほうがうまく交わるのかな。

 山田はこれまでぼくが見た中で、一番即興性の高い、そして一部はマリンバの奏法からも離れた(ちょい、変な音も出ていたな)演奏も披露。でかい楽器と格闘するというよりは、優美にじゃれあっている感じも得たか。この日のマリンバ演奏に接し、その楽器のイメージが変わった人もいるかもしれない。一方、パール・アレキサンダーの奏法も本当に多彩。過去、いろんな先達が見せた逸脱した弾き方を知った上で、それらを本当に欲しいときに繰り出してくる様は、かなり快感。また、彼女はときにスキャットを披露するくだりもあったが、それも美声でいい味。サウンドに新たな風を吹き込んでもいて、拍手。もっと、歌ってほしいし、ぼくがプロデューサーだったら、歌とコントラバスのミニマルな重なりのレコード作りを提案するかも。

 ぼくは基本、音楽に女性という項目を持ち込まない。だから、大昔ザ・ビートルズやP-ファンクのポスターは部屋の壁に貼ったことがあっても、女性アーティストのそれを貼ったことは過去ない。今は少し柔らかくなっているかもしれないが、女性ということだけで、好意を評価に盛ることもない。でも、今日の細やかにして、ときに大胆な、男性の生理とは異なるやりとり、自己表出の様を見て、女性としての何かはアドヴァンテージになりえると思えたか。とともに、2人とも大量に木を材料に用いる楽器を悠々と扱っていることから来る、母性(一方で、それと相反する軽やかな小悪魔性も出るか)のようなものを感じたかも。まあ、それは2人とも整った容姿を持っていることも大きいのかもしれないが。

 なお、この日のパフォーマンスはオノセイゲン(2000年3月12日、2009年1月17日、2011年8月4日、2012年6月7日、2013年1月30日、2014年4月20日、2014年7月28日、2014年9月23日、2014年10月8日、2014年10月11日 )によって、2本のマイクをおいたり、下げたりしてレコーディングされた。これは近く、ハイレゾ配信されます。

▶過去の、山田あずさ
http://43142.diarynote.jp/201305260923241736/
http://43142.diarynote.jp/201406160956273046/
http://43142.diarynote.jp/201406161000365031/
http://43142.diarynote.jp/201407261220126653/
http://43142.diarynote.jp/201410251052527799/
http://43142.diarynote.jp/201411221353274586/
http://43142.diarynote.jp/201504181000432127/
▶過去の、パール・アレキサンダー
http://43142.diarynote.jp/201410210814495715/
▶過去の、オーネット・コールマン
http://43142.diarynote.jp/200603281335030000/
▶過去の、オノセイゲン
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2000-3.htm
http://43142.diarynote.jp/200901181343426080/
http://43142.diarynote.jp/201108101630438805/
http://43142.diarynote.jp/201206110945571082/
http://43142.diarynote.jp/?day=20130130
http://43142.diarynote.jp/201404251643448230/
http://43142.diarynote.jp/?day=20140728
http://43142.diarynote.jp/201409261635077130/
http://43142.diarynote.jp/201410210814495715/

<今日の、情報>
 今日のレコーディング。マイクは、マリンバのほうはB&K 4035、コントラバスはDPA-4099 。そして、録音機はKORG MR-1000というDSDレコーダーなり。そして、この晩の演奏やあの晩の演奏(http://43142.diarynote.jp/201410210814495715/)は、5月中旬に新しくスタートするハイレゾ専門のレーベル「Saidera Mastering & Live Recording」より順次配信される(e-onkyo music他を通す)予定。
 またオノセイゲンとパール・アレキサンダーは展覧会(2015年1月27日 http://43142.diarynote.jp/201501281100378819/)のために作ったものがソースとなる双頭名義のアルバムを7月にソニーからリリースする予定。その際、三宅純(2012年6月30日)などオノ絡みの他のプロダクツ2種も一緒にリリースされる。
▶過去の、三宅純
http://43142.diarynote.jp/201207031354181031/

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