すでに30 年強のキャリアを持つ、マイク・スコットが中央に立つ英国のロック・グループ。渋谷・クラブクアトロ。昨年のフジ・ロック・フェスティヴァルで初来日し(20年ぐらい前、スコットがリーダー作を出していた頃のソロ名義公演を見たような気もするが……。と、思っていたら、MCで18年前にやはり同じクアトロに出演している由。なんか印象がいいらしく、クアトロの歌も即興で歌っていたな)、今度は新作『モダン・ブルース』を出しての来日となる。そのアルバム・タイトルにドキっとなるが(まあ、かつて『フィッシャーマンズ・ブルース』というアルバムも出したこともあったが)、ブルージーな曲も一握りあるものの(なぜか、ドゥーワップ調コーラスを入れたものもあった)、基本は実直なシンガー・ソングラター的楽曲を正直なバンド表現に移したという内容をそれは持つ。

 ポール・ウェラー(2000年9月12日)と同じ1958年生まれであるスコットランドのエジンバラ出身のスコットは、そのグループ名がルー・リードの「ザ・キッズ」の歌詞から取られたという話が示唆するように、ちゃんと歌詞を吟味したことはないが、詩人系ロッカーの系譜にある人とも言えるか。一部の人には超受けそうなロックロックした風体もまた、ある種のロック美学が投影されたものと言えるかもしれない。彼の見た目、そんなに劣化していないと、遠目には思えた。

 元々ニュー・ウェイヴ流れっぽい感じでロンドンから出て来たザ・ウォーターボーイズであったが、スコットは1980年代下半期にスター・システムに反するように、落ち着いた生活を標榜しダブリンに移住、一時はザ・ウォーターボーイズ名義でアイリッシュっぽい味付けのことをやったりもしていた(その時期の代表作が、先に触れた1989年作『フィッシャーマンズ・ブルース』)。あのころは、アイリッシュ・ロックの文脈で、ザ・ウォーターボーイズは語られもしたと記憶する。

 エレクトリック・ギターを弾きながら歌うスコットに、オルガン、ヴァイオリン、ギター、ベース、ドラムがつく。もう、どっしり、実直。面白いのは、ソロはオルガン奏者とヴァイオリン奏者(ある曲のソロの際、スライド・ギターみたいな音を出したりも)がとり、2本のギターはほぼリズム・ギターに徹していたこと。ヴァイオリン奏者はザ・ウォーターボーイズ全盛期から入っていた人かもしれぬが、アイリッシュ・フィドルっぽい弾き方はしなかった。スコットはピアノを弾きながら歌う場合もあり(ツイン鍵盤でやる)。また、ギター弾き語りのパートや、ヴァイオリン奏者とデュオでやる部分もあった。

 渋谷・クラブクアトロはちゃんと一時代を築いたバンドだけに、すごい混み具合。外国人も多かった。

 ……しかし、その人ごみのなかで、ときにぼくは危ない人になっていたのではないか。コレハイイ、ウヒャアイイゾと、ブツブツ口にしたくなるほど、ぼくは感じ入って見ていたから。スコットの声も太く存在感があるし、バンドはもっとアーシーだし、アルバムよりずっといい。いやあ、ライヴに行く歓びをたっぷり感じてしまったな。

▶過去の、ポール・ウェラー
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2000-9.htm

<今日の、うわあああああ>
 同行奏者のオルガンとギターとベースは、米国人とスコットは紹介。で、なんとベーシストは、マッスル・ショールズのデイヴィッド・フッドと言うではないか!!!! わー。なるほどの野太いラインを弾いていたフッドさん、彼だけ譜面台を前においていた。しかし、あの南部ソウル〜生っぽいロックを支えた、偉人が来日していようとは。サプライズ! 事前に知っていたら、インターヴュー申し込んだのに〜。
▶過去の、マッスル・ショールズの映画
http://43142.diarynote.jp/201406270933515875/

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