とっても長いドキュメンタリー映画を、渋谷・映美学校試写室で見る。インターナショナルな高評価を受けるワン・ピン監督の新作で、4時間近い『収容病練』。全237分、途中で休憩が入れられる。6月から公開。

 成り立ちは、ものすごく、シンプル。中国の雲南省にある精神病院の、閉鎖された3階部(2〜6人病室がパティオを囲む口の字形の建物に配置されている。収容された患者はそのフロアは自由に動けるが、他の階には基本行けない)の人々の昼夜の様を映しているだけ。撮影は、2013年1月〜3月。それで4時間、音楽も入らない。その病院には本当にコワレている人から反政府的な態度を取った者まで様々な人が一緒くたに隔離収容されているそうで、中国の暗部を告発する方向性もあるのかと思ったら、そんなことはなし。かなり不潔な環境には見ていてげんなりしちゃうが、とにもかくにも、同病院にいるいろんな人たちの所作や発言を追うだけの映画ナリ。撮影者側は彼らに働きかけはせず、撮影される側もあまりカメラを気にせず、振る舞っている。人々の顔にボカシが入ることも、一切ない。まあ、健全でなく、生理的に重く、理不尽でもある映像がずっと続くわけだが、淡々とそれらが綴られる映像をすらすら見れてしまったのには驚いた。いろんな人がいて、いろんな事がある……。なんか、途中からは諧謔を覚えもした。とにかく、見る人によっていろんな解釈や思いを与えるだろう、破格な情報量を持つ映画であるのは間違いがない。

 その後は、南青山・ブルーノート東京(ファースト・ショウ)。1960年代後期にトニー・ウィリアムズやマイルス・デイヴィスのグループに入り広く知られるようになった英国人ギタリスト(2005年1月31日)のワーキング・バンドの公演を見る。

 ザ・フォース・ディメンションと名付けられるバンドの構成員は、キーボードやドラムのゲイリー・ハズバンド、電気ベースのエティエンヌ・ムバペ、ドラマーのランジット・バロットという面々。皆それぞれリーダー作を出している人たち。アラン・ホールズワースやジャック・ブルース(2008年12月16日)のバンドの一員としても知られたハズバンドは英国人、かつて故ジョー・ザヴィヌル(2003年10月8日)のバンドにいたこともあったというムバペ(サリフ・ケイタの昔の作品や、ロベルト・フォンセカの2013年作等にも名が見られる)はカメルーン人、パロットはインド人だ。

 と、書くと、構成員の属性が散っていて楽しそうと思わされるが、基本はマクラフリン流儀のジャズ・ロック〜ハード・フュージョン演奏に皆で飛び込み合う傾向のパフォーマンスを聞かせる。ハズバンドは3度ほどドラムの前に座り、がちんこな叩き口のもとソロやバロットとの掛け合いを聞かせ、一方バロットはソロの際に2度ほど“口(くち)タブラ”を少しぐだぐだな感じで披露する。早弾きはスケール練習みたいと思わせるマクラフリンはなかなか格好よく外見が見えるとともに、スーダラ且つユーモラスな人であるようにも(なんか、悩みなさそうとも思わせる)、今回のショウに接して、ぼくは思った。

▶過去の、ジョン・マクラフリン(シャクティ)
http://43142.diarynote.jp/200502041825460000/
▶過去の、ジャック・ブルース
http://43142.diarynote.jp/?day=20081216
▶過去の、ジョー・ザヴィヌル
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/live-2003-10.htm

<今の、季節>
 かなり春めいてきている。だが、陽が暮れると寒かったりもし、ぼくは他者から少し暑苦しく見えるだろう格好で出がけがちで、ちょい肩身が狭い。ぼくって、寒がりだと思うとともに、春先って実は苦手な時期なのかも知れぬと初めて思った。先の日曜に味の素スタジアムで見た東京と川崎の夜試合も寒さを覚えたな。しかし、この近隣チーム同士の試合=“多摩川クラシコ”がそれなりの風情、熱を持っているのには少し驚く。過去に、燃える展開の試合もあったみたいだ。それゆえ、ホームなのに惨敗した東京の応援者たちが終盤振りまく負の情緒は濃かったなー。
 とはいえ、この晩はライヴ後に飲んで帰るときも、寒くないと感じた。今週末には花見予定もあり、いよいよ……。渋谷周辺では、卒業式帰り(謝恩会って、今でもあるのか?)の女子大学生が散見された。そういう時節でもあるのだな。

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