品川・ステラボール。いろんな奏者が入っていた新作『ユーアー・デッド』発表後のショウゆえ、サンダーキャット他の奏者を伴うものかと思いきや、一人によるもの。生演奏を介したパフォーマンスを期待した身としては不満も出てきそうだが、100%満足の実演であり、さすが現代ビート・ミュージックの寵児であると思わされました。

 広いステージの前面には、ハイパー・キューブと名付けられている10面の半透明スクリーンが置かれる。それに加え、ステージ背後にあるスクリーンなども用い、フライング・ロータスが繰り出すDJ音と拮抗する映像ががんがん展開されるわけで、それがうわあって感じで素晴らしい。それ、鮮烈なビートとシンクロする“体験”と言うしかない。前面スクリーンを通してDJするフライング・ロータスのシルエットも確認できるわけだが、これがアレレというぐらいその存在感を伝えるものであるのにも驚く。匿名性を伴いがちなこの手の設定のなかでは、常規を逸してフィジカルな何かを聞き手に与えていたのではないか。終盤、彼はスクリーンの前に出て来てラップもかましたが、それも直接的な肉体感の提供という文脈に沿うものだろう。毎日新聞18日夕刊に公演評が載ります。


 話は前後するが、 フライング・ロータスのライヴ・セットのキーボード奏者を務めたりもしているオーストリア人クリエイターのドリアン・コンセプトが前座でパフォーマンス。DJミキサーの左右にシンセサイザーとサンプラーを置くセットの前でのパフォーマンスはかなりフィジカル。オペレーションの様が良く分り、ウキウキしてくる。一部、メロディアスな行き方を取るものは、YMO(2011年8月7日、2012年8月12日)的と思えたか。あ、それはフライング・ロータスのものにも一部感じた。

▶過去の、YMO
http://43142.diarynote.jp/201108101635051749/
http://43142.diarynote.jp/201208201258419318/

<今日の、へえ>
 いろんなアーティストがひっきりなしにやってくる日本、それゆえ誰が来ても驚かないのだが、年明け早々にヴェテラン・ドラマー(1937年、デトロイト生まれ)のルイ・ヘイズが自己バンドで、コットンクラブにやってくるという話には少し驚く。ホレス・シルヴァーやユセフ・ラティーフ、アダレイ兄弟、ジョン・コルトレーン、ジョー・ヘンダーソン、ウディ・ショウ等いろんな達人とやっている、まさに名ドラマー。リーダー作はヴィー・ジェイ、ミューズ、32ジャズ、スティープル・チェイス、タイムレス、キャンディドら様々なレーベルから出ているが、そうしたなか異彩を放つ(?)のはグリフォン発の1979年録音盤『ヴァラエティ・イズ・ザ・スパイス』。これ、リオン・トーマスが歌う曲もあったりする、寛ぎグルーヴィ・ジャズ盤なのだが、実は2000年代中期に日本のミューザック・レコードでCD化されたときに4500枚も売れた(!)のだとか。ジャズ・コミュニケイターズと名付けられたテナー・サックスやヴァイブラフォン付きクインテットでやる今回の実演は当然あの路線とは重ならないもののはずだが、その風体に顕われたちょいワルでシャープな黒人都市感覚はどう露にされるのか?

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