まず、六本木・ビルボードライブ東京(ファースト・ショウ)で、シンガー・ソングライターの七尾旅人(2011年1月8日、2011年4月16日、2013年6月6日)を見る。1曲目はギターを手にしコードを覚え、世界が広がる様を曲にした素敵な素朴チューンで、未発表と言っていたか。その曲以降は梅津和時(2001年9月2日、2001年9月21日、2004年10月10日、2008年11月14日、2009年2月8日、2009年6月5日、2010年3月20日、2011年4月1日、2012年2月10日、2012年11月21日、2012年12月8日))が、少し退いた形で寄り添う。彼は4本のリード楽器を置いていた。

 サンプラーを駆使し、インプロヴィゼーショナルでもある、新鮮な風景を浮かび上がらせるアコースティック・ギター弾き語り表現を開いていくのは、過去見た実演の様と同じ。スタンダード・ソング好きを露にするのも同様で、「フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン」や「星に願い」も独自の解釈で披露する。ストーリー仕立ての反核ソングも1曲やった。

 そんななか今回、僕が初めて接した七尾の新しい表情はJ・ポップ志向の行き方、1曲はプリセット音を流しギターを弾かずに歌い、後半の2曲は、やけのはら(ラップ)とDorian(キーボード)も加わり、やはりそっち傾向のノリで歌う。1曲はレコーディングしたばかりと言っていたか。人気曲「Rollin’ Rollin’」は客席側から少し合唱が起こったもしたが、1時間20分の本編が終わると、アンコールを求める拍手はなし。七尾のファンはサクっとしていると、書けるのか。

 その後は、現代ジャズ・ピアノ・トリオと、わざわざ“現代”を付けたくなる3人組のザ・バッド・プラス(2003年8月1、2日。2004年5月13日、2005年8月29日、2008年2月20日、2011年3月9日)に、ギタリストのカート・ローゼンウィンケル(2009年3月1日、2010年3月12日)が全面的に重なったライヴを見る。南青山・ブルーノート東京。

 すべて、ザ・バッド・プラスのメンバーのオリジナル曲をやったはずだが、ローゼンバーグはレギュラーのメンバーのようにフツーに重なり、ザ・バッド・プラス曲を引き立て、自分の持ち味もちゃんと出す。やはり、べらぼうな実力者だな。と、書きつつ、また他の人の賞賛の様を横目にしつつ、どこかぼくにはいらないギタリストであるかもと、思えたりも。なんか、単音主体の流麗なギター・ソロの取り方に、ぼくは微妙にして、狭い見解を取る方向になんかあるのだよな。ぼくは複音傾向でがちゃがちゃ行くタイプのギタリストが好きだということが、大きいと思われるが。それ、ファンキーなカッティングが好きなためか、それともソニー・シャーロックやジェイムズ・ブラッド・ウルマー偏愛から来るものか。

 ピアノのイーサン・アイヴァーソンはオーネット・コールマン(2006年3月27日)や菊地雅章(2002年9月22日、2003年6月10日、2004年11月3日、2012年6月24、25日、2012年10月26日、他。ザ・バッド・プラスの2012年E-1発の新作ではポール・モーシャン曲を取り上げている)のシンパとして知られるが、ここらへんで審美眼に貫かれた変種性を出すソロ演奏作をきっちり出してほしいと思ったりも。彼、ライナーノーツ執筆業も繁盛してますね。MCは毎度のように縦ベースのリード・アンダーソンがするが、日本語を入れるようになっていた。ドラムのデイヴィッド・キングは今回おもちゃをスティック代わりにお茶目に用いるようなことはせず、すべてスティックで叩いていた。そんな3人はソロ活動やサイドマン参加など個別活動も盛ん。いい塩梅でグループ活動していると思わずにはいられない。

<今日の、暗い記憶>
 ザ・バッド・プラスの前回来日公演である、2011年の模様を本頁であっさり2行で記してしまっているのは、そのうち書いてアップしようと思っていたら、その2日後に大地震が起きてしまい、多くのことをストップせざるを得なかったから。震災のだいぶ後にそっけない記載を上げ、その後加筆しようかとも思ったが、あのときのダークきわまりなかった日々のノリが分るようにと、そのままにしている。

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