アラン・トゥーサン。アニーキー・ア・ゴー・ゴー!(山浦智生)
2013年10月22日 音楽 ドクター・ジョン(10月1日)、ジョン・クレアリー(10月14日)と、続いてきた、2013年10月“ニューオーリンズ・ピアノ弾き”3連発シリーズ、そのトリ。なんちって。六本木・ビルボードライブ東京、ファースト・ショウ。
ニューオーリンズの音楽界史上最良のメロディ・メイカー/プロデューサーであるピアニスト/シンガー(2006年5月31日、2006年6月1日、2007年10月21日、2009年5月29日、2011年1月10日、2012年10月15日)の今回のショウはソロのにて。この夏にリリースされた新作『Songbook』(Rounder/ Universal)も少し前の録音ソースではあったものの同様の内容であり、やはりうれしい味を持っていたので、これは期待高まりますね。
実は過去のバンド付き公演でも、気ままなピアノ弾き語りはおいらの魅力の一つと言うかのように、トゥーサンは10分ほどの独奏パートを披露していたわけだが、思いつきで楽曲やちょっとしたフレイズ/曲想を差し込んで行く場合もあるのだが、今回は全編そうなので、もっとゆったり、せわしなく彼のなかにある引き出しを悠々と開いていく。そして、過去と比すと今回はクラシック的フレーズはほとんど出さなかったな。
そのヴァリエーションについて分っていても、やはり誘われるし、接していて笑みがこぼれてしまう。簡素な設定公演に接して再確認したのは、声がより出ているようになっていること。それ、2006年のときと比べると、かなりの差があるのではないか。ハリケーン・カトリーナの後、仕事が増えたことを明言していた(ちゃんとしたレコード契約も取れた)トゥーサンだが、本当に活躍する機会が増えて、うれしい今があるのだなと思わずにはいられず。
他人に書いた曲やリーダー作群で歌っているめぼしい曲はだいたいやったか。今回もまた「フリーダム・フォー・ザ・ステリオン」や「レディ・マーマレード」はやらず、残念! かつての来日公演では披露してくれたこともあったんだけどね。「フリーダム・フォー・ザ・ステリオン」はトゥーサン最たる名曲だとぼくは思っている。虐げられている同胞の自由を希求する、切ないゴスペル派生メロディアス曲という言い方もできそうで、曲調はメロウだが、何かとヘヴィでもある澄んだ曲でありますね。一方、ラベルに提供して大ヒットした「レディ・マーマレード」は扇情一義の曲だが、生だと余興で聞きたくなっちゃうんだよなー。
一般的にトゥーサンというと1975年リーダー作のタイトル・トラックでもある「サザン・ナイト」が一番人気を集める曲なのかもしれないが、彼もそれはご存知で、ニューオーリンズの揺らぎの感覚を音化したような出だしのフレーズを自らのテーマ曲のようにパフォーマンスの頭や最後で弾いたりする。←それ、毎度のこと。また、もちろん終盤ではちゃんと歌いもするが、そのときの歌はノー・エフェクトにて披露される。オリジナルではヴォーカルはニューオーリンズの夜の幻想を映す出すかのように、ヴォーカルにはほんわかしたエフェクトがかけられていた。それ、成功している、かなり初期のロボ声曲?
なお、クレアレンス・レジナルド・トゥーサンという太っちょの打楽器奏者が今回同行。息子さんのようだが、そこそこ若く見え、孫と言われても信じそう。2曲目から出て来て、一緒に控え目に演奏しだしたら、ありゃ素人。完全ソロでやってよぉと思っていたら、数曲でそでに下がり、ホっ。キンキラなステージ衣装が似合うおじいちゃんは、親バカでもありました。
その後は、わたくし一押しの日本人シンガー・ソングライターであるANEIKY A GO GO!/山浦智生(1999年4月23日、1999年6月23日、1999年9月30日、2003年9月9日、2009年3月29日、2009年5月16日、2011年1月15日、2013年3月2日)を、渋谷・Li-Poで見る。ちゃんとしたメロディと強い歌がグルーヴィに拮抗し合うピアノ弾き語りの公演。そして、そこにアルト・サックスの加藤雄一郎(2013年3月2日)が趣味良く間の手を入れる感じで、全曲でよりそう。
ファースト・ショウの終盤から見ることができた。やはりグっと来たし、応援者であり続けたいとも思った。新作『黄金の翼』(スパイ)からの曲もけっこうやったはず。今回は声がよく出ていることもあり、喉が強いなあと感服。また、曲については、サビのメロディがいいとも再確認。もちろんAメロも素晴らしいのだが、ブリッジ部になるとずっこけちゃう人が少なくないなか、彼はおおこう来てこうくるのと、想像を遥かに超える発展美メロ/コード使いを続けるのが常なのだ。わざわざ書く必要もないが、大駄目流れ例ですぐに思い出されるのが、ザ・ドゥービー・ブラザーズの「チャイナ・グローヴ」。出だしがあんなに颯爽としたリフで突き進むのに、途中から苦し紛れ的にマイナー・キーの女々しいパートにぬけしゃあしゃあと移行しちゃう厚顔無恥さにはほんと何と言っていいのか。気色悪い。あれがいいという人(1973年全米15位まで登った曲ですが)は、ぼくとは一切相容れないロック感覚の持ち主なんだろうなと思わずにはいられない。
と、本当に蛇足を書いてしまったが、彼の前にはほとんどの巨匠も木っ端みじんということなのだ。あと、要望としては、もう少しソウルぽい情緒を持つ曲を聞きたいということと、リズム設定の多彩さをより求めて欲しいか。ロック的な情報/彩の濃さは今申し分なしなのであるから。それにしても、素の楽曲と歌と最低限の楽器音で、音楽のマジックを体現できる尊さたるや!
<今日の、都営バス>
ビルボードライブ東京の行き帰り、その前後が渋谷なので、六本木との往復でバスを利用する。ともに、道がすいていてびっくり。復路のとき、何度か時間調整のため、バスは停留所でしばし停車していた。行きのバス、お母さんと子供二人が乗って来て僕の後ろに座ったのだが、乗り込む際にコンバンワと運転手に挨拶していた姉と弟は「あまちゃん」のテーマ曲(2013年7月13日)をタラタラと子供っぽく歌い始めた。場が和んだ? 何しとんじゃいと負の視線を浴びせる人もいなかったな。なるほど、世の中に浸透し、愛でられている曲であるのが、地上波放送が映らなく一度もそのTV放映を見たことがないぼくでも、よく分った。バスの運転手は運転中にしきりに、<六本木6丁目>というバス停が<EXシアター六本木前>に変更になりますという予告アナウンスをする。それは、六本木ヒルズの六本木通り斜め向かいに、テレビ朝日が運営する新しいライヴ・ヴェニューが11月末から開店するのに沿っての変更のようだ。その<六本木6丁目>停留所の前に通るとEXシアター六本木の外観はすでに完成していて、白色LED光体が外観の壁全面でこれでもかと煌煌と輝いていて、とっても眩しい。おお、バブル期再来かと、思ってしまう人もいる? その下品さはいかにも六本木的と頷いた。
ニューオーリンズの音楽界史上最良のメロディ・メイカー/プロデューサーであるピアニスト/シンガー(2006年5月31日、2006年6月1日、2007年10月21日、2009年5月29日、2011年1月10日、2012年10月15日)の今回のショウはソロのにて。この夏にリリースされた新作『Songbook』(Rounder/ Universal)も少し前の録音ソースではあったものの同様の内容であり、やはりうれしい味を持っていたので、これは期待高まりますね。
実は過去のバンド付き公演でも、気ままなピアノ弾き語りはおいらの魅力の一つと言うかのように、トゥーサンは10分ほどの独奏パートを披露していたわけだが、思いつきで楽曲やちょっとしたフレイズ/曲想を差し込んで行く場合もあるのだが、今回は全編そうなので、もっとゆったり、せわしなく彼のなかにある引き出しを悠々と開いていく。そして、過去と比すと今回はクラシック的フレーズはほとんど出さなかったな。
そのヴァリエーションについて分っていても、やはり誘われるし、接していて笑みがこぼれてしまう。簡素な設定公演に接して再確認したのは、声がより出ているようになっていること。それ、2006年のときと比べると、かなりの差があるのではないか。ハリケーン・カトリーナの後、仕事が増えたことを明言していた(ちゃんとしたレコード契約も取れた)トゥーサンだが、本当に活躍する機会が増えて、うれしい今があるのだなと思わずにはいられず。
他人に書いた曲やリーダー作群で歌っているめぼしい曲はだいたいやったか。今回もまた「フリーダム・フォー・ザ・ステリオン」や「レディ・マーマレード」はやらず、残念! かつての来日公演では披露してくれたこともあったんだけどね。「フリーダム・フォー・ザ・ステリオン」はトゥーサン最たる名曲だとぼくは思っている。虐げられている同胞の自由を希求する、切ないゴスペル派生メロディアス曲という言い方もできそうで、曲調はメロウだが、何かとヘヴィでもある澄んだ曲でありますね。一方、ラベルに提供して大ヒットした「レディ・マーマレード」は扇情一義の曲だが、生だと余興で聞きたくなっちゃうんだよなー。
一般的にトゥーサンというと1975年リーダー作のタイトル・トラックでもある「サザン・ナイト」が一番人気を集める曲なのかもしれないが、彼もそれはご存知で、ニューオーリンズの揺らぎの感覚を音化したような出だしのフレーズを自らのテーマ曲のようにパフォーマンスの頭や最後で弾いたりする。←それ、毎度のこと。また、もちろん終盤ではちゃんと歌いもするが、そのときの歌はノー・エフェクトにて披露される。オリジナルではヴォーカルはニューオーリンズの夜の幻想を映す出すかのように、ヴォーカルにはほんわかしたエフェクトがかけられていた。それ、成功している、かなり初期のロボ声曲?
なお、クレアレンス・レジナルド・トゥーサンという太っちょの打楽器奏者が今回同行。息子さんのようだが、そこそこ若く見え、孫と言われても信じそう。2曲目から出て来て、一緒に控え目に演奏しだしたら、ありゃ素人。完全ソロでやってよぉと思っていたら、数曲でそでに下がり、ホっ。キンキラなステージ衣装が似合うおじいちゃんは、親バカでもありました。
その後は、わたくし一押しの日本人シンガー・ソングライターであるANEIKY A GO GO!/山浦智生(1999年4月23日、1999年6月23日、1999年9月30日、2003年9月9日、2009年3月29日、2009年5月16日、2011年1月15日、2013年3月2日)を、渋谷・Li-Poで見る。ちゃんとしたメロディと強い歌がグルーヴィに拮抗し合うピアノ弾き語りの公演。そして、そこにアルト・サックスの加藤雄一郎(2013年3月2日)が趣味良く間の手を入れる感じで、全曲でよりそう。
ファースト・ショウの終盤から見ることができた。やはりグっと来たし、応援者であり続けたいとも思った。新作『黄金の翼』(スパイ)からの曲もけっこうやったはず。今回は声がよく出ていることもあり、喉が強いなあと感服。また、曲については、サビのメロディがいいとも再確認。もちろんAメロも素晴らしいのだが、ブリッジ部になるとずっこけちゃう人が少なくないなか、彼はおおこう来てこうくるのと、想像を遥かに超える発展美メロ/コード使いを続けるのが常なのだ。わざわざ書く必要もないが、大駄目流れ例ですぐに思い出されるのが、ザ・ドゥービー・ブラザーズの「チャイナ・グローヴ」。出だしがあんなに颯爽としたリフで突き進むのに、途中から苦し紛れ的にマイナー・キーの女々しいパートにぬけしゃあしゃあと移行しちゃう厚顔無恥さにはほんと何と言っていいのか。気色悪い。あれがいいという人(1973年全米15位まで登った曲ですが)は、ぼくとは一切相容れないロック感覚の持ち主なんだろうなと思わずにはいられない。
と、本当に蛇足を書いてしまったが、彼の前にはほとんどの巨匠も木っ端みじんということなのだ。あと、要望としては、もう少しソウルぽい情緒を持つ曲を聞きたいということと、リズム設定の多彩さをより求めて欲しいか。ロック的な情報/彩の濃さは今申し分なしなのであるから。それにしても、素の楽曲と歌と最低限の楽器音で、音楽のマジックを体現できる尊さたるや!
<今日の、都営バス>
ビルボードライブ東京の行き帰り、その前後が渋谷なので、六本木との往復でバスを利用する。ともに、道がすいていてびっくり。復路のとき、何度か時間調整のため、バスは停留所でしばし停車していた。行きのバス、お母さんと子供二人が乗って来て僕の後ろに座ったのだが、乗り込む際にコンバンワと運転手に挨拶していた姉と弟は「あまちゃん」のテーマ曲(2013年7月13日)をタラタラと子供っぽく歌い始めた。場が和んだ? 何しとんじゃいと負の視線を浴びせる人もいなかったな。なるほど、世の中に浸透し、愛でられている曲であるのが、地上波放送が映らなく一度もそのTV放映を見たことがないぼくでも、よく分った。バスの運転手は運転中にしきりに、<六本木6丁目>というバス停が<EXシアター六本木前>に変更になりますという予告アナウンスをする。それは、六本木ヒルズの六本木通り斜め向かいに、テレビ朝日が運営する新しいライヴ・ヴェニューが11月末から開店するのに沿っての変更のようだ。その<六本木6丁目>停留所の前に通るとEXシアター六本木の外観はすでに完成していて、白色LED光体が外観の壁全面でこれでもかと煌煌と輝いていて、とっても眩しい。おお、バブル期再来かと、思ってしまう人もいる? その下品さはいかにも六本木的と頷いた。
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