多大な評判を取った前回公演(2012年12月17日)から、ちょうど1年ぶりの来日。南青山・ブルーノート東京で丸4日間持たれる帯公演の初日、ファースト・ショウ。ほぼ、満席。その盛況の様には、初来日であった前回時の受け手のはち切れんばかりの期待をそのまま保っているナと思わせる。
 
 シュナイダーが指揮するのは、全19人。サックス・セクション6人、トランペット・セクション4人、トロンボーン・セクション4人、そして、ピアノ、アコーディオン、ギター、縦ベース、ドラムが、一人づつ。サックス奏者が前回より一人増え(今回新たに参加し、1曲ソロ・パートも与えられたスティーヴ・ウィルソンって、クリス・クロスやストレッチ/GRPからいろいろリーダー作を出していた御仁?)、トランペット・セクションは半数顔ぶれが変わっていた(うち、一人は逝去。シュナイダーは1曲をそのローリー・フランクに捧げた。彼女は黒田卓也に個人教授をしていたはず)が、他は前回と同じ人たち。おお、顔ぶれが安定している。いい状態にあるんだろうな。

 瀟洒にして、悠然。受け継がれてきたジャズ・ビッグ・バンド様式を踏まえつつ、ありったけの創意と工夫としなやかな突っ張りをいろいろと介し、清新な手触りやもう一つの文様を持つ、同時代のジャズ 的集団表現を浮き上がらせる。やはり、秀でた現代ジャズ・オーケストラ、最たる存在ですね。ながら、その生理的に気張った音群はシュナイダーの高潔な人間性もあるのだろう、けっして肩肘張ったものでも、難解なものでも、過度の強度や暗さを持ったものでは一切ない。微笑みにあふれた音楽の天使たちが舞っている感じを持つことは、多くの聞き手が認めるところだろう。MCでブラジル音楽の効用にちらり言及していたが、つきるところ、彼女は今という環境の中で大きく呼吸をしながら作曲/編曲し、思うままアメリアの風景を描いているのだと、ぼくは思った。

 しかし、少女っぽいというか初々しさを保ちつつ、彼女は本当にうれしそうに指揮をする。そんな、映えと誉れある様に触れつつ、ジャズの世界の女性リーダーの歴史について、思いはとぶ。奏者よりも何気に、龝吉敏子(2013年4月30日)やカーラ・ブレイ(1999年4月13日、2000年3月25日)といった大型表現に邁進して名声を得た女傑たちがすぐに思い出されるのは偶然か。そういえば、シュナイダーは学生時代に龝吉敏子のオーケストラに触れて、おおいに感化されたんだっけ。才気ある女性ビッグ・バンドの系譜、何気に美しいな。

 お客さんにはビッグ・バンド関与者比率も低くはなかったのだろうが、ジャズ楽器奏者の浪漫のようなものが会場には流れていて、それにもぼくは甘酸っぱい気持ちになったか。ぼくはロック・バンドの経験しかない人間だが、大勢で一つの楽曲/テーマに向かう団体表現にはコンボ活動では味わえない醍醐味や達成感が山ほどあるのだろう。それ、戦術徹底のもと個人がクリエイティヴに動く秀でたサッカー・チームのレギュラー選手が勝ち試合で得る心持ちと重なるのかな? ともあれ、送り手側と受け手側の共通意識/快感の交換がそこにはあったような。。。。

 彼女のショウはけっこう各セットごとあまり演目がダブりがない形でなされるようだが、このセットは新曲も披露。そんな彼女の久しぶりに出た2013年新作(相変わらず、アーティストシェア〜http://43142.diarynote.jp/201106280315179045/ を参照のこと〜 を介して、制作されている)は、クラシックの女性ソプラノ歌手をフィーチャーし、クラシック的な環境/自作曲で勝負したアルバム。悪戯っぽい、澄んだ眼差しを持つ彼女はこの後はどんなんことをやるのだろうか。

▶過去の、シュナイダー・オーケストラ
http://43142.diarynote.jp/201212190844487864/
▶過去の、龝吉ジャズ・オーケストラ
http://43142.diarynote.jp/201305071422511328/
▶過去の、ブレイ・ビッグ・バンド
http://www.myagent.ne.jp/~newswave/livezanmai.htm

<この10日間の、困惑>
 風邪ひいて、微熱が続いている。で、鼻の粘膜がずたずた、ダルさを感じるとともに、それが一番発熱しているのを実感させるか。例により医者には行く気はまるでないが、さすが薬局で風邪薬を購入。が、飲んでも眠くなるばかりで、効く感じもないので、それもやめ。あ“—。
 体調不良であることは活発さをぼくから確実に奪い、ライヴ行きもいくつか辞めさせている。受けた原稿やインタヴュー(エルヴィス・コステロの取材が直前にとんだが、咳がけっこう出ていたので、残念と思うよりも、ホっとしました)は通常通りちゃんとこなしているものの、はてさて。多少は体調改善の兆しあり(食欲はそれなりにずっとあったんだけどね)と感ずるのか、忘年会に顔を出した日もあったものの、ライヴ行きとしては本日10日ぶりに公演会場に出かけた。ま、いつまでも若くはないし、タラタラ行きます。

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