キューバ出身の傑物ピアニスト(2001年8月24日、2002年7月22日、2004年8月2日、2005年9月24日、2006年10月28日、2008年3月16日、2009年5月12日、2010年8月3日)の今回の来日公演はカルテットにて。南青山・ブルーノート東京、セカンド・ショウ。

 ピアノ、キーボード、エフェクター、時々のわめき声の本人に加え、電気ベースのチルド・トーマス(2010年8月3日、他)とアルト・サックスやフルートや歌(その質感は軽い)のレアンドロ・セイント・ヒル、そしてドラマーは2000年代後期にリチャード・ボナ(2012年5月14日、他)のバンドにいたことがあるアーネスト・シンプソンという布陣。その2013年新作『エグン』(オータ)はNY録音作で、含みの存在をいろいろと抱える幽玄路線を行く内容だったが、そこにはマーヴィン・スーウェル(2011年5月5日、他)とリオネル・ルエケ(2012 年3月3日、他)というNYジャズ界きっての個性派ギタリストを呼び、スムース・ジャズ的な演奏をさせていた。

 実演は、このところのそれで聞かせる路線を踏む。それは、どこかフュージョンぽいと思わせるところもあるのだが、それもまた彼なりの一般性や快適性の追求でもあるのだろう。メロディ性も強まっていると言えると思うし、彼はより統括的立場に立たんとしているようにも思える。そのぶん、昔の彼が抱えていた尖った部分、アヴァンギャルドな弾き口やセロニアス・モンク的な手触りを入れる部分は皆無。ヒップホップ的要素も差し込まなくなった。そうした部分には一抹の寂しさを感じたりもするが、イケてる変人たる形容不能のもやもやや愛らしさは随所に存在していて、このおっさんの公演はミスしちゃいけねえと思ってしまうのだ。

<今日の、露店>
 渋谷の宮益坂にある神社がお祭りのようで、坂の片側に、まばらに露天のお店が並んでいる。全部で、10店にも満たない。この前の錦糸町の河内音頭(2013年8月28日)のときのそれと比べると、かなり寂しい。だが、そのなかに外国人がやっているドネル・ケバブのサンドイッチの店も。音楽フェス系の食べ物屋において車両店舗のケバブ屋はずっと前から定番となっているが、テキ屋という言葉を連想させる和調屋台にもドネル・ケバブは進出しているのか。それにしても、日本のケバブ・サンドって、どうしてあんなにプアなのか。ぼくはトルコ移民の多いドイツでしか食べたことがないが、そこで食べたべたものは日本のようにキャベツではなくレタスが用いられ、ソースの味も違っていた。その記憶をたどると、日本のドネル・ケバブのサンドはコスト削減を介した別物であるとぼくは感じるし、日本人は舐められていると思わずにはいられない。

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